デュエル・マスターズで避けられるようになったカードデザイン (1)
デュエルマスターズの20年の歴史の中で、特定の効果が採用されにくくなったり、避けられたりするようになるということがある(わかりやすい例だとランデス)。今回はそれについて紹介していきたいと思う。
なお、デュエプレでも同様の傾向が見られる。
1.任意効果
「○○してもよい。」効果が、「○○する。」に置き換わっているという話。
任意効果を増やすと、その効果を使う・使わないの判断を都度迫られるため、プレイ時間を間延びさせかねない。また、効果を解決し忘れたときに任意効果だと巻き戻しを認める・認めないでトラブルが発生しやすい。
MtGでは、プレイヤーに選択肢を与えるカードを作るとき、ある選択肢が状況を選ばず極端に偏るものにはしたくないという指針があるようだ。
選択肢が減らされる傾向は、発動することがデメリットになりにくいドロー効果で特に顕著である。
実例を挙げてみよう。先日殿堂解除された《サイバー・ブレイン》というカード。
S・トリガー部分を除くと「自分の山札からカードを3枚まで引く」というシンプルなテキスト。ルール上は1枚ずつ引きながら(0枚・)1枚・2枚・3枚のうち好きな枚数を選べるようになっている。
しかし一般的に、この手の呪文を実戦で使う際はほとんどの場合――――少なく見積もっても9割以上の状況で――――3枚ドローを選択するだろう。言い換えれば、ドロー枚数を選べることに意味がある状況は全体のうち1割以下しかないことになる。
こうした、(リスクの小さい)ドローの任意効果は減少傾向にあり、2017年に登場した《サイバー・ブレイン》の調整版の《王立アカデミー・ホウエイル》は、同じ3枚ドローだが強制効果になっている。
では、実際に強制ドロー・任意ドローのリリース枚数がどれだけ変わっているのか。DMvaultのカード検索機能を使って登場時期ごとにテキスト検索することで、その傾向を調べた。
原則的に、ドローが強制であるものは「○枚引く」「○枚引き」表記であり、任意のものは「○枚引いてもよい」か「○枚まで引」が含まれるため、それぞれに該当するカードの枚数を勝太編以前とジョー編とで集計した。
「枚引く」or「枚引き」に該当するカードは勝太編以前の15年間で177枚だったのに対して、ジョー編は5年間で450枚。逆に、「枚引いてもよい」or「枚まで引」を含むカードは、勝太編まででは271枚あるのに対して、ジョー編以降は101枚にとどまっている。
(「枚引き」だと「○枚引き、○枚捨ててもよい」みたいな任意効果は拾えないだろと思われるかもしれないが、そうしたテキストの任意効果カードはジョー編以降だと《スターマンの天海珠》のみ)
2.シャッフル(サーチ・リクルート)
時間が経つにつれ、山札をシャッフルする効果が減少している。一番わかりやすいところだと山札全体を見るサーチ効果がそれに該当する。
デッキをシャッフルするという行為は、それだけで時間を食うし、トラブルの要因にもなる。上で挙げたようなサーチカードの場合はその側面が特に顕著で、「非公開領域を見た上で無作為な状態に戻す」のは、言葉にするのは簡単でも不正が入り込む余地を排除して人力で行うのは手間な作業だ。
更に、デュエルマスターズというTCGにはシールドの概念があるため、山札全体からサーチを行う際には盾の中身をチェックするのが一般的。山札の中身と採用枚数を照らし合わせて盾の中身を把握するので、そこでもまた時間がかかる。
それから、1.にも言えることだが、サーチ・リクルートを行う際の選択肢があまりに多いと、同じデッキを扱う場合でも初心者と上級者とで強さに差が出やすくなる。複雑すぎるゲーム性は新規参入を妨げる恐れがある。
これらが要因で、山札をシャッフルするカードは減少傾向にある。
1.と同様に、MtG開発部もゲーム中のシャッフルを減らすよう心がけているようだ。
実際にリリースされた枚数を比較してみよう。
まず、「山札をシャッフル」でキーワード検索して該当するのは246枚。そのうち、勝太編以前のカードは208枚あるのに対して、ジョー編以降のカードは38枚。しかも後者は昔のカードのツインパクト化やリメイクカードが多くを占める。
続けて、サーチやリクルートのように山札全体を見られるカードの枚数も調べた。「自分の山札を見」でキーワード検索すると、合計200枚。そのうち、勝太編以前のカードは177枚あるのに対して、ジョー編以降のカードは23枚。やはり枚数比に差がある。
その一方で、近年勢力を伸ばしているサーチも存在する。それは、《ヘルコプ太の心絵》や《天災 デドダム》のように山札の上から○枚を見るタイプ。
こちらは山全体のサーチと違い、選択肢が狭く盾確認も難しいため、大量に刷ってもゲームスピードを損なわない。1枚1枚のカードパワーが上がり4枚積みの増えた高速環境の現代デュエマでは、見られる範囲が限定される代わりに全体サーチより低コストで済むこちらのほうが適しているケースが多い。
「山札の上から」and「見る」でテキスト検索すると該当するのは全261枚。このうち、勝舞編では51枚、勝太編では64枚だったが、ジョー編以降は146枚で、ペースが上がっていることがわかる。
特にこの差は、今と昔のカテゴリーごとのサーチカードを比べるとわかりやすい。
3.プレイヤーを問わないバウンス
初期のバウンスカードは軒並み、対象のクリーチャーを自分・相手問わず選べるようになっていた。MtGのバウンスも標準仕様は同様であり、それに倣ったものだと思われる。
しかし、近年では相手限定のものが主流になっている。
恐らく、自分のクリーチャーを戻す(=ビートダウンよりコントロールやソリティアデッキ向けの動きの)択があるとゲームの低速化を招くため、それを避ける目的と、1.で書いた通り選択肢を無闇に増やしてしまうのを嫌ってのことだと思われる。
実際にどのくらいのバウンスが相手限定になっているのか、カードの枚数を比較したい。とはいえ、バウンスはキーワード能力ではないため機械的に調べるのが少々面倒だ。
今回はテキストに「クリーチャーを」「選び」「持ち主の手札に戻」の3つを含むカードをバウンスカードとして定義。そのうち、「相手のクリーチャー」を含んでいれば相手限定バウンス、そうでなければ自クリも選べるバウンスとして集計した(この方法だとツインパクトのように効果をいくつも持つカードや複雑なテキストを誤って集計してしまうため正確とはいえないが、ざっくりした傾向はわかるだろう)。
相手限定のバウンスはジョー編では57枚だが、勝太編以前は24枚。逆に、セルフバウンス可能なものはジョー編で33枚、勝太編以前は90枚。傾向に明らかな差が見て取れる。
元来、単体へのバウンスカードというのは相手に使うことが主な用途だった。ゲーム展開次第では《サーファー》を自クリに打ってcipを使い回したりするようなことはあったものの、あくまで応用としての使い方であり、相手クリーチャーの除去を目当てに採用されることがほとんど。自分のクリーチャーを対象に取れることはさして重要視されなかった。
転機となったのは《ドンドン吸い込むナウ》の登場だろう。
通常、テンポアドしか取れない軽量バウンス呪文はサイキックメタとしての側面が強く、普通のコントロールデッキに大量投入するとデッキパワーを落としやすい。
しかし、サイキックを殺せと言わんばかりに投入されたぶっ壊れバウンス呪文《吸い込むナウ》は、サーチにバウンスが付いているため4投しても腐りにくく、バウンスありきの用途に縛られない。
《エクス》《サイクリカ》《アマテラス》といったパワーカードを使い回すだけでも非常に強力ではあるが、特に印象的なのは【イメンループ】・【フォーミュラ】・【ビッグマナ】のような、盾の枚数が増えてもあまり気にならない青緑+α基盤デッキでよく見られる《パクリオ》+《吸い込む》セットだった。
3〜4ターン目に除去とハンデスのどちらもが腐るシチュエーションはまず発生しないため、両者は補完関係にある。【ビマナ】や【キューブ】などクリーチャーを並べないデッキが相手ならば序盤のバウンスは腐るが、その場合は《パクリオ》を先に出してから《吸い込む》で戻せば、ハンドを回復しつつ次の《パクリオ》を用意できる。そして、両者とも2コストブーストから繋がるため、無理なく序盤の動きに厚みを持たせることに成功していた。
前述した動きが特に盛んに使われていたのはE3中期~Rev前期あたりだと記憶しているが、相手限定バウンスが増え始めたのはいつ頃だったのか。
「相手限定バウンス率(バウンス効果を持つカードのうち相手限定バウンスが何割あるか)」を、その弾から4弾前まで遡った移動平均線で示すとこの通りになる。
DS期までは、相手限定バウンス率は25%以下を推移している。その内訳も、《ケロディ・フロッグ》のようにぐるぐる使い回されるのを防止するためのものや、《爆熱 BAGOOON ミサイル》のように盤面に干渉する別モードを持つもの(モード間の統一感を持たせるため)など、特殊な事情を持つケースがほとんどで、特段自クリのバウンスを敬遠している様子は見られない。
しかしRev1~2あたり(GP1st開催時期)から相手限定のバウンスが増加し、そこから一度も25%を切ることが無く、現在では自クリも選べるバウンスのほうが少数派になってしまった(セルフバウンスが可能なものも過去に元になったカードがある場合が多い)。
はっきりとした要因は定かではないが、《吸い込む》が原因である可能性は十分に考えられる。
あと、時期的には【サイクリカランデス】とかの《ガロホ》も影響しているかもしれない。
集計疲れたので多分part2は書かない気がする。
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