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凡豪の鐘 #30


蓮加:....どこ行ったんだろ...

美月:皆んなはぐれちゃったねぇ笑


蓮加と美月は、はぐれてしまった為、歩きながら皆んなを探していた。


蓮加:......美月はさ、〇〇の事好きなの?

美月:え?


唐突な質問だった。


美月:な、なんで?

蓮加:.....なんか距離近くなってるし....お互い呼び捨てだし....一緒に住んでるし...

美月:ち、違うよ?一緒に住んでるのは・・

蓮加:〇〇から全部聞いたから大丈夫。......で...好きなの?

蓮加は美月の顔を真正面で捉え、真剣な眼差しで問うた。


美月:....ふふっ笑 大丈夫。好きじゃないよ。

蓮加:......ほんと?

美月:ほんと。

蓮加:.....ふぅ......そっか...。


蓮加は力が入っていた肩を撫で下ろし、安堵したようだった。


美月:....でも....なぁんでそんな事聞いたのかなぁ?

蓮加:へ?

美月:私が〇〇を好きだと何か問題なのかなぁ?.....例えば...蓮加が〇〇の事好きとか?

蓮加:は、はぁ!? べ、べべ別にそんなんじゃないし!?

美月:ふーん....(バレバレだって笑)

美月:私は蓮加と〇〇、お似合いだと思うけどなぁ...

蓮加:そ....そう?//

美月:でも早く行動しないと取られちゃうかもなぁ...茉央ちゃんは〇〇に好きって伝えてたし....

蓮加:....茉央が....むぅ........あ....

美月:ん?......あ....


蓮加が止めた視線の先に美月も視線を向ける。その視線の先には、〇〇と茉央がいた。

二人はまるで恋人のように口付けを交わしていた。


蓮加:あの二人.....付き合ってるのかな。

美月:.............。


視線の先の二人の唇は、もうすでに離れたようだった。


蓮加:.........美月?

美月:.......あ....え...あ.....大丈夫..大丈夫..

蓮加:な、なにが?

美月:な、なんでもないよ!.....〇〇もやるなぁ...後でちゃんと話聞かなきゃだね。

蓮加:.......そう.....だね......


今二人が思っていることは同じだった。


美月、蓮加:(なんでこんなに.....心が痛いんだろ....)

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美月:お、お待たせ〜。

〇〇:あ、美月来た。もう.....走ってどっか行くなよな。

美月:ごめんごめん笑

蓮加:花火ここで見るの?

〇〇:おう。結構いい場所だろ?

蓮加:〇〇にしては良いね。

〇〇:なんだよ、〇〇にしてはって笑 


4人は無事に合流した。律からは美波さんと一緒に花火を見ると連絡が入っていた。


蓮加:よいしょ....


蓮加は〇〇の隣に座った。蓮加の隣に美月。その隣に茉央の順番で座った。


ドーン ドーン 


空には大輪の花が咲き乱れていた。


〇〇:......綺麗だなぁ.....

蓮加:.....だねー....ねぇ....〇〇。

〇〇:ん?

蓮加:.....茉央と二人で何してたの?

〇〇:え、えーっと....たこ焼き食べたり?...他は//.....別になんも。

蓮加:....ふーん...楽しかった?

〇〇:楽しかったよ。お前らとはぐれてなきゃもっと楽しかったんだろうけど笑


ドーン ドーン  バラバラバラ


蓮加:ねぇ....〇〇。覚えてる?

〇〇:覚えてるよ。

蓮加:まだ何も言ってないじゃん!

〇〇:わかるよ笑 小さい頃ここで花火見たって話だろ?

蓮加:.......当たり。

〇〇:小さい頃は俺と蓮加でよく来たよなぁ....毎年ここで見てた。蓮加が教えてくれた場所だ。

蓮加:.........もう.....ずるいチュッ

〇〇:え?.......あ....

蓮加:私はまだ......これくらい//


蓮加は〇〇の頬に優しくキスをした。暗くてよくわからないが、互いの頬は金魚よりも真っ赤に染まっていた。

〜〜

美月:じゃ、そろそろ帰ろっかー。

茉央:そうですねー。花火綺麗でした。

〇〇:............。

美月:.....ん?〇〇どしたの?

〇〇:い、いや?何でも//


〇〇はどこか上の空だった。

〜〜

茉央:じゃ、私こっちなので、ここで失礼しますね?

蓮加:私もこっちだから、じゃあね。

美月:じゃあねー!


〇〇は遠くなっていく二人の背中を、消えゆくまで見つめていた。


美月:......〇〇?帰ろ?

〇〇:ん....あぁ......帰るか。


〇〇は、ぼんやりとした意識を復活させ、美月と共に歩いた。


美月:........ねぇ、〇〇。

〇〇:ん?

美月:茉央とキスしてた?


ジィジィジィジィ リッリッリッリッリーーー

キチキチキチ・・・・ フィリリリリリ・・・

夏の虫がここぞとばかりに鳴いている。


〇〇:.........見てた?

美月:ごめん....見ちゃった笑

〇〇:.........てことは...蓮加も?

美月:.....うん。

〇〇:.........そっかぁ.....。

美月:......〇〇からしたの?

〇〇:ううん。茉央から。

美月:.....そっか。...付き合うの?

〇〇:いや.....うーん....今は付き合うとか...わかんねぇんだよなぁ....好きになる資格も...ないと思うし。

美月:...なんで?

〇〇:.....まぁ....後で話すよ。ほら着いた。

美月:ん。


〇〇は玄関の扉を開けて、美月を家に入れた。

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〇〇:ふぅ....結構疲れた....


〇〇は風呂から上がり、ベッドに入り、天を仰ぐ。一枚の写真を持ちながら。


〇〇:.....祐希。今日は夏祭りに行ってきたよ。結構楽しかった笑

〇〇:.......祐希は今....どんな景色を観てんのかなぁ...


コンコンコンッ 部屋がノックされる。〇〇は急いで写真をベッドの下に隠した。


〇〇:ん、何ー?


ガチャ


美月:入るよー....へへ笑 

〇〇:どうした?


立っていたのは美月。まぁ、この家にいるのは〇〇と美月だけなので当たり前だが。


美月:なんか変に興奮しちゃって笑 寝れなくてさ。

〇〇:そか。

美月:ずっと〇〇のベッドで寝てたからさ、今日も寝て良い?

〇〇:えー....また俺が床かよ....まぁいいよ。


〇〇はベッドから起き上がり床に布団を敷こうとした。


〇〇:ん?


腕を美月に掴まれる。


〇〇:うわっ!


そのまま思い切り引っ張られ再びベッドに倒れこんだ。


〇〇:何すん・・

美月:えへへ笑 近いね。


目と鼻の先には、美月の顔があった。〇〇は急いで美月とは逆方向を向く。


〇〇:何やってんだ!

美月:.......嫌?

〇〇:え....い、嫌とかではないけど....うぉっ!


背中と腹に違和感を感じる。どうやら後ろから抱きつかれているようだ。


〇〇:ちょ....さすがにこれは//

美月:今夜だけボソッ

〇〇:えっ?

美月:今夜だけだから.....


その声は酷く細く小さかった。


〇〇:...................。


〇〇は抵抗するのをやめた。美月の細く小さな体からは、何か重いものを感じた。

それを指摘するのは、無粋だろう。

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夏祭りから数日。全高校生の希望である夏休みは終わりを告げ、夏休み明け最初の登校日。


〇〇:ふっははは笑 はははははは!笑

美月:....何笑ってんの?


美月と〇〇は朝食を食べていた。


〇〇:ついに今日から普通に歩けるようになるのだ!

美月:おぉ!

〇〇:はぁ....まじできつかった...松葉杖生活...やっと解放される...

美月:良かったねぇ.....ま、それはいいんだけどさ、〇〇、課題やったの?

〇〇:え?

〜〜

坂乃高校


麻衣:〇ー〇ーくーん?

〇〇:.....はい。

麻衣:....課題を一つもやってないってどういうことかなぁ?

〇〇:.......すんませんっしたぁ!

麻衣:全部やるまで居残り!いいね!?

〇〇:.....はい。

麻衣:じゃ、戻ってよし。


教卓の前で叱られ、席に戻される。席に戻る間、周りの席からは失笑が響く。

〜〜

〜〜

昼休み


〇〇:おらぁぁぁぁあぁああ!!

律:おー、やってるやってる。


屋上に行くと、〇〇は怒涛の勢いで課題を終わらせていた。


律:なんでやってなかったんだよぉー。

〇〇:あぁ? 俺は俺で色々あったんだよ! 親父となぁ・・


〇〇は夏休みに起こった出来事を律に話した。


律:へぇー.....そういやぁ...小3の途中から変わった気もしなくもないな。

〇〇:まぁいいんだよ。俺は俺だ。変わらない。

律:そっかぁ...


〇〇は課題を終わらせる手を止めて律を見た。


〇〇:さっきからお前なんでニヤけてんの?

律:えぇ〜?


ガラガラガラッ 下方の扉が開いた。


美月:んーー!! 良い景色!

美波:だねぇ〜〜

蓮加:屋上あっつい。

奈央:えー? 中より涼しくないですか?

蓮加:んー...そうかも。


屋上にきたのはいつもの面々だった。


茉央:あ!そや! 美波さん、おめでとうございます!

美月:え?


茉央が急に美波に祝杯の言葉を贈る。


美月:おめでとうって.....美波なんかしたの?

美波:ま、茉央ちゃん待っ・・

茉央:あれ?言ってないんですか?お兄と美波さんが付き合ったってこと。

蓮加、美月:えぇーーー!!!??

美波:あぁ......

〇〇はゆっくりと律の方を向いた。


〇〇:......お前のニヤけはこれが原因か...ボソッ

律:....その通りボソッ

〜〜

美月:・・ってことは夏祭りの日に付き合ったってこと!?

美波:う、うん//

蓮加:おー...良いじゃん。律と美波だったらお似合いだよ。

美波:へへ// ありがとう//


美波は頬に手を当てて、顔を真っ赤にしていた。


美月:こんな美波見るの初めて....可愛い.....

奈央:.....幸せそうです笑 茉央も早く一緒になれるといいねぇボソッ

茉央:なっ! や、やめてや//


キーンコーンカーンコーン


美月:あ!予冷だ! 早く戻ろ!

律:俺らも行くかボソッ

〇〇:いーや、俺は課題をここで終わらせてから行くボソッ

律:はは笑 わかった笑

〜〜

今は6時限目をやっている頃だろうか。


〇〇:やっべぇ....おわんねぇ....


莫大な量の課題。1日で終わるはずもなかった。


ブーッ ブーッ スマホが鳴る。


〇〇:あ?電話.....誰だ?


スマホの画面を見ると、見知らぬ番号。非通知でかかってきたものだった。


〇〇:"はい、もしもーし"

??:"Hello, are you a BUNGOU?"

〇〇:"あ?"

??:"I would like to hear more about what is written in that novel."

〇〇:".....今課題やってんだ!日本でおけぇ!"


プツッ 〇〇は勢いに任せて通話を切った。


〇〇:ったく...なんなんだよ。変な迷惑電話だったな。


この昼下がりの奇妙な電話は、この後も留守番電話にしても、何通もかかってくるのであった。

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              To be continued





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