Xテック「農業×IT➁」~ゲノム編集・精密農業・屋内農業~
本記事では、世界の食糧危機を救うアグリテックの中でも特に投資が盛んに行われている「ゲノム編集による品種開発」「精密農業」「屋内農場」の3点について考察していきたい。
ゲノム編集による品種開発
大量の農作物を効率的に生産するには、農作物のゲノム編集による育種改良が求められる。
ゲノム編集では、遺伝子の「切断」「修復」「欠失変異」「挿入変異」等の編集技術を使って、外来遺伝子を残さずに変位することが可能である。
ゲノム編集に関する知見を蓄積することで、高成長、耐病性、ストレス耐性など、農業での有用形質を支配する遺伝子を特定し、これらの特長を持つ品種開発を所要時間を短縮して実現できる。
例として、イギリスでは豚高致死性をもたらすウイルスに体制を持つ「スーパーピッグ」等が開発されている。
これらのゲノム編集を支えているのが「アグリバイオインフォマティクス」と呼ばれる、複雑な農作物などのデータを解析する技術である。近年急速に発展しているAI技術により進化を遂げている。
精密農業
屋外型の農業において、少人数での大規模生産が精密農業によって可能になってきている。
精密農業には、「ドローンによるリモートセンシングや局所散布」「生育観察」「病害虫観察」「天候予測」「水の管理」「在庫管理」等が含まれる。
精密農業が近年急成長しているのは、IoTの進化に伴うセンサーによる定点観測、ドローンによる空撮や画像解析により、農場の状況が短期間かつ低コストで提供されるデジタル基盤が整備されたことが大きく寄与している。
農場情報がデジタル化されることで、生育の可視化、分析による生育予測なども可能になる。
精密農業の今後の課題は、
①農薬や農機メーカー、集荷業者が提供するデジタル情報基盤を生産者が使いこなしたうえで、デジタル情報の分析理解と紐づいた営農活動を実行できるか、
➁センサーの設置やドローンによる空撮などを生産者自身が行うことで以下に作業コストを低減できるか
等が挙げられる。
屋内農場
野菜の生産、水産物の陸上養殖、養鶏、養豚などが閉鎖的な空間の屋内農場で実施可能になってきている。屋内農場で人口肉の生産や高たんぱくの昆虫の養殖も一部実用化されている。
屋内農場の構成要素としては、人口光源、栽培装置、環境制御システム、センサーなどが含まれる。
屋内農場の急速な成長は
①IoTによる生産データの収集と分析により最適条件が実現できるようになってきていること
➁センサーを活用して大規模で効率的な生産が可能になっていること。(基本的には24時間365日生産可能)
➂トマトやイチゴの栽培においては、適期での収穫にセンサーやカメラを搭載したロボットを活用できること。
等が起因している。
農業従事者の増加が見込めない中で、この3つの差別化要因はさらなる成長の柱となりうるだろう。
縦列栽培による栽培空間の効率活用化や、水耕栽培装置による循環的な農業用水の有効活用などは、農作物生産環境の持続性維持に繋がっており、大きなメリットがある。
また、養分を混ぜた水で育てる養液栽培は有機栽培とみなされるため、消費者からの支持を集めており、高価格での販売が可能である。
屋内農場の今後の課題としては、建屋や栽培装置への初期投資の高さや、水道代光熱費といったランニングコストを以下に低減するか等が挙げられる。
以上!