フレンチキス
好きな曲でLil' Louisのフレンチキスというのがある。
純粋に音が格好いいのはさる事ながら、この曲の展開に人生を感じるのだ。
アナログシンセの音と共に跳ねるバスドラが印象的だが、それが5:13頃から失速を始め、喘ぎ声が混ざりだす。5:59頃になると、いよいよドラムはインターバルを迎え、喘ぎ声とラッパに似たストリングスだけが残る。しばらくその二人で喘いだ後に、ラストに向けてドラムも加わりBPMが加速していく。
祖母は生前の終活の一通りを終えた後、別人かと見間違えるように生活がだらしなくなっていった。
まさにそこがフレンチキスのインターバルである。喘ぎ声はさておき、何かが破裂したように、胡散臭いラッパのようなストリングスが被って聞こえた。
というか人間が壊れた時に、そのストリングスが聴こえてくる。
母の時にもその音は鳴っていた。
フレンチキスでは最後に再度輝きを見せて有終の美を飾るが、祖母の場合意識が飛んだ後の延命治療をそれだと思いたい。
祖母は人が変わった後に意識を失い、約半年の転院生活が始まった。
それに立ち会ったのは僕と、母の妹で、当時何とも言えない心境だった。悲しいのだけど、死んだわけではないので悲しみきれないという。
それがクッションとなり、いよいよ祖母がご臨終となった時はすんなり受け入れることができた。
優しかった祖母の、最後の気遣いのような気がした。
だいぶこじ付けるけれど、これがフレンチキスのラストスパートに当たるかなと。
母に関しては、未だにフレンチキスのインターバルで燻(くすぶ)っている。
『この人にフレンチキスのラストスパートは無いな。』
って諦めて接するのをやめたけど。
曲が違うんだろうな。
タイトルだけでいくならmauriceのこの曲かなっっ