チームわが家1.0:ネガティブモードを生み出していた理論的枠組みとは
「ひと・こと・もの」に頼りながらの両立&子育てを提案しているチームわが家。みなさんから聞こえてきた「難しさ」を深掘りながら半年ほどかけて行った問い直しの旅を振り返っています。
さて、前回のnoteに書いたように、人々がチームわが家に感じる「重荷感」や、夫婦の対話に感じる「難しさ」の正体は、どうやらチームわが家のベースになっている理論的枠組みからきているのではないか?という新たな問いに辿りつきました。
これまでのチームわが家を「チームわが家1.0」とします。チームわが家1.0は「家族の資源/勢力理論」「性別役割分業意識(概念)」「役割理論」(ケア役割の固定化)等の考えがベースになっています。それぞれを以下に簡単に説明します。
それぞれの理論や概念のさらに詳しい解説はこちら↓をご参照ください。
お察しの通り、これらの理論は、「職場の環境」「生まれ育った状況」「社会情勢」「日本の社会の仕組み」など個人が短期間でどうこうできることではありません。外的要因の影響を大きく受けてします。
そこに夫婦で対話をしてわが家流のチームを創ろう!と言われたところで、自分でコントロールできないことと戦う覚悟と労力が必要です。チームを創る、家族と不毛な対話を繰り返すという新たなタスクが増えるだけです。八方塞がり感、操縦不能感、一人芝居感を増幅させ、分かり合いたいのに分かり合えない辛みを醸造されてしまうわけです。
余談ですが、これらの理論的枠組みは夫婦の家事育児に関する研究において「王道」「鉄板」の理論です。チームわが家というコンセプトを創るときにこれらの理論を土台とすることはいわば「当たり前」で、まさか、これがチームわが家の辛みを生み出しているとは夢にも思っていませんでした。
そこで、意を決して土台となっているこれらの理論を一旦手放し、別の理論でチームわが家を捉え直してみることにしました。
イラスト画像:さのはるか @USANET
参考文献:
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柏木惠子, 2011, 『父親になる、父親をする: 家族心理学の視点から』 岩波書店.
Mead, G. H., 1934, Mind, self and society, University of Chicago Press. (=2002, 河村望訳『精神・自我・社会』 人間の科学新社.)
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