「地域おこし」考④
過去、3回ほど「地域おこし」に関する私の個人的な見解を書いてまいりましたが、これだけで「『地域おこし』は面倒くさいな」と感じる方も多いと思いますが…そうです❗面倒臭いんです‼
都会では大企業に所属しビッグプロジェクトも難なくこなしてきた人であっても、田舎の人間関係は長年に渡って築き上げられてきた地域と地域、家と家、人と人との関係なので理屈だけで片付けられない「ならぬことはならぬものです」的なことを多分に含んでいるので、まずはその辺を理解した上で進めなければならない、知識や技術以上にコミュニケーション能力を持ち、その地域の歴史と文化に深く造詣を持った人でないと務まらないのです。
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「隣の地区でも同じようなことをやっている団体がある」
これもよく目にする。
子供を相手にした自然体験を主催する団体。道を挟んだ隣の地区でも同じことをやる団体がある。郷土料理を作って楽しむクラブは各地区ごとにある…え~、こんな狭い村なんだから一緒にやればいいじゃん…こんな場面に何回遭遇したことか。
これも幾つかの理由がある。
まずは、元々一緒にやっていたメンバーが何かの理由で分かれて別にやっている場合。地元の人がやっている場合に多いケースだが、田舎のおじちゃん・おばちゃんの中には、何をやるにしても自分が先に立たないと落ち着かない人がいる。こういう人が二人以上団体に所属してしまった場合はどうしても途中で分かれる傾向にある。また、近所で元々同じことに興味がある人の一方が団体を作ったときに「アイツがやるなら俺も…」と負けず嫌いで同じような団体を作ってしまうこともしばしばあり。大抵こういう団体の長になる人は前回お話しした「煩方(うるさがた)」とイコールの場合が多い(笑)。こういったケースに出くわし、何回か「一緒にはできないんですか?」と聞いてみたのですが、決まって返ってくる答えが「あぁ、アイツとは考え方が違うから」…詳しく聞くと事業に対する価値観の相違よりも「しがらみ」「地域内における立場の上下」の問題に起因している場合が多いのです。
もう一つ意外と多い理由…「あっちは元々別の村だから」。
既にその町村の総人口が10,000人を切っているのに一緒も別もないのだがと思ってしまうのだが、そもそも合併の時って表面上は対等であっても人口の多少、産業の盛衰等「どっちが勝ったか負けたか」という概念が必ず存在している。その概念を元に「あの村のくせに生意気だ」とか都会の人には想像がつかない訳の分からない理屈というか見栄が存在しているのだ。
最後に一つ…これは一番最初の理由に一見似ているのだが…「おい、アイツと一緒にするなよ」ってやつ。
かつてベストセラーになった細川元首相と岩国元知事の共著『鄙の論理』にも登場した、地方における新しい取り組みへの三大推進力「ヨソ者」「ワカ者」「バカ者」。
「ヨソ者」については前回少しお話ししたが、もう2つのうちの1つ、「バカ者」。
「あんなバカにやらせておくとまずいから…だいたいアイツは…」なぁ~んて話が始まる。
一番最初の理由と大きく違うのは、最初の理由に登場した二人は日常の近所付き合いはちゃんとあるということである。たまたま設立時や運営をしていくにあたって少々話し合いや個々の説得が足りなかったため別々になっているケース。
こちらのケースの場合は付き合いがない…もちろん田舎なので挨拶くらいはするがお互いの詳しい話をすることがない。この場合、大抵「変人」とされている側が移住してきてかなり月日が経過している人か、生まれはこの地域だが一旦地域を出て戻ってきた人という場合が多い。何となく「ヨソ者」扱いされてかわいそうであるが、ちょっと(多分に?)個性的で本当に「変人」であることが多い(笑)
団体で活動をする場合は一つの団体に関わる人が多い方が効率的であるわけで、乱立する同じような取り組みを行う団体が一緒になった方が「地域おこし」の観点からすれば効果的である。一緒にならなくても協力体制にあれば挙村体制がとれるから対外的なアピール度や企画力的にはパワーアップすると思われる。
これらの問題を解消するにはコーディネーター的な役割を果たす人が必要となるのだが、地元の人間関係や歴史、文化に精通していないとコーディネートができない。ただ、地元の人がこれをやろうとすると「しがらみ」が強力すぎてこちらを立てればあちらが立たず、もし2つの団体の長が親戚関係にあったものなら手の施しようがない。
こんなときは地元の事情に詳しい移住者がもってこいなのだが、何も人間関係の狭間に立って苦労することを喜んでする人などいないのでそのまま乱立した状態が続くのである。
~つづく