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米国デジタルヘルス投資で急進するデータインフラとインターオペラビリティ領域とは

テックドクターの湊です。(@minakazu)テックドクターはデータを活用したウエアラブル外来をメンタルソリューションとして開発しています。前回に引き続き、下記のROCK HEALTHのレポートを中心に、今年の投資トレンドなど考えてみました。(下記は弊社のサイトです!)


0.前回のnote

前回は、ROCK HEALTHのレポートなどを中心に2021年のヘルステックの投資状況やトレンドなどについてまとめました。今回は、より注目されている領域や詳細を調べてみました。


1.膨らむ投資額

まずはもう一度、ディールサイズについても確認をしておきたいとおもいます。これは、ヘルステックだけでのトレンドだけではなくどの領域もそうだと思うのですが2021年はこれまでとは全く違う成長を見せた年でした。

ヘルスケアの領域のラウンド別投資額の年別推移

特に上記のグラフを見ていただくと、それぞれのステージにおける金額も2倍〜3倍に増加しているのがわかります。(シリーズBで平均調達額45億円とは・・・)このレポートでもダウンラウンドやエクステンションで調整する懸念点もあると言いつつも、コロナの影響でよりポジティブに見る動きがあるとも記載されており、2021年は新型感染症によって想定以上にイノベーションが進んだということと思われます。それらの動きを見て、かなりアーリーステージに投資が集中したということなのでしょうか。

“Early stage investors are so focused on getting into digital health deals that they’re coming in hot at Seed, Series A, and Series B and setting high valuation bases. A rationalization happens around Series C when investors are forced to scrutinize the company’s revenues and real business model.”
– Michael Matly, MD, Co-Founder and Managing Partner at 111° West Capital

実際、改めて私も2021年の動きを調べてみていて、様々な米国でのヘルスケア領域スタートアップのユーザー獲得やビジネス進捗のスピードは想定以上だと感じて、焦りました。


2.デジタルインフラストラクチャとインターオペラビリティ

このレポートの中では、今後、注目される領域の変化について、コロナ禍においてもそれ以前からもサイロ化するデータによる課題に注目しているスタートアップについて記載されています。

デジタルインフラストラクチャとインターオペラビリティ領域の投資額と企業

この領域、2021年は40件で約2,500億円の投資があり、前年比で3倍に登っています。我々テックドクターもこの領域を2年前から進めているので、様々なアプローチ方法があるとは理解しているのですが、それでもここまで急激に進んだことには驚きました。
下記が、名前が出ている主要な調達企業です。
Innovaccer($105M)
Redox($45M)
Ribbon Health($43.5M)
TripleBlind($8.2Mと$24M)
Truveta($95Mと$100M)
ScienceIO($8M)
Centaur Labs($ 15.9M)
Commure、Truepill($ 142M)
Wheel($ 50M)
Zus Health($ 34M)

「サービスとしてのインフラストラクチャは、デジタルヘルスの退屈な市場でした。 現在、仮想サービスプロバイダーが成熟し、プラットフォームに統合されるにつれて、相互運用性とデータ共有に焦点を当てた舞台裏のプレーヤーに大きなチャンスが訪れています。」
– Redesign Healthのベンチャーチェア、Missy Krasner

このデジタルインフラストラクチャ領域のイノベーションが進むことで下記の3つの変化があると記載されています。

■新しいデジタルヘルス企業立ち上げ障壁を低くし、技術面以外の差別化を加速、患者中心のデジタルヘルスアプローチが進みやすくなる 

■デジタルヘルスの統合、合併、買収を進めやすくしデータプラットフォーム間の競争は加速

■統一された業界データエコシステムに貢献し、新しい健康ソリューションの可能性が高まる

(調達企業についてのアップデートもしていこうと思います。)

3.ヘルスケアにおけるデジタルインフラストラクチャ

当社でもSelfBaseという医療データ解析用のシステムを提供しています。我々も、これまでの医療のなかで使われてきている解析手法やデータのやり取りは、現在のテクノロジーの進化に対応できなくなる可能性が高いと考えており、大量かつ高度な解析手法に耐えられるデータ構造と外部との連携をシームレスに行うことのできるシステムが必要と考えていますが、ここで言及されている、”デジタルインフラストラクチャとインターオペラビリティ”についてもう少し考えてみたいと思います。

ちなみに、HIMSSでもヘルスケアのデジタルインフラにおける相互運用性(インターオペラビリティ)について議論したレポートもありました。

https://www.himss.org/sites/hde/files/media/file/2021/12/17/himss-apac-interoperability-vgrt-report.pdf

15年ほどまえアドテクでも同じような状態がよくありました。データ保有者側からするとデータを内部に溜め込もうという意識が働くので、基本的にデータはサイロ化していきます。
ただ、データを価値に変えようとするには、逆の動きが必要で外のデータにぶつける必要があります。
また、データにはストック型とフロー型のデータがあります。

例えば健康診断データなどの一度取ったら変化しないデータはストック型、
一方で、血糖値デバイスで日々取れる移り変わる血糖値のデータはフロー型
対象となるデータ自体は同じものもありますが、その時の状態を捉えるものか、変化を捉えることができるものか、によって異なると考えられます。

アドテクノロジーの世界でも、例えば、一度結婚情報関連サイトに来訪した人のデータは「結婚する予定がある人」として広告価値がありますが、それ自体は数カ月後には、ほぼ何の価値も持たなくなります。

ヘルスケアの場合は、価値が毀損されることは少ないと考えられますが、解析をしたり予測モデルを作るなどはストック型のデータを蓄積しているだけではなく、外部と繋げるなどしてフロー型のデータを構築していく必要があります。この時に、現在注目されているのが、デジタルインフラストラクチャ関連、インターオペラビリティ関連の企業のようです。

4.デジタルインフラストラクチャの代表 Innovaccer

この領域でどうもあたま一つ抜けようとしているのが「Innovaccer」というサンフランシスコのスタートアップです。ちなみに、2020年2月に7000万ドルの調達を行った際には、Tiger GlobalもVCとして名を連ねています。
(サイトも見やすくて、なんか色使いもいい感じです。)

InnovaccerはAPIを通じて、健康保険、初期治療提供者、薬局、研究所、病院などからデータを集め、それを2万5000カ所の医療機関に提供しています。医療従事者はInnovaccer(スペル打つの大変だなぁ)のHealthCloudを通じて患者さんのデータにアクセス可能
様々なAPIが提供されており、それぞれのプレイヤーの利用目的に応じてAPIから必要なデータを取得することができます。

かなりいろいろなビジネスでの活用を想定していて、この会社のビジョンが素晴らしいなと感じました。彼らは、UberやAirbnbの登場をGoogleMapAPIが実現させたように、ヘルスケアのイノベーションを生み出すインフラを作ることが必要と考えています。
それを彼らは業界唯一の「フルスタック」クラウドプラットフォームであると主張し、スタートアップから旧来の保険企業まで大幅なコスト削減を実現しているようです。

5.まとめ

Innovaccerに関しては、まだ奥が深くて、もっと調べてみたいと思いましたが、ちょっと、今回の内容が長くなりすぎてしまったので、また次回にしたいと思います。そして、改めて現在世界が向き合っていこうとしている課題のレベルが、少し先にいっていると感じました。
アプリケーションの陣地争いから明らかに先に進んでいる。焦ります。

最後に

弊社㈱TechDoctorでは大量のデータを解析することを軸に、ウェアラブルデバイスデータ等のデータから人々のメンタルヘルスを計測・可視化するソリューションを開発しています。また、それ以外にも”データで調子を良くする”ことができるように様々な取組をしています。
日々努力を積み重ねて少しずつ進めていますので、興味がある方、ぜひお気軽にご連絡下さい!
お問い合わせ:https://www.technology-doctor.com/
Twitter:https://twitter.com/minakazu

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