見出し画像

知財塾、各ゼミの位置づけ・学ぶ内容・学ぶ方法を整理してみた

1月から開講した知財塾、第1クールとなる「中間応答ゼミ」と「明細書作成ゼミ」が終了しました。コロナ流行の兆しが見え始めた2月途中からzoomでのオンライン開催に切り替えましたが、おおむねうまく運用できたように思います。

中間応答ゼミのファシリテーター・佐竹さん
ちざたまごさんの受講中の感想。ありがとうございます。

運営チーム内での第2クールの作戦会議が先週始まったところですが、各コンテンツの位置づけなど、自分の中で少し整理してみようとnoteにまとめてみました。

「強い特許」を考える際の2つの軸

自分が知財教育に関わっていた頃に、「強い特許の作り方」に関するセミナーや原稿を書いてた時期がありました。その土台になる図がこれ。

画像1

縦軸は「登録の可能性が高いか、権利になった後に無効にならないか」、横軸は「他社の排除性が高いか、その排除性を持って他社に与えるプレッシャーが強いか」と考えるとよいと思います。

第1クールに開催した「中間応答ゼミ」と「明細書作成ゼミ」は、ざっくりいうと

・中間応答ゼミ→縦方向(vs 特許庁)の強化
・明細書作成ゼミ→横方向(vs 競合他社)の強化

を軸にした内容になります。中間応答ゼミは「その反論で審査官が納得するか」、明細書作成ゼミは「その表現で意図した権利範囲になっているか(目標より狭くないか、ずれてないか)」といった議論がメインで行われます。

もちろん中間応答でも他社の排除性を極力キープしながら応答を行うわけですし、明細書作成でも中間応答を見据えた記載が必要になるわけなので、完全に縦・横に分かれるわけじゃないですが、大まかに目指す方向性はこんな感じになります。

明細書作成の作業自体はもっと縦の角度が深いですが、ゼミとして先行文献の調査と比較をそこまで重点的に行っていないので、こんな感じになります。

画像2

各ゼミの具体的な内容はこちら

中間応答ゼミ
明細書作成ゼミ

今後開講予定の他ゼミの位置づけ

6月には先行技術調査ゼミを開催予定ですが、上記図にはめるとこんな感じです。

画像3

基本的に縦軸と横軸はトレードオフになりがち(他社排除性を高めるために権利範囲を広げる→該当する先行文献が増えるので、特許性の確保が難しくなる)なので、先行文献を正確に把握することは、どのラインで特許権利化を狙うかを考えるための羅針盤になります。

先行技術調査ゼミ

この図を見ると、横軸も何かしらケアしたいところですが(むしろここから考えるケースが多いので)

画像4

現状はASCIIで連載している「知財で読み解くITビジネス by IPTech」でその辺に触れてます。

特に直近の2回は「先発企業・後発企業、それぞれの目指すべき特許戦略」「ユーザー接点を抑えてからの領域展開」と、多くの企業がそれぞれの立場で活かしうる戦略を紹介できていると思います。

この辺は8月開講予定のコンサルティングゼミの中でも触れる感じになるかもしれません。コンサルゼミは外部パートナーの協力も得ながら、IPTechの知財コンサル部門のノウハウをお伝えしていく感じになると思います。

画像5

IPTech特許業務法人・採用ページ より引用

あと、商標の権利化についても7月にゼミを開講予定です。スタートアップにとっては、場合によっては特許より先に動かないといけない分野とも言えます。

中畑氏(以下、敬称略):「一番気にしたのは商標。後々使えなくなると、それまで投資したブランディング、マーケティングコストが台無しになる。社名のエアロネクストは、空を飛ぶドローンだけではなく、ドローンを使った点検などのサービス、ドローンのレンタル、ドローンパイロットの派遣など、いろいろな分野を網羅的にカバーするような出し方をした。会社設立の定款を作る前に、商標を出願しました

知財実務の「見えない部分」を学べる場に

続いては各コースで共通する点について。一番のポイントは演習&フィードバックを通じて、特許事務所内の暗黙知になっていることを学べるように意識していること。

これは知財塾を通じて作りこんでるところもあるんですが、元々事務所内で(もっと言ってしまうと、特許技術本部長の佐竹さんが前職時代から)取り組んでた試みの共有でもあります。

上のツイートへのリプライで書いてたやつ

画像6

IPTech特許業務法人・採用ページ より引用。ちなみにMBA保有者の1人が佐竹さんで、知財教育事業経験者の1人が私です。

知財塾の公式HPに書いてある内容も転載しておきます。

「特許明細書」「先行技術調査報告書」「意見書・補正書」など、知財業務の納品物は何かしらのドキュメントになるケースがほとんどです。
そこで、「知財塾」では、「業務で作成するドキュメントの作成」を各コースのゴールに設定し、そのプロセスを問題集の各設問に落とし込みました。
「知財塾」では、「仕事で納品するドキュメントを作成できる」「そこに記載した内容について、どんな手順で作成したか説明できる」ことを受講目標としています。
引用:知財塾について

知財業界(特許事務所・企業知財部など)の中に、再現性ある実務スキルを共有できる仲間を増やしていきたい、という考え方でやってます。問題集ももう少し作りこんだら公開していきたいなと思ってます。

学び方の改善

何かしらを学ぶ際には「学ぶ内容」×「学び方」の掛け算が大事です。ここまでは「学ぶ内容」について書いてきましたが、最後に「学び方」の改善について考えてることを書きます。(自分が知財塾にコミットしてるのは実はここです。どんなゼミが必要かなど、学ぶ内容は他メンバーが主に担当)

第1クールはまさに立ち上げだったので、募集開始から実際の授業終了まで、まさに「走りながら作る」状態でした。その状況で走り切ってくれた受講者の皆さん、ファシリテーターの2人には本当にありがとうと言いたいです。

ここからさらに良いコンテンツにしていくために、学び方、特に受講者の行動デザインについて、試行錯誤していきたいと思っています。

例えばですが、「受講者が各自で取っているメモを可能な範囲で共有する」「演習のフィードバックを受講者同士で行ってからゼミに臨む(バディ制度)」とかですね。

ゼミの中で各受講者がファシリテーターから得られる学びには限りがあるので、できるだけそれを共有することで学びを最大化したいと考えてます。

あと、学習効果の最大化ではないですが、「学びの機会の最大化」という点でオンライン化・動画販売(「AIを使った先行技術調査ゼミ」で先行実施)も力を入れていく予定です。

まとめ

以上、知財塾の第1クールを終えて考えてることを整理しました。第1クール受講者の感想なども聞きながら、さらに磨いた形で学びの機会を提供できればと思います。

各コース、受講者募集中だったり受講準備中だったりしますが、募集開始時にリマインドが欲しい方の登録を受け付けています。興味ある方はぜひこちらから登録してみてください。

執筆:@tech_nomad_

いいなと思ったら応援しよう!

テクノ大仏
サポートいただいた分は下記にまとめた本を読んで還元したいと思います! デジタルヘルスケア https://is.gd/4XCPtN スタートアップ×知財 https://is.gd/KHV8G8 中国スタートアップ https://is.gd/KG2zcF