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鶴岡慧子監督インタビュー(前編)

第1回うえだ映画づくり教室、講師の鶴岡慧子監督にインタビュー!
いったいどんな子どもだったの? どんな映画が好きだった? 学生時代はどんなことしてた? 映画に興味をもったのはいつ? などなど、「映画監督」になるまでのことを、鶴岡さんに聞いてみました。

※本記事は上田市マルチメディア情報センター主催「うえだ映画づくり教室」の参加者に向けて共有した内容を、一般公開したものです。


映画好き、恐竜好きの子ども

——映画は子どものころから好きだったんですか?

鶴岡:そうですね。父が映画好きなので、家に録画したビデオがたくさんあって、それを観てました。映画を観たいときは親のところにビデオを持っていって「これ観ていいですか?」って許可をとって、テレビを確保して観るんです。それがなんだか特別な感じでした。
小学校高学年ぐらいになると、上田のバイパス沿いにあったTSUTAYAでビデオをレンタルしていましたね。「シネマハンドブック」という映画のカタログを愛読していたので、「次はこれを観るんだ!」って決めて、借りて、観て、の繰り返しです。
なんていうか、映画をみて過ごす、ということが自分の体質にあっていたのかなと思います。

——あのバイパスのTSUTAYA、今年閉店しちゃいましたよね……残念です。
  そのころは、どんな映画が好きだったんですか?

鶴岡: 小学校低学年のころは、恐竜が大好きで、古生物学者になりたいっていってたんですよ。だから、やっぱり『ジュラシック・パーク』かな。父の仕事場の棚に隠すように置いてあったんです。
あれ、かなり怖いじゃないですか。でも、観たくてしかたなかったんです。

中学はスキー部、高校は演劇班

——「映画監督になりたい」と自覚したのはいつごろですか?

鶴岡:小学校高学年ぐらいから映画監督になりたいと言ってましたね。
でも、中学は菅平という土地柄もあって、スキー部でした。

——スキー部!

鶴岡:スピードを出すのが得意じゃなかったので、山の中を走るクロスカントリースキーをやっていたんです。
高校では演劇班(※1)に入りました。映画監督になりたいと言い続けていましたが、映画班はなかったので、一番近いものはなんだろうって考えて、「演劇かな?」ってことで演劇班に入りました。裏方をやりたかったんです。
そこですっかり演劇にはまって、高校の時は演劇漬けの日々を送りました。

——演劇、楽しいですよね。脚本や監督はこのころから?

鶴岡:脚本については、高校2年生の時、演劇の大会のために書いたのが最初ですね。
その当時は小劇場が流行っていました。わたしは東京で舞台が観たくて観たくて……初めて自分で大人計画(※2)のチケットをとって、観にいったんです。そうしたらもう、圧倒されてしまって。圧倒された勢いのまま「演劇の脚本を書こう!」って、3日間くらいで書きあげました。夜な夜な書いていたので、両親も「どうしたんだ?」って訝しんでいたと思います。

※1 長野の一部の高校では、部活動のことを「班活動」と呼びます。
※2 松尾スズキさんが主催する劇団。毒気のある不条理な笑いが得意です。宮藤官九郎さん、阿部サダヲさんなど、すばらしい俳優さんが多数所属しています。朝ドラ『虎に翼』で梅子を演じた平岩紙さんも、大人計画所属ですよ!

映画を撮る日々へ

——進路の選択も、「映画監督になるため」だったんでしょうか。

鶴岡:そうですね。それはもう、ずっと変わりませんでした。
「お前もうちょっと色々世界を見ろよ!」って、今だったらツッコミを入れたくなるんですけど(笑)。

——立教大学を選んだのはどうしてですか。

鶴岡:予備校で出会った先生が「知り合いが立教大学の映像身体学科にいるんだけど、映画の機材や環境が整ってるみたいですよ」って教えてくださったのがきっかけです。
今になって反省しているんですけど、立教にどんな先生がいるか、まったく調べてなかったんですよ。いざ入ってみたら万田邦敏さんが先生をされていて、本当に運がよかったと思います。

——映画は大学に入ってすぐに撮りはじめたんですか。

鶴岡:そうですね。もちろん学科でも勉強はできるんですが、とにかく一刻もはやく映画が撮りたかったので、映画サークルに入りました。5月に合宿があって、その時に友達と一緒に監督したのが、初めての監督作品です。ひとりで監督したのは 2年生の時の『つとめての帰り道』という短編が最初ですかね。
サークルには監督志望の子が多かったので、ひっきりなしに誰かが自分の企画を立てて、チームをつくって動いていました。 わたしもそんな感じでした。先輩に撮影を頼んで、同級生に録音頼んで……みたいな感じで。

——理想的な環境に聞こえますね。楽しそうです。

鶴岡:楽しいことは楽しいんですけど、プレッシャーを感じたり、悩んだりすることもありました。今でさえ、「自分が監督になれている」って実感はぼんやりしていますけど、大学のころは余計にそうでした。先輩や、わたしよりもっと映画に詳しいメンバーから、「お前は何も映画のことなんか分かっていない!」とか言われながら、撮っていました。

——それまでやっていた演劇との違いは感じましたか?

鶴岡:演劇ってすごく勢いがあって、稽古も本番も盛り上がるじゃないですか。それに比べて映画はなんて地味なんだろう、退屈の連続だな……ってびっくりしましたね。

——その後、卒業制作の長編作品『くじらのまち』でPFFアワードグランプリを受賞され、東京藝術大学大学院に進まれたんですよね。
『過ぐる日のやまねこ(※3)』で劇場デビューをされ、これまで様々な作品を撮られてきて、映画を撮るということに関する意識は変わりましたか?

鶴岡:変わったと思います。昔は、映画が撮れるなら周りに迷惑をかけたっていい、みたいな、傲慢な意識で撮ってたところがあった。それが変わりました。本当に恥ずかしかった。
関わってくださる方たちの存在にとても支えられています。言ってしまえば撮影なんて、よそ様の土地に乗り込んで、勝手に上がり込んで撮るわけじゃないですか。その土地の方や、ロケに協力してくださる方に、いかに良い思い出として残るかが、今は一番大事だと思っています。人との関係みたいなものは、画面にもやっぱり現れてくると思うんです。
現場の空気や現場での出来事をいいものにするっていうことは、作品のためにもなると思います。

——映画をつくるには様々なプロセスがあると思うのですが、鶴岡さんは映画を撮ることのどんなときが一番好きですか。

鶴岡:この時しか撮れなかった、みたいなものが撮れた時ですね。たまたま鳥が飛んだ、とか、いろんなものが偶然写り込んで、「1回こっきり」の映像が撮れた時は、やっぱりすごく楽しいです。

※3 『過ぐる日のやまねこ』は、なんとほとんどが上田ロケ。ぜひチェックしてくださいね。

おもしろい方へ転ぼう

——映画の現場では何を大切にしていますか? 「こういう現場にしたい」というイメージがあれば教えてください。

鶴岡:まだまだ、実践できてるわけじゃないんですけど、わたしの存在が極力見えなくなったらいいなとは思いますね。

——「見えなくなる」というのは?

鶴岡:一緒に働いてきたスタッフさんやキャストさんは、 わたしより圧倒的に専門の知識があって、経験がある、すごい人たちなんです。わたしはものすごくちっちゃな存在。
さらに言うと、たとえばロケに行ったとして、 そこのロケ地を貸してくださる方や、 その方々の生きてる時間って、 わたしが撮ろうとしている映画に比べて、圧倒的におもしろいんですよ。
そういう人のすごさ、おもしろさに、わたしがいちばん感動して、それを映画の力に変えられたら理想です。みんなが生き生きとしている状態のままを、映画にしたい。
でも、すごく難しいんですよ。実際には、物理的な制約もありますし、色々計画したり、 自分のビジョンや型にはめようとしたりしてしまう。常に戦っていますね。

——今回のうえだ映画づくり教室では、参加する人に色んな役割を体験してもらって、映画づくりを一緒にやっていきます。今回、短篇映画を一緒につくっていくみなさんに、鶴岡さんから何かアドバイスがあれば、教えてください。

鶴岡:いろんな方がいらっしゃるので、あくまでわたしのケースですけど、「わたしが考えていることや、できることっていうのは、 ほんの一部分だけ」っていう意識をもつといいのではないかと思います。そういう意識があると、他の人が自分よりはるかにおもしろいアイデアを出してきた時、 そっちに転べるんですよ。「自分が一番おもしろい!」っていうスタンスでいると、 そういうときに衝突しちゃって、もったいない。
映画づくりは、誰かが力を貸してくれて、合体することでおもしろくなると思います。

——今回のイベントは、はじめて会う方ばかり。みなさんでどんな作品がつくれるのか、なんだか楽しみになってきました!


インタビュー後編では、いよいよ鶴岡さんの作品づくりのプロセスに迫りました。楽しみにしていてくださいね!

インタビュー・文責> TEAMMATE たえ


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