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フィジビリティチェックと『できる・できない』について

テクニカルディレクターの森岡です。本日はテクニカルディレクション業務の主だったもののうちの一つ、フィジビリティチェックについて掘り下げていこうと思います。

フィジビリティチェック

テクニカルディレクターと仕事をする際に良く聞く耳慣れない単語、フィジビリティチェック。フィジビリティはFeasibilityと書き、日本語に訳すと実現可能性、となります。つまりフィジビリティチェックは実現可能性の確認です。

クライアントが企画したモノやサービスが実現可能かどうかを確認、検討する業務を指します。具体的に言えば、

『こういう製品の企画を思いついたんだけど、これ、実際に作れるかな?』
『こういうサービスがあったらぴったりなんだけど、作れるかな?』
『こういうライブ演出を思いついたんだけど、実現可能なんだろうか?』
『この映像の中に移り込んだ看板に自動でモザイクをかけたいんだけど、可能かな?』

などなど。ふわっとしたものからカチッとしたものまでさまざまな精度のアイデアや企画に対してフィジビリティチェックは行われます。

できる?できない?

フィジビリティチェックは日本語訳からも判る通り、要するに『できるかできないか』を調べるという仕事です。

が、少なくとも私の場合、最初の相談の段階では『できない』と答える事はあまりありません。他のテクニカルディレクターの方も『できる』もしくは『条件次第でできる』という方が多いのではないでしょうか。

なぜ『できない』と言わないのか?それには2つの理由があります。

1つは『できる』と『できない』は実は2択ではなく、間にいくつもの条件付きの『できる』があるからです。

『予算をかければできる』
『物理的にはできる』
『成功率は保証できないがシステムはできる(作れる)』
『あのプログラマーを開発に巻き込めればできる』
『できたように見せかける方法を用意できる』

といった風に、実は条件をつけなければ、ほぼなんでも『できる』と言えてしまうのです。

もう1つはやりたい事の持っている制限や条件をしっかりヒアリングするためです。

先ほど言った通り、制限をつけなければなんでも『できる』と言えてしまいます。つまり『できない』と発言するには、相手の想定している企画から発生する制限を把握し、且つその制限が致命的であり、調整できないことがこちら側も相手も理解する事が重要なのです。

勿論相手にとっては『できる』方法がある方が嬉しい場合が大半です。なので、『できない』という結論は出ないほうが良く、むしろそこがテクニカルディレクションの腕の見せ所な訳ですが、『この条件が致命的なのでできない』という結論は相手にとっても有益なものになります。

例えば『予算のケタが1ケタ違うのでできない』という結論になった場合は『できるかどうか判らないもの』が『予算があればできるもの』になっています。その結果、『予算を増やせるように行動する』や『諦めて早急に次のアイデアを練る』といった自分で次の行動を起こせるような状態になっており、テクニカルディレクションとしての重要な『通訳』の仕事は達成できていることになります。

もうひとつの『できる』と『できない』の間

しっかりヒアリングして制限や要件が出尽くしても『できるかできないか判らない事』というものが残ってしまう場合もあります。これは大きく2つの種類があります。

1つは『自分以外の有識者に聴けば判る事』。他のテクニカルディレクターやそのジャンルの技術者や研究者に意見を貰う事で判断がつくものです。

もう1つは『やってみないと判らないこと』。仮説レベルで過去に実証されたことがないものや、最新の制作手法、あるいは込み入った制作手法だったり、複雑に条件が絡み合っていて仕上がりの予想がつかないものが考えられます。これらは一部だけでも試作や実験をしてみないと判断が付かない、ということになります。

こういった大きな企画の中にある不確定要素を抽出することもテクニカルディレクションの大事な仕事です。

最後に

フィジビリティチェックはテクニカルディレクターの重要な仕事です。

如何に『できる』方法を考え、『できる』と言えるか。あるいは実施前にしっかり『できない』と判断して実施コストを抑えるか、といった所が腕の見せどころになります。


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