Xテック「農業×IT➂」~持続可能な農業を支えうるバイオ製剤~
前回アグリテックについて考察した記事においては、AIやドローンを活用して生産性を高める「精密農業」や、耕地面積を増やす「屋内農場」等、テクノロジーによって農作物の生産量を高める方法について考察してきた。
本記事では、持続可能な農業を実現する技術の一つとして注目されているバイオ製剤について考察していきたい。
バイオ製剤とは?
バイオ製剤とは、生物や生物由来の成分から作られた製剤で、作物の成長促進や病害虫の駆除に用いられている。いわば”環境に優しい農薬”のようなものである。
バイオ製剤を構成するものには、例えば以下のようなものが存在する。
〈作物自体の成長を促進するもの〉
・バイオイノキュラント
⇒農作物の成長をサポートために、栽培土壌に加えるバクテリアの事。
・バイオスティミュラント
⇒本来作物自身の持つ作用を引き出す天然由来成分
・バイオ肥料
⇒栄養素の豊富な植物、微生物、動物由来成分
〈作物を襲う病害虫を駆除するもの〉
・バイオ除草剤
⇒天然由来の成分を用いた雑草防除剤
・バイオ殺菌剤
⇒本来植物が持つ免疫機構に働きかけ、病原菌を抑制するもの。
・バイオ殺虫剤
⇒様々な害虫に対し、効果を示す天然由来の殺虫剤
近年これらのバイオ製剤市場は、年間平均10~20%の成長を果たしており、従来の農薬に代わる薬剤として大規模な開発が進められている。
その背景には、環境負荷の低減や自然に優しい等有機農法に関心を寄せた消費者の変化や、
環境意識の高まりや規制によって、農地に残留する農薬量を低減させる必要に迫れれている生産者側の需要が存在する。
バイオ製剤の抱える課題
環境にやさしく、作物の成長を促進することのできるバイオ製剤だが、広く社会で使用されるにはまだまだ越えなければならない課題がある。
①効能アップ
例えば、害虫駆除力においては、バイオはまだまだ化学農薬に劣っている。また、駆除対象になる害虫の範囲も狭いため、対象となる害虫の拡大が不可欠である。
➁バイオ農薬が生物故に、倉庫や店頭での管理が難しいこと。
害虫を食べてくれる虫を撒くためには、虫が孵化して飛んでいくタイミングを計って農薬を管理する必要がある。生物なので、出荷のタイミングの見極めが難しい。
しかし今後、このような障壁を乗り越えることが出来れば、一気に市場拡大の可能性もあるとされており、環境保全型農業の代名詞ともいえるバイオ製剤は、今後注目すべき対象である。
以上!