黒い男子
同じシャツに同じ半ズボンを履いた兄弟に会ったのは夏であったことは間違いないが、「盛夏」と呼ぶほど日差しは強くなかったような気がする。
丸坊主の頭に日に焼けた真っ黒い顔からニコッと笑った時に見える白い歯。
「どこに住んでいるの?」と聞くとキリッとした目付きのお兄ちゃんはこう答えた。
「南信濃村。長野県の一番南にある村だよ。」
二人のその姿からきっとその村はヤシの木が生い茂り、たわわな南国の果物がなる灼熱の楽園を想像した。
が、所詮信州。そんなことはないことを知ったのはかなり大きくなってからだ。