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凡豪の鐘 #34


〇〇:............えー....と..偶然?だな、あはは...

律:な、なんでこんな所にイルンダヨー、グウゼンダナァ....

美波:ま、茉央ちゃんも来てたんだぁ......こんな奇跡あるんだねー....

茉央:そ、そうですねー....


4人は今同じテーブルを囲んでいる。テーブルには二つの大きなパンケーキが置かれている。何故こんな状況かというと....

〜〜

数分前


〇〇:あ.......

美波:ま、〇〇君.....なんでここに?


トイレから出たら、美波と鉢合わせてしまった。不用意に歩き回るべきではなかったと、ここで後悔する。


〇〇:えーと...き、気になっててさ!このカフェ!

美波:そうなんだ....

〇〇:(出来るだけ自然に...) 一人で来てんの?

美波:あ...いや...律君と//

〇〇:お!デートか笑 いいじゃん。

美波:うん// .....〇〇君は?一人?

〇〇:俺?俺は....たまたま茉央と会ってさ、今日は茉央と一緒に遊んでる。

美波:ま、茉央ちゃんと!!?


美波はひどく驚いていた。


〇〇:え、うん...茉央とだけど....

美波:そ、そう! じゃあ...楽しんで!

〇〇:.......楽しんで?


一方その頃、テーブルでは


律:あー....まだ緊張してんな...ふぅ....


律は立ち上がり、両手を頭上で組み、背伸びをした。


律:んん.......ん?茉央?


席から立った事により隣が見えた。隣に座っていたのは、茉央だった。


茉央:あ............

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といった具合で、今に至る。


〇〇:と、とりあえず食うか....

茉央:そうだね笑


〇〇と茉央は隣同士に座り、パンケーキを食べようとした。


律:........あれ?.....ってことは...茉央と〇〇...キスしたのか?


お兄ちゃんとして当然の疑問だった。


〇〇:は!?い、いや....それは.....

茉央:わ、私からしたんや....もうええやろ//

律:そ、そうか....


また気まづい空気が流れる。こんな空気耐えられるはずもない男が一人いた。


〇〇:.....だぁー! めんどくせぇ!

律:え?

〇〇:もう言っていい?

律:ま、待て、何を言おうとしてる...

〇〇:美波、これ偶然じゃないんだ。


その言葉を聞いた瞬間、律は両手で顔を覆い隠した。


〇〇:こいつが初彼女で初デートだっていうからさ、着いてきてLINEで指示だしてくれって。だから着いてきたの。

美波:.....そう....なの?

〇〇:うん。でも、今までの時間で俺一個も指示出してないから、安心して。

律:....................。


律は覆い隠した指の隙間から美波を見た。


律:え?


美波は顔を赤くし、同じように両手で顔を覆い隠していた。


〇〇:......二人とも...なにしてんの?

茉央:....ふふっ笑 .....あはははははは笑


横にいる茉央が笑い始めた。


茉央:もう言ってもいいですよね?美波さん笑

美波:........コクッ


美波は小さく頷いた。


〇〇:え、なに?

茉央:実はな? 茉央も同じやねん笑

〇〇:は?

茉央:初彼氏で初デートだから不安だって美波さんに相談されたからな? 着いてきたの笑

〇〇:......まじ?

茉央:うん笑 着いてきて欲しいって言われたから笑 でも指示は出してへんで? デートする前に、お兄は奥手だからグイグイ行った方が良いって言ったくらいかな。

律:....だから今日なんかいつもと違かったんだ...

美波:......バレてるし...//

〇〇:....ははっ笑 なんだ、すでにお似合いじゃん笑 ここはお邪魔みたいだよ茉央。

茉央:そうだね笑


二人は席を外し、遠く離れた席へと移動した。

〜〜

〇〇:茉央も早く言えよー笑

茉央:〇〇もやろ!笑 だから行き先が一緒やったんやね笑

〇〇:だな笑 でも......なんかお似合いだったなぁ...あいつら意外と似てんのかも...

茉央:.......彼女....欲しいって思った?

〇〇:え?


茉央が真面目な顔をして聞いてきた。


〇〇:彼女.....かぁ.....まぁ、前よりは?いつまでも過去に囚われてちゃダメだって思ってたしなぁ...

茉央:へへっ笑 そっかぁ....

〇〇:茉央のおかげなんだよ? 茉央って結構成長してんだなぁって....俺も成長しなきゃなぁって笑

茉央:......じゃ、これからは本当のデートやな?

〇〇:ほぇ?


茉央はフォークでパンケーキを掬い、身を乗り出した。


茉央:お互いやる事もなくなったし....後はデートするだけやな? はい、あーん...

〇〇:い、いや...それ茉央のフォーク....むぐっ...

茉央:おいし?

〇〇:....うん//

茉央:へへっ// 間接キスやな?

〇〇:そ、そういう事言うな!//

茉央:えへへ笑 


〇〇の過去に囚われた心も少しづつ溶けていく。そんな気がしていた。そんな気がしていたんだ。

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??:おぉ、久しぶりだね、美月ちゃん。

美月:お久しぶりです! .......どうでした?

??:んー.....後日もう一度来て貰えるかな。

美月:.............はい。

??:そんなに気を落とさないで....って言っても...か。僕達...いや世界中で模索しているんだ。

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カフェを出て、最後にショッピングでもしようという事になった。

一つ難点を挙げるとすれば、〇〇と茉央が去ってから、会話が極端に減っている事だった。


律、美波:............あの!


ショッピングモールに向かう途中、言葉が重なった。


律:あっ.....

美波:さ、先いいよ...

律:あぁ.....その....今日待ち合わせした時から今まで....演技してたってこと?

美波:......もう...言わせないでよ...

律は:ご、ごめん....じゃあこっからが本当のデートだね笑 

美波:.....お、怒ってないの?

律:怒る? はは笑 俺も同じことしてたし?まぁ....可愛かったし....

美波:か、可愛い////

律:...なんか美波って可愛いって言われると以上に照れるよね。

美波:....私、背高いし見た目も可愛い系じゃないから、可愛いとか言われたことなくて...

律:へー! 俺はずっと可愛いと思ってたんだけどなぁ....可愛いって言われると嬉しい?嫌?

美波:律君に言われるなら...嬉しい//

律:そっか!じゃ、これからも言うね笑

美波:えへへ// あ、あの....私も聞きたいことある...

律:なに?

美波:わ、私にキスしたのって....〇〇君の指示?

律:......いや...俺の意思...//

美波:そっか// えへへ// 嬉しい///


美波は学校では想像出来ないほどに"女性"らしかった。いつもの凛としてかっこいい美波ではない。律の前だと素でいれる。それがわかっただけでも、このデートは大成功だった。

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電車から降りて家まで歩く。今日は結局茉央とずっと一緒だった。


〇〇:楽しかったぁー!

茉央:ほんま?

〇〇:うん笑 久しぶりだ、こんな楽しかったの笑 最近ずっと張り詰めてたからなぁ....


カフェから出た後、〇〇達はゲーセンに寄ったりカラオケに行ったりして遊んだ。


茉央:なぁ....〇〇。聞きたいことあるんやけど。

〇〇:んー?


茉央の家と自分の家へ向かう別れ道だった。


茉央:......美月さんと一緒に住んでるって....ほんと?

〇〇:なっ!? ど、どこで・・

茉央:その反応はほんまなんやな.....お兄が見たって。美月さんと〇〇が一緒の家に入って行くとこ。

〇〇:.........はぁ.....そうか....


それから〇〇は茉央に事情を話した。

〜〜

茉央:そういうことなんやな....

〇〇:うん。だから付き合ってるとかじゃない。

茉央:でも.....嫉妬する...

〇〇:嫉妬?

茉央:だって.....美月さん可愛いし...最近〇〇と仲良さそうやし....

〇〇:....可愛いなぁ、茉央は笑

茉央:へっ!?

〇〇:大丈夫。前も言ったけど、まだ人を好きになれる感じじゃないし。まぁ....前よりは恋愛したいなとは思ってるけど、茉央の気持ちを無下にするつもりはないから。

茉央:.............

〇〇:今んとこ俺の事好きって言ってくれてるのは茉央だけだしな笑 ちゃんと考えるよ。

〇〇:じゃ、また学校でな。


〇〇は茉央の頭を撫でてから、去って行った。


茉央:.......鈍感やなぁ...

〜〜

〇〇:.........あ....


さっき言った言葉が頭の中で反芻されて気づく。

そうだ。俺は夏祭りに蓮加にキスされたんだ。でも好きとは言われてない。でも、じゃあなんで俺にキスしたんだ?あの蓮加が。最近俺のこと無視してくるし。


〇〇:.........まぁ....後で考えよ。


ガチャ 家の扉を開けた。


〇〇:ただいまー。

美月:おかえり!


美月はキッチンに立って料理をしていた。


〇〇:先に帰ってたんだな。

美月:うん。ちょっと前に帰ってきた。

〇〇:そか。

〜〜

〇〇:いただきます。

美月:どうぞー。


二人分の食事がテーブルに置かれる。いつもの光景だ。


〇〇:美月今日何してたの?


食事をしながら話す。これがいつもの流れだった。


美月:今日は.....映画見に行った!

〇〇:お!何見たの?

美月:えっと.....最近話題の恋愛の映画!

〇〇:え!? 一緒じゃん!俺もそれ見たんだよね!

美月:えぇ!? そ、そうなの!?

〇〇:うん。どうだった?あの映画。

美月:あ、え、えーっと......お、面白かったよ?

〇〇:..........何か隠してんな?

美月:っつ.......

〇〇:小説好きなお前が、あの映画を面白いって言うわけない。あと.....砂糖と塩間違えてるし。

美月:え.....パクッ.....あ、ほんとだ.....

〇〇:なんか....あったのか?

美月:...................。


美月は箸を持ったまま黙りこくってしまった。何か言いたげで、でも口から声は出してこなかった。


〇〇:.........ま、言いたくないこともあるわな。

美月:え?

〇〇:一緒に住んでるからってなんでも話せって訳じゃないしな。ま、気が向いたら話してくれよ。

美月:.........ありがとう。

〇〇:いいんだよ笑 さ、飯食おうぜー。塩かけて良い?笑

美月:あ....うん...。


〇〇はまったく気にしていないようだった。でも....得体の知れない何かから目を背けているようにも見えた。

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〇〇:ふぅ......


風呂を上がって部屋に戻る。


バタンッ


平静を装っているのも疲れた。〇〇は急いで本棚に向かい、一冊の本を取り出した。 


文豪作 「消える君へ」


ペラペラとページをめくっていく。数秒後すぐに閉じる。紙が涙で滲んでしまうから。


ブーッ ブーッ スマホが震える。


〇〇:"はい、もしもし"

??:"You are・・"

〇〇:"No"


プツッ


すぐに切った。スマホの番号変えようかな、とさえ思った。


〇〇:......もう寝よ....


ボフッ


ベッドに倒れ込むようにダイブする。


目覚ましをセットしようとスマホを手に取った。その時ふと気になったんだ。迷惑電話のことを。留守番電話にも何個も通知が入っている。


少し気になってしまった。内容はなんなのか。


数多ある留守番電話をタッチしてみる。


??:"To you who disappears・・

〇〇:ん?


その下のも押してみる。


??:・・・To you who disappears・・"

〇〇:あ?


どんどん次の留守番電話を押していくと、一つの法則性に気づく。全部の電話に共通した文言が含まれていた。


〇〇:...... To you who disappears....。

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             To be continued



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