医療画像系トップ会議 MICCAI 2021レポート

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2021年9月27日から10月1日にかけて、医療分野の画像処理およびコンピュータ支援のトップ会議であるMICCAI 2021が開催されました。今年はフランスのストラスブールで現地開催されつつ、昨年に引き続きオンライン参加もできるようになっていました。

例年通り本会議は真ん中の9月28日から30日、その前後の9月27日と10月1日にチュートリアルやワークショップが開催される形式でした。また、臨床との連携を強める目的でCLINICCAIRSNA-MICCAI PANELといったプログラムも組まれていました。RSNA-MICCAI PANELは昨年に引き続き2回目になります。

今年は1630本投稿された中から531本の論文が採択され(採択率33%)、本会議の前後に開催されるワークショップでも別途論文の投稿・採択がなされています。また、今年からの新しい試みとして、投稿論文のレビューが公開されるようになりました。レビューでは特に再現性を重視する傾向が強まり、論文内で提案した方法や使用したデータセットが公開されていることが以前に比べて評価されるようになっています。

論文タイトルから見る学会の傾向

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「MRI」や「Ultrasound」、「whole slide」のような医療分野特有の単語が随所に見られます。また、「Segmentation」が一番協調されて見えるように、この分野では医療画像に対して病変部位を正確に検出することが重要課題の1つとなっています。そのため、「Segmentation」が論文タイトルに含まれるキーワードの最上位になることが続いています。このようなSegmentation重視の傾向が年単位で継続するのは他の画像処理系の学会にはない特徴の1つかもしれません。

今年(採択数531本)と昨年(採択数554本)で各単語の出現数を各年の論文数で割った上で比べてみると、「Transformer」、「self/semi-supervised」、「Contrastive」といったものが増加した単語の上位になっていました。単純な論文数については以下の表のようになっています。

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まず、「Transformer」というキーワードが含まれるものは、Vision Transformerの登場を受けてそれを医療画像に応用した内容のものが多かったです。

・MIL-VT: Multiple Instance Learning Enhanced Vision Transformer
    for Fundus Image Classification
・Surgical Instruction Generation with Transformers
・Trans-SVNet: Accurate Phase Recognition from Surgical Videos via Hybrid
    Embedding Aggregation Transformer
・Multi-view analysis of unregistered medical images using cross-view
    transformers
・Instance-based Vision Transformer for Subtyping of Papillary Renal Cell
    Carcinoma in Histopathological Image

次に「self/semi-supervised」です。医療画像分野では高品質なアノテーションを用意するコストが高い傾向にあるため、毎年一定数そういった論文があります。今年はそういったものがいつもより多かったようです。

・TransPath: Transformer-based Self-supervised Learning for
    Histopathological Image Classification
・Dual-Consistency Semi-Supervised Learning with Uncertainty
    Quantification for COVID-19 Lesion Segmentation from CT Images
Self-supervised visual representation learning for histopathological
     images
Self-Supervised Longitudinal Neighbourhood Embedding
Semi-supervised Meta-learning with Disentanglement for
    Domain-generalised Medical Image Segmentation

最後に「contrastive」ですが、こちらも「self/semi-supervised」と同様で医師によるアノテーション作業の負担を減らすのが主な目的であり、contrastive learningを医療画像に応用したものが今年から出てきたため増えたのだと思われます。

・USCL: Pretraining Deep Ultrasound Image Diagnosis Model
    through Video Contrastive Representation Learning
・Federated Contrastive Learning for Volumetric Medical Image
    Segmentation
・Multi-Task, Multi-Domain Deep Segmentation with Shared
    Representations and Contrastive Regularization for Sparse
    Pediatric Datasets
・Domain Generalization for Mammography Detection via Multi-style and
    Multi-view Contrastive Learning
Contrastive Learning of Relative Position Regression for One-Shot Object
    Localization in 3D Medical Images

Young Scientist Award

いわゆるBest Paper的な位置にあるものです。今年は以下の5本が選ばれました。

・Self-Supervised Longitudinal Neighbourhood Embedding
・Multi-Task, Multi-Domain Deep Segmentation with Shared Representations
    and Contrastive Regularization for Sparse Pediatric Datasets
・RLP-Net: Recursive Light Propagation Network for 3-D Virtual Refocusing
・Cross-modal Attention for MRI and Ultrasound Volume Registration
・Surgical Workflow Anticipation using Instrument Interaction

それぞれの論文の簡単な要約を以下に書いておきます。

Self-Supervised Longitudinal Neighbourhood Embedding

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Longitudinal Neighborhood Embedding (LNE)というSelf-supervisedな方法を提案。T1w 脳MR画像に適用することで、加齢による変化やアルツハイマー病の進行を評価できることを示した。

Multi-Task, Multi-Domain Deep Segmentation with Shared Representations and Contrastive Regularization for Sparse Pediatric Datasets

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U-Netに対してドメイン特異的なバッチノーマライゼーションやセグメンテーション層を加えることで、マルチタスク&マルチドメインなセグメンテーションモデルを構築。小児骨MR画像におけるセグメンテーションタスクに適用しSoTAを達成。

RLP-Net: Recursive Light Propagation Network for 3-D Virtual Refocusing

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2D蛍光顕微鏡画像から3D蛍光顕微鏡画像を推定するRLP-Netを提案。蛍光ビーズとC. elegans画像に対して適用し質的・量的評価の両方においてSoTAを達成。

Cross-modal Attention for MRI and Ultrasound Volume Registration

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医療画像レジストレーションに適した「cross-modal attention block」を提案。前立腺の超音波画像とMR画像を用いた画像レジストレーションでSoTAを達成。

Surgical Workflow Anticipation using Instrument Interaction

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手術器具の検出や進行段階の予想を含めた手術ワークフロー予想のためのInstrument Interaction Aware Anticipation Network (IIA-Net)を提案。Cholec80を使ったモデル評価においてSoTAを達成。

最後に

今回紹介したのは本会議の一部ですが、他にも多くのワークショップやチュートリアルが行われています。また、学術的なものだけでなくスタートアップ企業によるピッチコンペといったものもあります。

さらに、学生の方向けにはメンターシッププログラムもあり、うまく活用すれば大学・研究機関や企業・スタートアップのメンターから有用な情報を共有してもらえる機会になると思います。

2022年はシンガポールでの開催です。興味がわいた方はご参加を検討してはいかがでしょうか。

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