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『夢見るシネマ』を読んだ ~文学フリマ39で買った本~
文学フリーマーケット東京37。それは私が初めて文学フリマに一般参加したイベントだった。
1つ1つ、ゆっくり見て回りたかった。
noteやtwitterで見かけた人たちを探したかった。
「次回の文フリには、私も出店します!」と挨拶して歩きたかった。
先を行く先輩たちに追いつきたかった。
そんな中で『良物語feat.studio n.e.o』さんのブースを発見した。
開場を2周回った時の事だった。
twitterのアイコンが可愛くて、サークル名に『良物語』と入れちゃうなんて
どんな人なんだろう、と思っていた。
大きなポスターを背に男の人が2人、ブースに座っていた。
私は「えっ」と立ち止まった。
勝手に女性だと思っていたからだ。
Webカタログに載っていた書影を見ても、迷うことなく女性だと思っていた。
それでも探偵ものも読みたいし、やっとたどり着けたのだし、と
挨拶をして、可愛い本を購入させてもらった。
良物語さんは驚いて、恥ずかしそうに、「どうぞ」と差し出してくれた。
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読んでみて思った。
この作者は、優しすぎる。
ギスギスドロドロした描写は無く、
探偵ものというよりは、わちゃわちゃものだった。
でもそれはやっぱりtwitterのアイコンと同様に、かわいらしい感じがした。
でもちょっと心配になる。
この作風で探偵ものを書き続けるのだろうか。
だから名探偵ではなく、迷探偵なのか。
次回の文フリ東京38にも出店するのだろうか。
私の心配はよそに、良物語さんは文フリ東京38には出店しなかった。
色んな都合があると思う。
もう出店しないのかな、と気になりながら
自分の初出店を終えた春だった。
文フリ東京39がやって来た。
Webカタログを目を皿のようにして見ていると
良物語さんの名前があった。
新刊もある。
私はウキウキと買いに出かけた。
いや、買いに出かける前に、私のブースに来てくれた。
ビックリした。2冊お買い上げいただいた。
初対面の文フリ東京37とは逆の立場になった感じだ。
私も負けじと友人売り子Aにブースをお願いして、良物語さんのブースへ行った。そして、新刊を手に入れた。
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4編からなるその1冊をドキドキしながら読み進めた。
また優しすぎるのかと思っていた。
そうではなかった。
1話目の『夢見橋』は驚いた。
こんなに作風を変えて来るなんて、と驚いた。
ザックリと切られたラストに、ハッとする思いだった。
良物語さん、かっこいい。
カワイイと思っていた作者が急にカッコよく思えた。
前作を読んでいたからこその、感動だった。
あの柔らかい色合いのポスターの前で、「でもダメなものはダメ」とハッキリ言う姿が思い浮かんだ。小説は物語に込めた作者の人柄が出る。
登場人物の誰に作者の言葉を言わせるのかが重要で、
読み手に凄いストレスを当え続けた最後
それが物凄い角度から来た。
『夢見橋』はそんなお話だった。
3話目の『怪人砦の三悪人』は前作のスピンオフだった。
こういう繋がり好き。
まさかのあの脇役の人たちが主人公だった。おもしろい。
前作を読んでいて良かった。
継続して出店してくれると、そんな楽しみがあるんだな、と改めて思った。
小説の良さのような気もする。
私も続編を楽しみに待たれるものを書きたいな、と思った。
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