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テクニカルディレクションを評価する難しさ。プレアワード審査振り返りレポート

テクニカルディレクションアワード運営事務局です。
2023年6月に新しくアワードを設立いたしました!(プレスリリース

その名のとおり、テクニカルディレクションの優れているプロジェクトを表彰するアワードなのですが、

テクニカルディレクションと一言で言っても広すぎる。
公募制にしたいけど、どんなものが対象なのかイメージできなくてみんな応募できないよね。
テクニカルディレクションの評価って難しそう。本当にできるの?
・・・ならば、まずはランスルー的にやってみよう!

ということで、本格的なアワード始動に先駆け、第0回プレアワードを開催することにいたしました。
第0回はイレギュラーな開催として、Tech Director's Associationのコミュニティメンバーから募集した作品情報をもとに、いわば「勝手に表彰させていただく」スタイルで実施しました。

審査方針や部門をアワード事務局である程度用意したうえで、
①一次審査(部門についての議論と、各部門の候補の絞り込み)
②二次審査(受賞者の決定)
と段階をふんで、部門の定義や審査軸をすりあわせて議論を重ねました。

今回は「審査委員長」という肩書きは設けず、各部門に詳しい審査員にファシリテーターとなってもらい、議論をリードしていただく形式。その上で、ファシリテーターは自分の担当部門では投票権を持たなかったり(最終決議で同点となり、決着がつかない場合に初めて投票できる)、自身のもしくは所属会社が関与しているプロジェクトは投票権を持たないなど、公平性を保つためのルールを定めて審査を進めました。

今回は、ご参加いただいた8名の審査員に、審査を振り返っていただいたレポートをお届けします。

左から:荻野さん、西濱さん、久我さん、今さん、森岡さん、大西さん、岡田さん、馬場さん

【審査員】 ※敬称略

荻野 靖洋(株式会社コネル テクニカルディレクター / 株式会社知財図鑑 知財ハンター)
⻄濱 ⼤貴(株式会社 博報堂 テクニカルディレクター)
久我 尚美(株式会社 博展 テクニカルディレクター)
今 雄一(note株式会社 CTO)
森岡 東洋志(ベースドラム株式会社 テクニカルディレクター / 一般社団法人テクニカルディレクターズアソシエーション 発起人)
大西 拓人(ソニーグループ株式会社 コーポレートテクノロジー戦略部門 コンテンツ開発課 テクニカルディレクター)
岡田 敦子(株式会社ファブリカ プロデューサー)
馬場 鑑平(株式会社バスキュール クリエイティブディレクター)


■プレアワード審査の感想

荻野:
Tech Direction Awardsって、従来のアワードと違って、アウトプットだけを評価するものじゃないんですよね。テクニカルディレクションってプロセスに近いものがあるので。

森岡:
誰がどう作ったのか、プロセスは普通公開しないじゃないですか。第0回のプレアワードでは公募じゃなかったので、その部分を想像しながら議論するのが難しかったですよね。制作者の解説や記事など色々情報は集めましたが、テクニカルディレクションに関して一般公開されている情報はかなり限られていたので。第1回以降は、そこを応募者に聞いていかないといけないですね。

大西:
今回は第0回ということでメッセージ性が強い結果になりましたね。
プロセスを評価するのは非常に面白いですが、一方でエントリーの手間が結構かかりそうですよね。テクニカルについてのドキュメントをまとめるのってとても大変で、どれくらい理解できるかわからない審査員に対して書くのって心労がかかると思うし、どこまで社外に情報を出せるのかという問題もありますし。

今:
応募のフォーマットを用意したいですよね。目的、制約条件、手段、結果など。ガチガチすぎると表現の幅が狭まりますけど、ある程度誘導してあげないとちゃんと評価できないんじゃないかなと思いました。

荻野:
できるだけ手軽に入れてもらえる質問項目を考えたいですね。

久我:
Digital Experience部門は、審査をしてみるとどうしても感性的、主観的に判断せざるをえない部分があり、公平性の難しさを感じました。似たような感性の人たちが審査員に集まってしまうと意見が偏るので、審査の評価軸はきちんと決めないといけないなと改めて感じました。

岡田:
事務局で事前におおまかな評価軸はつくってましたが、審査をしている中で各部門によって大きく変えていたりしましたし、定義するところで産みの苦しみはありましたね。

森岡:
「部門がどうあるべきか」という議論は紛糾しましたね。評価軸も複数あるし、ジャンルもたくさんあるので、どんなポイントで分けるべきなのか。あとは、審査員の専門領域でないと正しく評価できないので、部門と同時に審査チームを考えないといけないし。

馬場:
部門のカテゴライズ難しいですよね。第1回、第2回とやっていくうちに変わるかもしれないし、時代とともに変わるかもしれない。

大西:
審査員を応募段階で発表することで、このアワードが受け入れる領域の方向性はある程度示せそうですよね。「この審査員ならこのポイントを評価してくれそう」というのを感じてもらえるというか。

西濱:
一番議論が多かったのは「ここは殿堂入りとして、あえて我々が表彰しなくてもいいのではないか」のライン引きだったかなと思います。
テクニカルディレクションをしている人たちの環境を良くしたいので、困難な課題に立ち向かった「がんばりましたで賞」というよりも、「こんな面白いものがあるよ」と紹介をする立場としてのアワードになるといいなと思いますね。

今:
テクニカルディレクターって育成する学校もなく、「気づいたらなってた」っていう人が多いと思うので、この賞の結果を見ると「テクニカルディレクションとはなんぞや」というものが見えてくると素敵だなと思います。

二次審査の様子

■このアワードのユニークポイント


今:
「テクニカルディレクション」という題材を扱っているアワードはなかなかないので、様々な定義づけの難しさと面白さがありますよね。

岡田:
専門知識がないと凄いのか/凄くないのかが判断できない分野なので、賞があることで多くの人にそのプロジェクトの凄さに気づいてもらうきっかけをつくる、というのは大事だなと思いますね。バックエンドエンジニアやインフラエンジニアなど、スポットのあたりづらい人も評価されてほしいですよね。

荻野:
Digital Service部門に関して言うと、サービス系の賞ってビジネス的なしくみの部分を評価することが多いのですが、それを技術的に見る賞は珍しいと思います。Tech Direction Awardsなら、マイナーなサービスでも賞を取れるんじゃないでしょうか。

森岡:
テクニカルディレクションって、プロセスの中で起こっている判断とか、その結果できた仕様だったりするんですよね。でもそこって普段ブラックボックス化してしまうので、オープンになる風潮をつくっていけるといいなと思います。例えばクライアントワークでも、制作会社がプロセスまで実績として公開できるような契約にできるとか。

大西:
ノウハウやナレッジのオープン性も評価する、というのが第0回の審査項目にあったんですが、ユニークだし重要だなと思います。CEDECで以前「著述賞」というのがありましたが、それによって企業が勉強会を開催したり、良い効果が生まれていたんですよね。業界に対して発信して盛り上げていく動きを評価できるといいなと思いました。

西濱:
UI/UXやユーザビリティについての考えが一般に普及してきたように、テック領域においての「次の当たり前」をつくれるような提言をしつづけられるのは、このアワードのユニーク性なんじゃないかなと思います。

■第1回 応募者への期待


馬場:
インフラやアクセシビリティなどの一見当たり前の技術だったり、課題解決だったり。さらに、アイデアと技術が渾然一体となっているような作品も、応募してほしいですね。

森岡:
いつもは表現面で評価されている、でも技術面もきちんと自分たちで実装までされている方々などが、応募してもらえると嬉しいですね。できればテクニカルディレクションしている本人たちが応募してもらえるといいなと思います。

久我:
クライアントとか広告代理店のような筆頭の方に限らず、制作者の方々が自由に応募してもらえるといいですね。

荻野:
プロダクションも個人も大企業も、いろんな人に出してほしいです。

西濱:
自社の中では良いものだと思っているけど、うまく活用しきれていない技術などもR&D / Prototype部門で出てきてほしいです。くすぶってるけど絶対意味がありそう、みたいなものとか。

大西:
通常のテクニカルディレクションって世の中にある色々な既存の技術を組み合わせて「どう使うか」なので、「新たに開発した技術をどう使ってもらうか」っていう観点はあまりないんですよね。こういうアワードで評価してもらえると有用な技術としても認知してもらえるのはモチベーションになりますね。

今:
新規技術をチェックできる枠があると業界内で重宝されそうですよね。第0回の選考ではアート作品が多かったのですが、アート作品そのものじゃなく「それを支えているテクニカルディレクション」を評価したいので、そこを混同されないといいですね。

荻野:
個人的には「車輪の再発明をいかに"しない"か」は良い考え方だと思っているので、既存の技術をうまく応用をしているところも評価できる賞になるといいなと思っています。

岡田:
既存サービスの組み合わせでうまくいった、みたいなプロジェクトはたくさん出てきてほしいですね。そういう事例があるとアワードをチェックしたくなります。

馬場:
今後いろんなものを作る時に使える、技術やサービスなどの種に出会えるといいですよね。このアワードがただ褒められるだけの場じゃなくて、どんどん活用してもらえるような発展の場になるといいなと思います。



第0回の振り返りはいかがでしたでしょうか。
第1回テクニカルディレクションアワードは、2023年度内に応募受付をスタートする予定です。詳細の発表までお楽しみに!


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