エルちゃんのこと
もう何年前かも忘れた
大学病院にエルちゃんを連れて行った
エルちゃんは2歳くらいから吐くことが多くなった
血液検査をすると肝臓の数値が異常に高い
吐いた後は高くなることがあるからと言われても私も動物に関する医学は少し学んでいた、ほんの少し高いレベルじゃない
何度、検査をしてもその数値は治らない
それに付け加え皮膚の悪さも悪化していく
そこで一度、大学病院を受診することを勧められた
大学病院は好きじゃない
まるで実験台のように囲まれる
質素な診察室に呼ばれ淡々と今までのことを聞かれる
その日もそこで血液検査をすることになっていた
エルちゃんを預けると血液検査をせずに帰ってきた
呼ばれたのは問診を受けたのとは別の部屋、別の先生。
たくさんの子たちを診てきたんだろう
皮膚のことを説明される
これからどう対処していくのかも。
次に肝臓の数値の話し
わかってた
先生の口から出てきた名前は「門脈シャント」
門脈シャントは先天的に門脈と大静脈や奇静脈の間に、わかりやすく言えばいらない血管ができてしまう
これが出来るとどうなるのか
本来、肝臓で行われる働きが行われず毒素が全身を巡ってしまう。
シャントがあると肝臓への血液や酸素の供給が減ってしまい肝臓は小さく、肝機能低下による尿路結石ができやすくなる。
レントゲンでエルちゃんの肝臓が小さいことはすでに確認していた。
結石もある。
かかりつけでやれる検査の中でやれることはやった、エルちゃんにはシャントがある。だろう。
それをはっきりさせる為には麻酔をかけてCT検査をしなければいけない
アレルギー持ちのエルちゃんに麻酔のリスク。
じゃあ検査をしてはっきりシャントがあることがわかったら?
オペで取り除く。
そのオペのリスク。
全て調べていたことだから予想範囲。
だからそこまでの話しは冷静に聞いた。
だから私は聞いてみた
「この子は長く生きることはできますか」
先生は大学病院の先生はこんなに落ち着いて話すんだなと思った
「たくさんの子を診てきて、たくさんの症例を診てきてエルちゃんの体を診て、エルちゃんはそんなに長くは生きられないでしょう」
だからここでやるはずの検査もやらなかったんだ。
「もし検査を、オペをする考えになればまたきてください」
それからかかりつけでもなく最初に保護した時にかかった病院へ行った
どの答えを出すことが正しいのか
その先生は活動してる時に保護犬たちが診てもらう先生だから知ってる
もう大丈夫ですって言いたくなるくらい親身に、そして本当に詳しく説明をしてくれる、常に自分がその子その子の飼い主だったらの視点から診てくれる。
大学病院が悪いわけではないけれど大学病院をでた時からその先生に相談しに行こうと決めていた。
私の中では答えは出ていたんだろう
きっと後押しが欲しかったんだろう。
たくさんの説明をしてくれた
先生に聞いてみた
先生から返ってきた答え
「先進医療を受けることが幸せとは限らない、その子の性格を考えて、そのリスクを考えて、そして僕なら受けさせないと思います」
私と同じ答えだった。
まだ肝臓の数値は高い、これは治ることはないだろう
この先、病気に苦しむこともあるだろう
それでも最後まで傍にいること
これでもかっていうくらいの愛情を注いでいこうと決めた。
何よりエルちゃんが、その体と戦い生きている
私ができることはエルちゃんは生まれてきてくれてよかったんだよと伝えていくこと愛し抜くこと私の全てで。
たくさんのことがあってエルちゃんはここにいてくれる
魂をかけて愛し抜く、それがエルちゃんと私の全て。