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『諏訪式。』

小倉美惠子 著 亜紀書房


私の生まれ育った長野県、信州というのは縦に長かったり、街というものが盆地にあることが多いせいか一山越えないと隣の街に行けない地形上の問題があるせいか、同じ県内でも喋り言葉は違うし文化も違う。また、いまだに行き来があまりなく、例えば長野市の人は東京に行くには新幹線か上信越道を使う。そうすると中部にある松本地方や諏訪地方、南部にある上伊那・下伊那地方には親戚でもいない限り通る用事すらない。松本市の人でも中央本線か中央道、県庁所在地である長野市に行くときは篠ノ井線や長野道を使うから、上伊那・下伊那地方に行く用事は中々ない。

なので長野市や松本市の人の中には飯田市の人の喋る言葉を聞くと「えっ、長野県の人?👀‼」とビックリする人も…飯田市の人は自分達と違う抑揚で話すことすら知らない人が多いんです。

私は父の仕事の関係で県内各地を転々としていたので、一般的な信州人よりは県内の色んなところのことを知っているつもりです。

ただ、文化、風習について、諏訪湖周辺の一般的に「諏訪地方」と呼ばれる地域の文化、風習については熟知しているとところまではいっていない。

この地域には御柱祭に代表される「諏訪大社」への信仰があり、「諏訪大社」は古代、有史以前よりその地域の人たちの生活に強い影響を及ぼしているものであるから、単純に記録や資料を教科書的に見ただけではこの地域の文化、風習の軸となっている思い、いうなれば「諏訪っ子魂」を理解することはできないのではないか?と私は考えている。

そんな思いも常々抱きつつ見つけたこの本。

私が感じた結論を先に言ってしまうと、この本のお陰で「諏訪っ子魂」の出所をしっかりと感じとることができた。しかし、諏訪に限らずその土地の人たちの気質、いわば「○○っ子魂」というもの全ては、歴史の変遷により醸成されてはいるのだが、突き詰めていくと本来的には「風土」が授けたもの、「天恵」であるということを気づかされたのだ。

私は戦後(もっと遡れば開国後とも言えなくはないが)、海外の技術が制度や仕組みが日本に導入されたことはことについてはもちろん悪いことではない、日本の近代化のためには必要不可欠であったと考えていますし、その恩恵を少なからず受けています。。しかし、日本の風土に合わない生活習慣までもが強引なまでに導入されたことについては個人的に否定的な考えなんです。

私がよく引き合いに出すのは履き物。

私は会社員で営業をしているので黒の革靴を履いている。家に帰り靴を脱ぐと靴下は汗で湿り、年頃の娘が毎日「ギェー😱❕」と騒ぐほどの悪臭を放つ。幸いにも水虫ではないが悩まされているお父さんたちも少なくないだろう。おまけにお客様のところにお邪魔するたびに脱いでは履き、その度に靴べらを使い足を通す。

夏場は高温多湿で、家に入る度に下履きを脱ぐ習慣(多分、高温多湿だから脱ぐのであろう)のある日本ではどう考えても革靴は合わないのである。

それが証拠に、休みの日にコンビニに立ち寄り来店客の足元を注目してみよう。ほとんどの人がクロックスのサンダルもしくはその廉価コピーモデルを履いている。あのタイプの履き物は日本の気候、習慣にぴったりと合っているのである。

私はお恥ずかしながら海外旅行へ行ったことはないのですが、好んで行かれる方の中には「異文化の雰囲気」に惹かれている人も多いのではないでしょうか?

それはその土地の人たちが自分達の地域の風土に合わせた文化を守り続けているから今現在訪れる人が感じとることができるわけです。

私の住む長野県は毎年移住したい県ランキングの上位に入り、コロナ禍によるリモートワーク転換にも後押しされさらに移住する人が多いところです。

時々、移住されてきた方で「田舎の人は何も変えようとしない。過去からの風習に囚われて昔のまんま…だからダメなんだ」と地元の人の意見も聞かず新しいことを始めようとする人がいますが、「おいおい…ちょっと待てや」と思うんです。

地元の人が何もしなかったお陰で貴方が移住を決断する雰囲気が残っていたわけで、それを全て否定して欲しくないなって思うんです。

今の世の中、何をやるにしても科学的根拠や効率性に基づいてやろうとする…非効率で科学的根拠で説明のつかないものは全て「無意味」「無駄」「意味がない」と歴史の隅に捨て置いてくる。

何年かに一度、命を投げうってまで神へその身を捧げることを厭わない諏訪の人たちは「諏訪らしさ」を優先する、「諏訪らしさ」が行動の判断基準…とても羨ましく感じてしまうのはわたしだけではないでしょう。

「お天道様が見てるから」「そんなことをすると神様のバチがあたる」…そんな非科学的なことが外国の人たちを惹き付けて止まない「日本らしさ」なのかなって…これが失われつつある日本に海の向こうから人が来続けてくれるのか?



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