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ジャズの引き出しについて〜スモール・ビッグバンドの引出し〜

 実はビッグバンドは2回ほど参加したことがあって、二子玉川と調布の市民ビッグバンドなんだけど、両方とも数か月で行かなくなってしまった。なんか、バンド内のあの独特の空気感が苦手というか、そもそも協調性無いんで。だからビッグバンドにはなんかコンプレックスがあるんだよな。聴く方はというと、やっぱそれほど熱心でもなくて、カウント・ベイシーのロックンロールなやつとか好きなんですが、まったく詳しくありませぬ。そんな中、普段聴いている見知ったメンツが組んでいるチョッとスモールなアンサンブルは、ソロの度に演奏しているプレイヤーの顔が浮かんで楽しく聴けるので、ビッグバンドとは全く感覚が違って良いんですよね。で、『Sonny Stitt & the Top Brass』の後は『Bull's Eye』を聴きたくなったりするんで、引き出しにまとめても良いんではないでしょうか?スモール・ビッグバンドの定義って多分ちゃんとあるんだろうけど、ここではセクステットクラスも適当に俺的スモール・ビッグバンドとして紹介したいと思います。

 スティットはアルトとテナーの二刀流プレイヤーとして史上最高に完成度が高くて、どちらにも大量のフォロワーがいるという空前絶後の存在なんだけど、二刀流になったきっかけは、ビリー・エクスタイン・ビッグバンド時代に、デクスター・ゴードンからテナーをもらったからというものらしい。そんな彼はその後もビッグバンドものが結構好きだったらしく、実は有名な『Sonny Stitt Plays Arrangements from the Pen of Quincy Jones』以外にも何作もあるのだ。
 『Sonny Stitt & the Top Brass』はセロニアス・モンクと並ぶビ・バップ創成期における重要な作曲家の一人であるタッド・ダメロンのアレンジですね。10人編成ですんでデクテットと言うんですかね。ダメロンと言えばアーニー・ヘンリーも在籍したファッツ・ナヴァロを擁したビッグバンドが有名ですが、ディジーのビッグバンドとかでもアレンジを担当していて、当代最高の売れっ子だったと言うだけではなく、マイルスやコルトレーンにも影響を与えた理論家としても知られております。マイルスの作る曲、時々かなりのダメロン臭するもんな。
 ここでのスティットは全編アルトを吹いてるんだけど、コレがかなり気合い入りまくりで、一分の隙も無い、メチャメチャブリリアントな仕上がりになっております。お気楽感無し。リズム・チェンジの「Stittsie」など、臆面も無くパーカー丸パクフレーズを繰り出してくるんだけど、よりによってそれか!っつう、余程の自信がないとヤラねえだろうってヤツを敢えてブッ込んで来てますね。


間違い無く敢えてやっとる。アナザー・バード?パーカーの真似?だから何?モンクあんの?ってなもんですな。コイツは参りましたとひれ伏すより他に無い。燃えるっす。ホントコレね、『Sonny Stitt with the New Yorkers』の「Cherokee」とかもそうだけど、


こういう音楽を聴いてスティットはパーカーのコピー云々吐かす奴はそもそもジャズ語る資格無いよ?マイルスとかだけ聴いてジャズを解ったようなね、クールの何ちゃらいうあんな下手物、あ、もう良いですか?
 え〜、ビッグバンドに珍しい(良く知らないが)ぶっといオルガンが入っているのが5曲収録されてるのも特徴です。ビービー言ってます。他のメンツもマシュー・ジーやブルー・ミッチェルととても楽しい連中で、良いよ!トップ・ブラスっつうんでフロントはスティットを除いて金管楽器。あとマシュー・ジーは唸ってない。
 他にもスティットは『Sonny Stitt Plays Jimmy Giuffre』など、ビッグバンド物が幾つか有るんだけど未だ聴いてないのも多い。多作過ぎるんだよな。『Sonny Stitt Plays Jimmy Giuffre』は9人編成のノネットで、テナーのジュフリーがアレンジしてます。こちらはリラックスした感じのスティットがシャレオツなアレンジの上で吹きまくっております。肩の力抜けた感じで「Singin' in the Rain」などベタベタでよろしい。

 さて『Sonny Stitt & the Top Brass』でもドラムを担当していたフィリー・ジョー・ジョーンズさんですが、彼はダメロン・バンドのドラマーでもあったんだけど、こういったビ・バップ・ビッグバンドが大好きだったみたいで、沢山の作品を残してます。『Drums Around the World』は彼の1959年の作品で、フィラデルフィア仲間のベニー・ゴルソンさんが参加して、多分音楽監督もやってる。フロントにリー・モーガンとブルー・ミッチェルを並べて、ピアノはケリーだし、選曲も良いし、最高っす。

 『Look, Stop and Listen』は彼がダメロンの曲をやる為に80年代に組んだ「Dameronia」というバンドのアルバムです。コレも名曲揃い。テナーはシカゴのジョニー・グリフィン。「Choose Now」とか「Our Delight」とかホント素晴らしい。(動画は本家ダメロンバンド)

で、ここら辺のオリジナルが、ナヴァロのバンドやクリフォード・ブラウンとベニー・ゴルソンがフューチャーされたブラウニー名義の『Memorial』あたりと思われる。こちらは後半の4曲がダメロンのセッション(前半はクインシー)。ダメロンもブラウニーにファッツ・ナヴァロを見ていたんだろうなあ。ラッパにはガッツの有る人選します。編成は大体デクテットかノネットですね。

 さて、バリー・ハリスさんです。今回あらためて『Luminescence!』『Bull's Eye』を聞き直しましたがパーソネルを見てセクステットだった事に驚きました。10人ぐらいいるかと思ってた。音が分厚いんだよな。バリーのマジックを感じますね。
 『Luminescence!』はトロンボーン、テナー、バリサクがフロントですね。一曲目がアルバムのタイトル曲ですが、イントロからバリーのピアノのブレイクでテーマに入るんだけどコレがカッコいい!元曲は「How High the Moon 」でございます。


で、このアルバムはテナーのジュニア・クックが良いんですよ。いやもう、全然認識の無かった、聴いても聴き流しちゃう系の印象だったんですが、ここではホント超カッコ良いソロを連発してます。あとペッパー・アダムスね。バリサクをテナーみたいに軽々と吹き倒して、スゲーパワーだな!ホント。バリーもウィントン・ケリーみたいなマジックの持ち主なんで、多分そういう事なんでしょうね。フロントに良いソロとらせるの上手いんですよ。
 『Bull's Eye』はトランペットにケニー・ドーハム、テナーにバリーの弟子のチャールズ・マクファーソンですね。この人たまにテナー吹くよな。バリはやっぱペッパー・アダムスです。編成変わっても分厚さは変わらないですね。バリトンが効いてるんだと思われます。ホント迫力ですよ。こちらも皆さんイケイケですが、名曲「Off Monk 」をやってるのがうれしいですね。

こちらのアルバムはピアノ・トリオも挟みながらですが、そちらももちろん素晴らしいです。

 次はジミー・ヒースさんですが、今「ジミー」まで打ったら勝手に「・ペイジ」と予測変換が出てきましたが、けしからんですな。ジミーといえばヒースさんです。良いですか?ジミーといえばヒースさんです。彼は1940年代のフィラデルフィア時代に若くしてビッグバンドのリーダーをやっていて、そこにはコルトレーンやゴルソンさんが在籍してたわけですが、やっぱゴルソンさんとは一緒にアレンジ研究をしてたらしい。ジミーさんは書けるテナーとしてディジーのビッグバンドにも在籍してましたね。コレはブルー・ノートに見に行きました。
 『Really Big!』はデクテットかな。アダレイ兄の参加が気になりますね。ガッツのあるダメロンともポップなジュフリーとも違うシリアスなアレンジだと思います。コレの「On Green Dolphin Street」はコピーしました。アダレイじゃなくてジミーさんの方をですが。アダレイ、ソロ適当だからな(偏見)。

 さて、またまたマシュー・ジーの登場ですが、コレ(『Jazz by Gee』)のアーニー・ヘンリーが入ってない後半3曲のセッションがフロント4人のセプテットなんでそこをチョット。

 まあその、なんだ。音が薄い!イヤ、悪口ではなくて、ソコが良い。気がする。バリーのセクステットより全然薄い!ペット、ボントロ、テナー、バリがいてコレは、ワザとやってるか天才(ある意味)のどちらかで、まあ絶対後者ですな。前も書いたけど、マシューはもう唸りまくりで、いつもこうなんかと思ったら、ルーのアルバムでも『 the Top Brass』でも静かに吹いてるんで、あんまり無い自分のリーダー・セッションで気合いが入り過ぎたか、酔っ払っていたかどちらかであろう。

 ペットはドーハム、テナーがフランク・フォスター、バリがセシル・ペイン。ラスト2曲がブルックリン絡みの曲名でペインが出身だからね。バップでバリサクって言ったら、ペッパーさんかこの人だよな。バリバリ、ゴリゴリのペッパーさんと違って、マイルドな印象です。で、アレンジなんだが、まあ聴いてみてくださいよ。やっぱ爆笑だよな。僕の会った事のあるボントロは誰もが譜面に強くてリズムも音感もセンスバッチリで、ヘタクソはマンハッタンで会ったボブくんだけなのだが(NYにもヘタなのおるんや〜って思ってとても安心した思い出あり)、きっとジーも超凄腕に違いなくて、でなきゃベイシーなんぞで吹けるわけも無いんだが、そのはずでコレは面白すぎる。天才。しかしこのアルバム、よく考えたら全然ビッグバンドぽく無かったな。まあいいか。
 因みにパノニカさんの編んだインタビュー集『ジャズ・ミュージシャン3つの願い』という本(図書館で借りよう!写真も素晴らしい!)で、この人、モブレーと漫才みたいなやり取りしてます。ハッピーで愉快な人だったと思われる。

 最後はまたポニー・ポインデクスターの『Pony's Express』ですが、こちらは『 the Top Brass』とは逆に金管楽器ゼロのサックスのみのノネットですね。

前に色々書いたんでアレですが、超強力なフロント陣によるメッチャ楽しいアルバムなんでソコの貴方、今すぐポチるべきですよ!損はしません!ドルフィーとデクスター・ゴードンはマジで反則。
 しかしジャケが…


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