覚醒編ヒストリー ~その時、デュエマが壊れた~ 前編
筆者の覚醒編に対する(負の)思い入れが強いため、該当時期のデュエマが好きな人はこの記事を見ないほうがいいです。
「覚醒編でついていけなくなった」「超次元でやめた」
こうした(元)プレイヤーの声は数多く見られるが、10年前ともなると実際にこの頃のデュエマをプレイしていてどのように変化したのかを知っているプレイヤーは多くないのではないかと思う。
今回は、超次元の登場による変化と、何故それまで付いてきていたプレイヤーが離れてしまったのか、それを時系列で振り返りたい。
嵐の前の静けさ
覚醒編前の2010年4月、次期殿堂入りカードが発表された。
EM期にそのデッキパワーで環境を荒らしていた《キリコ》と周辺パーツが全面規制。トップ《アマテラス》に怯え、お守り感覚で《メスタポ》を投入する時代は終わりを告げる。
同時に【青単】の理不尽ムーブを作り出していた《アロマ》も消えて、環境は一新された。
このとき不可解と思われた《スパイラル・ゲート》の殿堂入りは覚醒編でのハイパーインフレの伏線であったが、まだ超次元ゾーンの存在も明かされていないこのときは誰も知る由はない。
殿堂入りの影響を受けず不利対面の消えた【Mロマノフ】・【Bロマノフ】・【シノビドルゲ】・【ハイドロ】・【ランデスH(D)M】・【黒緑速攻】あたりが次期メタデッキとして挙げられることが多かっただろうか。
まだCS開催が盛んではなかった時代だが、5月には新殿堂でのCSが2度開催されたため、そちらの結果にも触れておこう。
第2回桃太郎決闘祭では、1位【ドロマーコン】・2位【ボルコン】・3位赤入り【ドルゲ】・4位が【ボルコン】。第2回関東CSでは1位が【ボルコン】・2位が【ドロマーフェルコン】・3~4位が【黒緑Bロマ】。
新殿堂では、ドロマーカラー及び緑抜きのグッドスタッフ系コントロールデッキが環境の中心となっている。
戦国編以降のコントロールはマナブーストから素早くパワカを叩きつける構築が多数派になっていたが、【除去コン】の苦手な《PG》・《ソルアド》・主要デッキの規制と環境の低速化によって、自分の動きを押し付けるデッキを相手にしても、ハンデス始動から1:1交換を行っていくことで十二分に戦える環境になっているのが見て取れる。同時に、ピーキーだが除去コントロールにめっぽう強い【Bロマ】の上位入賞も確認できる。
トップメタ筆頭候補とされていた【Mロマ】はやはりビートメタや妨害に弱く、トリガー《スクラッパー》一発で崩壊するなど複数に脆い部分を抱えており、超次元呪文が出るまではその域に達していなかった。
2010年6月 覚醒編第一弾発売
「チャクラゲー」襲来
デッキ外の新たなゾーンである超次元ゾーンが登場した(正確には少し前にコロコロコミックで《ムシャホ》と《若武者》が収録されていたが)。
両面クリーチャーや新ゾーンは発売前からかなり話題になったが、超次元呪文でサイキック・クリーチャーを呼び出す動きは一見すると目新しいようで、感覚としては5マナを支払ってリアニメイト呪文でフィニッシャーを踏み倒すのに近い部分があり、ギミックの使用感自体は馴染みのあるものだった。
36弾に収録されたのは《ボルシャック・ホール》などの5コストホール×5文明分、それに対応するサイキック・クリーチャーもSR・UCにそれぞれ5文明ずつ。
全体的に、SRは文明の一致する5コストホールでしか呼べず覚醒が難しいかわりに覚醒前・後共にスペックが高めで、UCは呼び出すのも覚醒も楽なかわりに性能自体は淡白な傾向にある。
とはいえ、従来の5コストクリーチャーは《龍神ヘヴィ》《ジャック・ライドウ》のようなデメリット無しパワー5000+cip持ちはオーバースペックと評されることが多く、超次元呪文でサイキック・クリーチャーを呼ぶと大抵はそのラインを標準で超えるため、UCでも相当に高性能と言えた。
デッキを選ばないホール呪文の性能も有り、新規サイキック・クリーチャーの多くは専用構築だけでなく、それまでのメタデッキにそのまま投入してもある程度機能するようになっている。
そんな中、《チャクラ》の存在は異質だった。
ホールで呼び出すと実質5コスト・パワー5500の相手プレイヤーを攻撃できないブロッカー。ここまでは平凡だ。
しかし、ターンの始めの覚醒条件のホーリー・フィールド、これが問題だった。HFは自分の盾枚数が相手以上なら達成される。
盾枚数が相手以上。即ち、ゲーム開始から何もなかった場合、両者の盾は5枚ずつなので次ターン開始時にそのまま覚醒できてしまうのだ。序盤から適当にシールドを割ると相手を有利にしてしまうデュエル・マスターズというTCGにおいて、この覚醒条件はあまりに緩い。
しかも解除も持っているため、覚醒後に除去を打っても翌ターンには再覚醒されてしまう。
覚醒するとパワー13500のTブレイカーブロッカーが《マリエル》も無視して自由に動き回るようになる。《ミル・アーマ》や《フランツ》のようなコスト軽減、《ライフ》《青銅》によるマナ加速を使えば4ターン目から降臨する。使われている側のイメージとしては軽くて巨大な《PG》といったところ。
先行販売時から言われていた。「《チャクラ》だけはやばい」と。
この頃で5ターン前後にTブレイカーの大型フィニッシャーを降臨させるデッキと言えば【Bロマノフ】がいたが、そちらがガチガチの専用構築を必要とし《カラダン》(《Bロマ》含む黒の生物4枚落とし)→《ヴィルジニア》と要求値がそれなりに高めであるのに対して、こちらは軽減からホールを打てばいいだけで構築上の制約もほとんど無い。マナブーストには緑、軽減には青が必要だけど、この時代までで両方を採用しないデッキは速攻以外ほぼないし。
軽減やマナ加速からの《ホール》《チャクラ》。この早い段階から手軽にファッティが降臨する理不尽な動きは「チャクラゲー」と呼ばれ、多くのプレイヤーの頭を悩ませた。
この時代の踏み倒しメタは《百発人形マグナム》しかなく、呪文メタはホール呪文より重いものか癖が強いものが多いため、着地を防ぐのは難しい(一番まともな呪文メタ《ゴーゴン》を入れられる青型【M・ロマノフ】が使われ始めたのはこの時期)。
《チャクラ》の覚醒条件を回避するために盾を割ろうにも、本体がブロッカーでウィニーの盾割りを防ぐ上に、3t目が《ミル・アーマ》だった場合はブロッカーが2体並ぶ。そもそもコントロールデッキの場合、無理やり盾を割らせられる展開自体が望ましいものではない。
除去呪文を打てば解決出来るが、覚醒後だと相手ターンの始めから自分のターンも終わりまでの間に除去札2枚を打つ必要があり割に合っていないし、その間相手は自由に動けるため不利を被る。よって覚醒前に除去を打ちたいが、早ければ4ターン目に除去を強要してくるので、特に緑の入らないデッキの場合《デーモン・ハンド》のような重い除去呪文は到底間に合わない。戦国編以降のデュエマは強い軽量除去が長らく不在で(一応36弾で《リーフストーム》が登場したが)、汎用性の高い《魂と記憶の盾》は殿堂入りしていたため、手打ちのサイキック除去は《スパイラル・ゲート》+《ストロング・スパイラル》や《陰謀と計略の手》に頼らざるを得なかった。
しかし、第一弾時点ではあからさまに壊れていたのは《チャクラ》ぐらい(序列は光>>闇≒火>>自然≒水)。
他のサイキック・クリーチャーは神化編までのクリーチャーより一回りハイスペックではあるものの、ホール先が呼び出し先が限定されていたこともあり許容内のインフレで、《チャクラ》や(超次元でバグった)《ダーツ》は流石にやりすぎだが、いずれ規制されるだろう。といった感じで、まだ好意的に受け止めるプレイヤーも多かったと思う。
2010年7月 スーパーデッキ ウルトラ・NEX&ルナティック・ゴッド発売
スーパーデッキ2種発売。覚醒編ということで、ここでも新規サイキック・クリーチャーと対応する超次元呪文が登場した。
ウルトラ・NEXの方は《シューティング・ホール》が収録されたが、この時期はまだブロッカーメタ版の《ボルシャック・ホール》止まり。
しかし、ルナティック・ゴッドの方に収録された《ミカド・ホール》は、序盤には墓地回収が腐りやすい《リバイヴ》とは違いパワーマイナスという汎用性に長けた性能となっており、もちろん《リバイヴ》と両方積んで使い分けても強い。
更に同デッキでは闇のサイキックブロッカー《スヴァ》が登場したため、他文明に先駆けてフィニッシャー《ランブル》とブロッカー《スヴァ》の使い分けが可能になる。
これまでは白青や白青緑、白青赤などで組まれることもあった超次元コントロールは、このデッキの発売以降は黒が確定色となった。
2010年9月 覚醒編第二弾発売
本格的に超次元ゾーン自体が壊れていると認識されるようになったのがこの37弾だ。ここでの超次元のインフレは大きく分けて3種類に分けられる。
1.《時空の封殺ディアスZ》登場
この弾までのサイキック・クリーチャーは(《チャクラ》を除けば)十分に機能するまでに一工夫が必要なもの・機能させても大したことのないものばかりだった。
つまり、適当にホール呪文を打っても、強いのは強いが大きくアドバンテージを稼ぐのには向かず、そのパワーを活かすには構築を寄せる必要があった。
しかし、新登場の《ディアスZ》は違っていた。
スーパーデッキで登場していた《ミカド・ホール》を打てば、パワー-2000を放ちながらパワー7000のWブレイカーが場に登場し、更に本体には互いの墓地をリソースにして堅実にアドバンテージを稼げるアタックトリガーが付いている。
これは当時の基準ではフィニッシャー格として十分すぎるものだが、その割に呼び出すためのコストが5と異様に軽い。しかも、《ミカド》自体の性能・《スヴァ》《ランブル》との使い分けが可能な自由度の高さのお陰で、適当にホール呪文をガン積みしても有効に機能する。
覚醒の条件が厳しくオーバーキルなのを考慮して覚醒前を高性能にしたのだろうと思われるが、それにしてもいささか強すぎた。墓地を山札に返すため、ただでさえ再現性の高い「チャクラゲー」に押し負けやすかった【Bロマ】の立ち位置は更に怪しくなった。
そして、5コストでお手軽にフィニッシャーを投げつけられる《チャクラ》が狂っているのではなく、サイキック・クリーチャー自体がそういった意図のデザインであり、それが今後のデュエルマスターズである。その指針がユーザーに提示されたこと自体が何よりも重大だった。
(なお、同弾で後のプレミアム殿堂カードの《バイス・ホール》も登場していたが、《ディアスZ》は《ミカド》で出せば良く《ヤヌス》《ディアボロスZ》も未登場だったため、【Mロマノフ】ですら採用されなかった)
2.軽量サイキック・クリーチャーの登場
今弾でコスト2~3のサイキック・クリーチャーが新登場。5コストホールで呼び出すクリーチャーの選択肢は大きく広がった。
例えば《フェアリー・ホール》を唱えた場合、以前は《ジャパン》を出すか各文明の5コストサイキックのいずれかを出すかだったが、今弾から大量に追加された軽量サイキックにより、無数の組み合わせから選択できるようになる。
しかもこれらはおまけ程度ではなく、選ばれなかったり、味方に除去耐性を付与したり、ブロッカー持ちだったり、それでいて覚醒条件もそれほど難しくなかったり種族も優秀だったりと、メインデッキのウィニーとは一線を画していた(ちなみに、《キル》の耐性付与は《ジャニット》に退かされるのを嫌って付けたとのこと)。
神化編までのコントロールデッキの定番フィニッシャーは《ボルメ》2種・《PG》・《ヘヴィ》+《メタル》・《キング》・《デルフィン》・《ゼン》+《アク》などがいたが、いずれも有効でない対面や状況があるし、コストが重いとどうしても序盤は腐ってしまうため、やすやすと4投出来るものではなかった。
だが超次元呪文はそれらより軽量な上、無数の選択肢から状況に応じてクリーチャーを呼び出せるため、何枚積んでも腐りにくくなる。
また、ホール《ボルシャック》に加えてホール《ジョン》《タッチャブル》ギミックを獲得した【Mロマノフ】は大きく展開力を向上させた。
3.《ドラヴィタ・ホール》《時空の精圧ドラヴィタ》の登場
36弾のSRサイクル内で1枚突出した性能の《チャクラ》だったが、ひとつだけ明確に見劣りするポイントがあった。それは、呼び出せる《シャイニー・ホール》が相手クリーチャー1体のタップという、同サイクルで最も腐りやすい効果であるという点だ。もしかしたら、そこでホールと覚醒獣の性能の釣り合いを取ろうとしていたのかもしれない。一番腐りにくい《エナホ》・《フェアホ》に対応するサイキックがあれだったし。
しかし、今弾ではなんと《シャイニー・ホール》よりも高性能で《チャクラ》を呼び出せるカードが登場してしまった。その名は《超次元ドラヴィタ・ホール》。
盤面の状況に強く依存する《シャイニー・ホール》と違って自発的にアドバンテージを獲得出来る、プレイヤー達が待ち望んだ一枚だ。
コスト3以下の呪文を回収するという効果は、超次元呪文の登場でデッキを呪文に特化させても困らなくなった時代において強力無比だった。
ハンデスやドロソに加えて、サイキックメタの軽量除去呪文を回収しつつ《チャクラ》を押し付けられる。《チャクラ》に強いのはやっぱり《チャクラ》とばかりに【ドロマー超次元】がトップメタになるのは必然であり、【ネクラ超次元】に対する【ドロマー】の優位性は決定付けられた。そして《アヴァラルド》のバリューは更に向上した。
《チャクラ》を呼び出すためのホール呪文が5枚以上積めるようになったことも大きなポイントだ。
通常、超次元以外のコントロールデッキがサイキックメタにバウンス呪文を積もうと思っても、そうたくさんスペースを取れるものではない。
一方で超次元コントロール側は2.で書いたとおり、今弾から呼び出せるサイキックの種類が一気に増え、更に光ホールで呼び出せるカードに《時空の精圧ドラヴィタ》という制圧用カードまで追加されたため、ホールをガン積みしても腐らない。マナカーブや枚数配分に気を使った緻密な構築を練るより、構築を歪めてでも素早くホール呪文を連射すれば勝手に優勢になっていく。
神化編までの定石である「パワカを《ジェニー》や《パクリオ》で先に落とす」戦術は、超次元呪文の採用枚数を考えると決定打にならない。大量搭載した5コスト呪文で、ハンデスをものともせず状況に応じてクリーチャーを繰り返し踏み倒す様子は往年の《インフェルノ・サイン》(あるいは《インフェルノ・ゲート》)を想起させるが、そちらと違って下準備の必要がなく、構築の制約もなかった。
ゲーム性の大幅な変容
では、この3つのインフレによってもたらされた変化とは一体どのようなものだったのか。
それは【ホーガン】【Bロマ】のような、超次元を積むことが明確なデメリットになるような一部の特殊なデッキ以外、ビートダウン・コントロール問わず、ホール呪文を4積みするのが最適解となり、所謂フィニッシャー型デッキは死に絶えたことだ。
その典型例が【ボルコン】である。5月の殿堂入り直後にトップメタだったデッキだが、既存のアドバンテージの概念を無視したサイキックに対しては1対1の交換が通用しない。フィニッシャーにしても、ただ安全なフィニッシュしか役割のない《ボルメテ》よりも、初動のハンデスやドロソを《ドラヴィタ・ホール》で拾って《チャクラ》を押し付けたほうが強いし、そもそも4ターン目から超次元呪文を連打される時代に《ボルメテ》は遅すぎた。
環境が低速化したお陰で緑抜きのコントロールでも戦えるようになっていたものが、フィニッシャーの大幅な軽量化で一周回って緑が不要になるのは皮肉な話だ。
環境は超次元呪文に染まった。《ドラヴィタ・ホール》《ドラヴィタ》と《ミカド・ホール》《ディアスZ》を獲得した【ドロマー超次元】がトップに立ち、《ジョン》《タッチャブル》を獲得した【Mロマ】が続く2強環境となった。
ゲームスピードの高速化は凄まじく、4-5ターン程度で決定的な局面を作れるデッキか、それまでの間にハンデスや呪文メタで相手の超次元呪文詠唱を止めるデッキ以外は人権が無くなった。そこにフィニッシャーの多様性などない。
超次元にあらずんば人にあらず。超次元呪文をメインに据えるデッキ、超次元呪文へのメタを貼ったデッキ、そして【速攻】の三種類以外は上位争いから締め出された。覚醒編突入前後に注目を集めていた【Bロマ】や【ハイドロ】は、超次元呪文の出力に太刀打ちするのが困難でtier1に上がれず、入賞機会にも恵まれなくなっていった。
【Mロマ】にはかつて《獄門》型や《神門》型も存在したが、パワフルな超次元呪文を活かし辛く安定性にも難があるそれらは自然と衰退し、この頃にはほぼ全てが超次元呪文+《ベター》搭載型になっていた。
37弾発売後の10月に開催された大型CS「第3回関東CS」は、1位・2位が【ドロマー超次元】、3位が【緑抜き4C超次元】、4位が【黒M】。
関東CS 1位 ドロマー超次元
関東CS 4位 黒M・ロマノフ
言うまでもなく、これ以前・以降にも特定のギミックやカードが環境を支配するということは何度もあった。が、それらのほとんどはあくまでメタゲーム上位の話であって、そこだけを見据えて遊ぶプレイヤーは多くない。競技志向の強くない時代だから尚更だ。
だが、サイキック・クリーチャーが大きく異なるのは、その性能が環境中堅~ファンデッキにも絶大な影響を与えた点にある。
《ミカド》+《ディアスZ》が闇の5コスト以上のクリーチャーのほとんどを否定したように、中型〜大型クリーチャーの大半はホール+サイキックの下位互換となり、そうでないものも多くはパワーと汎用性(と将来性)の高い超次元呪文に見劣りするようになった。神化編までのコスト論は崩壊し、超次元呪文が既存カードの大部分を容易に代替するようになった。「超次元呪文ではなく、あえてそのクリーチャーを使う理由」を探さなければならなくなった。
超次元の凄まじいスペックはプレイヤーに否が応でも「神化編までのカードプールの大部分が超次元ゾーンに否定されている」現実を突きつけた。このパワーの隔絶は当時、実質的なスタン落ちであると揶揄された。
見切りを付けたプレイヤーたち
各TCGに触れるきっかけは人によって様々だが、それを続ける明確な動機を持つ人間は一握り。大多数のプレイヤーは「継続性」や「惰性」でそのTCGをプレイし続ける。よって、プレイヤーを離れさせないためには、続けるためのきっかけを与えるより遥かに、辞めるためのきっかけを与えないことのほうが重要だ。
新規カード同士でしかシナジーせずカードパワーも低めな不死鳥編や、他TCGだとリンクショックがわかりやすいが、開発者はプレイヤーにそれまでと地続きのゲームでなくなったと認識させてはならない(スタン落ちの無いTCGの場合はより顕著)。
過去に類を見ない新規ギミック・斬新な能力の登場にはユーザーは喜ぶべきだし、一部のカードがおかしな挙動をする・環境が荒れるというのはどんなTCGにも起こることだが、そういった部分も含めて、あくまでそれまでの延長線上にいなければならない。
超次元ゾーンが導入されてからというもの、超次元ゾーンは《チャクラ》を起点としたハイパーインフレが続いているのに対して、メインデッキ側のパワーは超次元呪文と絡むカード以外は神化編の頃と比べてさほど向上してはいなかった。
それどころか、5月にEM期のトップメタが一斉に規制され、この後の12月にも《龍神ヘヴィ》《威牙の幻ハンゾウ》《魔光蟲ヴィルジニア卿》《ハイドロ・ハリケーン》といった、超次元と直接関わりが無ければトップメタでもない、メインデッキ側のパワーカード郡の大規模な殿堂入りが発表された。超次元系デッキとそれ以外のデッキの差は決定的なものになる。
「超次元ゾーンが出てからのデュエル・マスターズは俺たちがやってきたのとは全く違うゲーム。辞めるきっかけとして丁度いい」
そう判断するプレイヤーが大勢生まれるのもまた必然的であった。
この頃から筆者の周囲でもデュエマから距離を取るプレイヤーが続出していた。実際に覚醒編はパック売上が激減していたようだが、それよりもプレイヤー達が萎えて離れていることを肌で感じていた。
しかしまだ、筆者自身は好意的に捉えようとしていた時期だった。
後編はこちら。
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