広尾とDMMの募集から推察する2000口クラブの思惑
広尾会員に走った衝撃
昨日10月18日に広尾サラブレッド倶楽部より2025年・2026年2歳馬募集の全容が公開された。兼ねてよりサウスニアを彷彿とさせるラインナップは話題となっていたが今回も強気な募集価格に驚かされた。今回のクラブの姿勢には良くも悪くも違和感を覚えたと同時に、DMMの夏の募集で400口募集がなされたことと合わせて2000口クラブが変化を求めているのは事実。広尾の会員であるので広尾の募集を中心に2000口クラブの方向性を推察する。あくまでも筆者の想像の域を出ないので話半分で聞いてほしい。くれぐれも鵜呑みにして各クラブに問い合わせることは差し控えてもらいたい。
広尾サラブレッド倶楽部2025年・2026年2歳馬募集
まずラインナップから見ていこう
簡易的に表を作成した。目につく金額は後ほど話すとして生産地や生産牧場が気になった。1歳馬2頭はアイルランドと浦河産。More Than Sacred'23は昨年の菊花賞馬ドゥレッツァの半弟である。母が本馬を身籠もっているタイミングでノーザンファームからユーロングループに所有が移った。そしてパンサラッサによって関係が築かれた倶楽部が購入してきた経緯がある。そしてパドックシアトル'23は谷川牧場生産でセリで購入し募集されている。次に当歳馬。外国産馬2頭に浦河産の牝馬2頭である。浦河産の牝馬2頭は桑田牧場生産である。
こうしてみるとわかりやすいが兄弟が広尾で募集されていたり母が広尾っ仔という募集馬がいないのである。
昨年であればマードラド(ミスペンバリー'22)がいたわけである。
筆者は本募集と追加募集で明確にカラーの違いをつけてきたという印象を受けた。
ここで金額について見ていこう。今回の募集の販売総額の平均値は7400万円である。外国産馬の輸入経費やセリ購入価格を考えても中々のお値段である。ちなみに夏の募集の販売総額の平均値は3433万円である。昨年の追加募集の販売総額の平均値は4760万円である。今回の募集の販売総額のぶっ飛び具合がよくわかると思う。
募集額から見るターゲット層と倶楽部姿勢
これだけ募集額を跳ね上げてかつ広尾ゆかりの血統でもないのに既存会員から出資を受ける(すなわち売る)ことができるのか。答えはノーであろう。既存の会員で乗り気の方はネット上でもそう多くないように見受けられる。となるとターゲット層はこれから広尾会員になる方であろう。菊花賞馬ドゥレッツァの弟、ヘリオスの妹、といえば聞こえは良いし確かに良血馬が揃っている。既存会員でも資金に余裕があれば出資するのであろうが、我々はディメンシオンをはじめステラリードの最後の仔やパラスアテナの最初で最後の仔の募集を待っている。そちらに力を入れたい会員が多いと思う。ではなぜこれだけの良血馬をわざわざ揃え高額募集をかけているのか。ここからは推察の域を出ないしあくまでも筆者の考えなので話半分に聞いてもらいたい。近年の一口馬主ブームは勢い衰えず資金をある程度お持ちで新しく始めようとする人は当然大きいところを狙えるノーザン・社台系のクラブを考える。そうした動きにより特にシルクやキャロットといった人気クラブは入会すら困難な状況に。それでも諦めきれない層に機会を提供するべく個性豊かな良血馬を揃えて高額募集にしているのである。
DMMの400口募集
広尾の募集情勢の変化に先立ちこの夏DMMは400口募集を始めたらしい。筆者はDMM会員ではないのでその是非については言及しないがこちらも変化を求めているのは事実。この400口募集もシルクやキャロットに入会が叶わない層に同じ400口でノーザン生産馬を提供しようということなのだろう。
2000口クラブの思惑
手段は違えど広尾にしてもDMMにしてもシルク・キャロットに入会が叶わない層へのアプローチをかけているのであろう。なぜこういった富裕層にアプローチをかけるのか。その要因として2000口クラブの特性が挙げられる。2000口ということは一口価格はある程度リーズナブルに抑えられ維持費も口数によるが1/2000では高額にはならない。つまり一口馬主に対する金銭的なハードルは大きく下がり学生でも始められる。無料4口やキャッシュバック制といった特典を用意しているのもあるだろう。ただし裏を返せば辞めやすくもあり維持費の滞納といった話も少なくなくそうしたデメリットを抱えている。クラブとしてその状況はビジネス的によろしくない。要は既存の会員に依存するのではなく新たな別の属性を持つ安定した太客が欲しいのである。そこで目をつけたのが400口クラブ入会希望層でありいずれは広尾ゆかりの血統にも多数口出資してくれれば倶楽部としては成功なのである。ただ既存会員を繋ぎ止めるのも大事なことなので各募集に明確な色分けをしているのであろう。これはDMMにも言える。既存の会員も出資できるよう2000口を残しつつ一部は400口にするという形を取ったのであろう。ここまで論じたことは筆者の想像の域を出ないし倶楽部は全く異なる思惑を持っている可能性もある。ただ今年の募集で2000口クラブが大きな変化をつけてきたのは事実である。今後の成り行きを見守りたいと思う。