「東京の女」真鍋昌平 何者かになる人達

ウシジマくんでお馴染みの真鍋昌平さんの短編集「アガペー」の1番最後の章の「東京の女」。
友達から教えてもらって読んだ。
読んだあと、暫く泣いてしまった。それは感動したからでは無い。読んだ事を後悔したくらいにキツイ漫画だった。


東京に来たものの常にお金の不安は付き物。物欲やその他欲求は膨れ上がるばかりでバランスが取れない。


主人公はプロのカメラマン。しかしそれだけでは食ってゆけないのでスナックで働いている。そして、そこでも女としての自分のスキルや価値を見せつけられる。

「男に自分を追わせろ」といわゆる「メス力」の高い女から言われるのは屈辱的だと思う。

そんな過酷な中でもポーカーフェイスを貫き生きる彼女。私はこの主人公に好感を持った。

この話を読んだ時私には付き合っている人がいた。でも私はいつも不安で寂しかった。彼はよく「何者かになる」というワードを口にしていた。実際に彼は凄く稼いでいた。
東京はお金が無くても楽しめると思うが、お金がある方がより楽しく華やかになる。
私は彼や彼の周りで稼ぐ人達が羨ましかった。そしてずっと「何者かになる」という言葉が頭の中に引っかかっていた。

主人公はやりたい事がハッキリしている。「何者かになる」ではなく自分がなりたい姿がきちんとあるのだ。だから恋愛とか男にそれほど流されないんだろう。

私は男の人に自分の価値を見出して貰いたいとずっと感じながら生きてきた。そんな私にとってこの主人公のなんと眩しいことか。自分がない事を突きつけられた私は泣いてしまった。本当にキツイ漫画だった。

この主人公が今後成功するのかそうで無いかは分からない。おそらく他の問題も沢山抱えているだろう。
しかし、ラストシーンで彼女が元恋人に自分の憧れの人の話をする後ろ姿はかっこよかった。


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