テクニカルディレクターとその役割
こんにちは、テクニカルディレクターの森岡です。
このTDAマガジンではテクニカルディレクターおよびテクニカルディレクション業務におけるアレコレを解説していく予定です。
そもそも、テクニカルディレクターって何?
一部の業界では大分浸透してきましたが、業界によっては『テクニカルディレクター』という職種は馴染みがないかもしれません。
テクニカルディレクターは英語ではTech Directorと呼ばれ、その役割としては『テクニカルディレクションを職責として全うする人』になります。要するにテクニカルディレクターはテクニカルディレクションを行う人、ということです。
テクニカルディレクション業務って何?
では、そのテクニカルディレクションとは何か?
我々は自身の業務を『テクニカルディレクションとは技術の翻訳業務である』と説明することが多いです。
例えばあなたが自分の商品を販売するために最適なオンラインショップを作りたいと思ったとしましょう。そのアイデアをテクニカルディレクターに相談すると、実現可能かどうかを判断してくれます。そしてその次のステップとして、あなたのオンラインショップを実現するためのさまざまな条件、つまり予算やスケジュール、集めるべきメンバーなど制限を教えてくれます。
これが『技術の翻訳』と言われるものです。つまり『オンラインショップの制作』という、実際の制作にまつわる技術的なものが判らないと俯瞰できないものを『予算』や『スケジュール』や『チームビルド』などの判りやすい指標に翻訳してチームメンバー内での議論の議題に上げる、ということになります。
もちろんオンラインショップに限らずウェブサイト、アプリ、インスタレーションやライブ演出、果ては新規事業まで作るものを問わず、『作りたいもの』から『作る方法(実現できる方法)』を考えること、作るものを明確化し、作れる環境を計画することをテクニカルディレクションと言います。
エンジニアとの違いは?
テクニカルディレクションの内容を聞いて『それってエンジニアの仕事なのでは?』と思った方もいらっしゃるでしょう。
その通りで、現状エンジニアという肩書でテクニカルディレクション業務も行なっているエンジニアは多く居ます。エンジニアのみならずテックリード、CTO、テクニカルアーティスト、エンジニアチームのマネージャー、SIerなど、非技術職と連携を求められるエンジニアは大なり小なり、テクニカルディレクション業務を日常の仕事の中で行う必要があります。
ただし、エンジニアリング業務とテクニカルディレクション業務は考え方から大きく異なります。
この差異を説明にするは『仕様』というモノについて考えるとはっきりします。
エンジニアの主な業務は実装や制作といった実際にモノを作る業務になります。つまりは仕様や設計を具体的なモノにすることになります。
故に『仕様』、つまりどうやって作るかがある程度絞れていないと、『私がエンジニアとして作れるかどうか』が判断できなかったり、どれぐらい稼働すれば完成するのかの判断がつかなかったりします。
一方、テクニカルディレクションは『このアイデアはどのような体制で、どのような仕様であれば具体化できるかを考えること』が業務となります。つまり『仕様を考えること』自体もテクニカルディレクション業務の中に含まれます。
何故この2つに分けるのか?
何故エンジニアがやっているテクニカルディレクション業務とエンジニアリング業務を分けるのか。それは大きく2つの理由があります。
1つは先ほど書いた通り、『仕様を作ること』と『仕様を理解して制作すること』で全く業務内容が異なること。
そしてもう1つが『実現可能な仕様を作ること』の価値を明確化させることです。
例えば建築では、設計者(建築家)と施工業者(大工など)は多くの場合では別々です。建築家の業務は勿論見た目や内容の素敵な設計をすることも含まれますが、第一に実現可能でなければなりません。
現実的に存在しないような素材や予定を大幅にオーバーした予算、そしてありえないスキルをもった施工業者がいないと成立しない設計をしてはその建築家の設計のスキルは疑問視されるでしょうし、職務を果たせていないと言えるでしょう。
つまり、クライアントのイメージを具体化しつつ、実現可能な実装難易度までブレイクダウンした仕様にしていくことが重要であり、それが主な職務になります。
エンジニアがテクニカルディレクションもエンジニアリングも兼任している場合、多くのシステムはブラックボックス化され、『難易度の高い設計』も『難易度の高い実装』も他の非技術者からは確認できなくなっています。
そのため、制作コストやスケジュールが理不尽に上がったり下がったり、突然うまくいかなくなる場面に遭遇したりします。
まとめ
なんとなくテクニカルディレクション業務と言われるものがどのようなものか判ってきたでしょうか。まとめると以下のようになります。
・テクニカルディレクターはテクニカルディレクションを専門的に行う人
・技術者は大なり小なりテクニカルディレクションを行っている
・テクニカルディレクションは技術の翻訳である
・アイデアや企画を仕様やチームビルドや予算といったものに変換する
・エンジニアリング業務とテクニカルディレクション業務は大きく異なる
TDAではテクニカルディレクションに関する情報を発信しております。
運営継続のため、みなさまのサポートをお待ちしています。