人生のハイライト②誕生日プレゼントが自作のDVD
大学の頃の話だ。私には好きな人がいた。
しかし、2回フラれていた。もう100%叶わない恋だと、2回目で理解していた。仲のいい友達から、それ以上はいけない、ごめんねと、返事をもらっていた。
しかし、当時の私は狂っていた。
100%叶わなかったとしても、せめて、相手の記憶の中に、
「ああ、あんなやついたな。」と、覚えていてほしい、というとんでもなく気持ち悪い事を考えを持っていた。
どうしたら、記憶に残る事ができるのか。
他の誰もやったことのないプレゼントで、いかにその人のために時間を費やしたかが分かるようなものがいいのではないか。
とはいえ、時間をかけてアルバイトをして、高価なものを渡すのは、付き合ってもいないし、付き合う事も出来ないし、気味が悪過ぎる。
時間をかけた事が分かって、且つ相手が喜ぶようなもの…。
その人の周りの人からのお祝いメッセージを集めて、それを一枚のDVDにするのはどうだろう。
それなら、その人が歳をとった時に、たまーに見返して、あぁ学生時代はこんなだったな、あぁ、こんなやついたな、となるはずだ。
そう思いついた私は、持っていたビデオカメラでその人の知り合いに頼みまくって、お祝いメッセージを撮らせてもらった。
延べ、30人くらいは撮っただろうか。
撮られた人も驚いたに違いない。私がその人の事を好きだったということは、近しい人たちは知っていたが、知らない人たちからしたら、何をしてるんだこいつは、と思ったに違いない。
そんな事を思われても関係ないと思うほど、当時は強い気持ちがあって、撮ったビデオを編集して、音楽を入れたり、DVDのケースを作ったり、色んな事をして、プレゼントは出来上がった。
誕生日当日は本人は予定があるかもしれないし、私はその予定を知らないので、その人が住んでいたマンションのポストにDVDを入れておいた。
次の日、その人から電話がかかってきて、本当にありがとう、本当に嬉しかった、プレゼントをもらって泣いたのははじめて、と言われた。
あぁ、気持ち悪がられてはいない…。内容的にも特に変なところはなく、ただ色んな人が誕生日をお祝いするという内容だったので、私が時間をかけてメッセージを集めた事が、うまく伝わってくれた。
何年か経ったが、今もそのDVDを持っているという。
撮影した動画の誰もが、学生時代特有の自由な雰囲気が出ていて、見ていると懐かしい気持ちになる。
若さ故の奇天烈な行動だったかもしれないが、自分の記憶にも、その人の記憶にも残る、思い出の一つになった。
お金はないけど、その分時間をかけて、他の誰もやったことのない、これからも出来そうもない、でも引かれないようなプレゼントを渡して、記憶に残りたい。
当時考えた事は、今でも覚えている。イカれていて、怖い部分もある。それを区切りにして、気持ちを整理しよう、本当に終わりにしよう、とも思っていた。
それほどまでに強く想えたのは、若さがあったからか。
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