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公益通報者保護法について

公益通報者保護法において保護の対象となる通報は、以下の要件を満たす必要があります。その根拠となる条文も併せて示します。

保護対象となる通報の要件

  1. 通報先が適切であること(法第3条~第5条)

    • 事業者内部(上司、コンプライアンス部門など)

    • 行政機関(所轄の監督官庁や消費者庁など)

    • 外部の第三者(報道機関など。ただし、一定の条件が必要)

  2. 通報の内容が法令違反に関する事実であること(法第2条第3項)

    • 法令違反とは、刑法、消費者保護法、環境保護法、労働基準法など、法令に違反する行為に該当します。

  3. 通報者が不正の目的で行わないこと(法第2条第4項)

    • 個人的な恨みや利益を目的としている場合は保護の対象になりません。

  4. 通報者が違法行為の存在を合理的に信じていること(法第2条第5項)

    • 通報が事実であると信じるに足る理由が必要です。

保護される具体的な通報例

  • 企業が有害廃棄物を違法に投棄している。

  • 商品やサービスの表示が虚偽である。

  • 労働基準法に違反する残業の強制が行われている。

  • ハラスメント行為を組織的に隠蔽している。

根拠条文

  • 公益通報者保護法第2条:公益通報の定義。

  • 公益通報者保護法第3条~第5条:適切な通報先に関する規定。

適切な通報先や具体的な状況により保護の適用が異なるため、通報時には慎重に検討することが重要です。


公益通報とは


次の者が、不正な目的なく、法令違反(通報対象事実)が発生している、または発生しようとしている旨を、適切な相手に通報することを指します。

1. 通報者

以下の立場の者が通報者となります:

  • 労働者:現職または過去1年以内に従事していた者(正社員、アルバイト、派遣労働者などを含む)。

  • 派遣労働者:派遣先で働く者、または過去1年以内に派遣されていた者。

  • 契約に基づく労働者:請負契約などで事業に従事する者、または過去1年以内に従事していた者。

  • 役員:事業者の経営や職務に従事している者。

2. 通報先

通報者が通報できる適切な相手:

  • 自らが所属する事業者やその指定した担当者(内部通報先)。

  • 行政機関やその指定した担当者。

  • 被害の拡大を防ぐために必要と認められる第三者(ただし、競争上の利益を損なうおそれがある場合などは除く)。

3. 通報の対象

通報は、通報者が合理的に信じた法令違反(刑法や労働法、消費者保護法など)に関する事実でなければなりません。

この条文は公益通報者の保護範囲を明確化し、通報内容が法的に正当であることを保証するための基盤を提供しています。


1. 通報対象事実の概要

「通報対象事実」とは、以下のいずれかに該当する法令違反の行為、またはその発生の恐れがある事実を指します。

  • 刑法違反

  • 消費者保護に関する法律違反

  • 労働基準法など労働関連法令の違反

  • 環境保護に関する法令違反

  • 公衆衛生や食品安全に関する法令違反

  • その他の国民生活に重大な影響を与える可能性がある法律違反


2. 法令違反の具体例

以下は通報対象となる具体的な法令違反の例です:

労働関連

  • サービス残業や不当解雇

  • 過重労働による安全配慮義務違反

  • 最低賃金未払い

消費者保護関連

  • 商品の虚偽表示や不当表示

  • 詐欺的商法や契約違反

環境関連

  • 有害廃棄物の不法投棄

  • 環境汚染に関わる法律の違反(排出基準超過など)

安全・衛生関連

  • 食品衛生法違反(食品の異物混入、不正表示)

  • 建築基準法違反(耐震基準の不適合建築物の提供)

公共の安全

  • 公共交通機関での安全性軽視(点検不備、虚偽報告)

  • 医療機関での不適切な医療行為


3. 保護の条件

通報が保護されるためには、以下の要件を満たす必要があります:

  • 合理的な信念があること: 通報者が「法令違反が発生している」と信じるに足る合理的な理由が必要です。

  • 不正の目的がないこと: 個人的な利益目的や他人に損害を与える意図での通報は保護の対象外です。


4. 保護されない場合

以下の場合は保護されません:

  • 法令違反と無関係な事実を通報した場合

  • 故意に虚偽の情報を提供した場合

  • 個人的な不満(例えば人間関係のトラブル)に基づく通報


倫理違反などは対象か?

公益通報者保護法の保護対象である「通報対象事実」は、法令違反を基本としています。そのため、単なる倫理違反社内規定の違反は、法律上の通報対象には含まれません。ただし、以下の条件を満たす場合には倫理違反が間接的に法令違反に結び付く可能性があり、通報対象となることがあります。

1. 倫理違反が法令違反に該当する場合

倫理違反とされる行為が、次のような形で法令違反に該当すれば、通報対象となります。

例:

  • ハラスメント

    • 職場でのセクハラやパワハラは、直接的には倫理違反に見えますが、労働基準法や男女雇用機会均等法、労働契約法に基づく「安全配慮義務違反」として法令違反に該当します。

  • 研究不正

    • 学術研究における捏造や改ざんがあった場合、助成金の不正使用や知的財産法違反に繋がる可能性があります。

  • 利益相反

    • 公務員や企業の役員が倫理的に問題のある行為を行い、それが公正取引委員会法や会社法に違反する場合。

2. 倫理違反が法令違反と密接に関連する場合

会社や組織の倫理違反が、消費者保護法や環境保護法などの規制に影響を与える場合も通報対象となる可能性があります。

例:

  • 品質管理上の問題

    • 組織内での品質基準の軽視や隠蔽が倫理違反として指摘される場合、消費者保護法や製造物責任法に基づく法令違反となる。

  • 内部統制の欠如

    • 倫理違反による内部統制不備が原因で、財務諸表の虚偽記載(金融商品取引法違反)に至る場合。

3. 倫理違反そのものが法令の対象外となる場合

次のような場合は、原則として公益通報者保護法では保護されません:

  • 企業の倫理憲章や社内ルール違反のみの場合(法令に結びつかない場合)

  • 倫理違反が社会通念に反するものの、法的規制が存在しない場合

注意点

  • 倫理違反か法令違反かの判断は複雑であり、具体的なケースによります。

  • 事前に専門家や内部窓口での相談が推奨されます。

公益通報者保護法ではあくまで「法令違反」が対象となるため、通報の内容が法令違反に該当するかどうかを慎重に検討することが重要です。

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