成長支援のマネジメントとは?〜成長につながる問いかけコーチング#65
最近、ビジネスにおいても「成長」という言葉をよく聞くようになりました。もちろん売上など数字ベースの成長ではなく、人の成長についてです。企業や経営者も「成長支援を促していこう」と発信したりしています。これまで「成功」については当たり前のように語られてきたものの「成長」についてはあまり語られることがりませんでした。人の成長が売上や利益に直接関係するの?といったように、どこか成長に関して軽視する雰囲気がありましたが、私自身はずっと人の成長にコミットしてきたので、この傾向はとても喜ばしいことです。多くの企業は成果についてはコミットするものの、成長に関しては各人に任せて放置プレー。そんな状況でしたが、最近では「人の成長支援が必要だ」と言い切っている企業も多いです。
こうして社会全体が成長を意識してくれると、個人的には非常に嬉しいのですが、実はこの「成長支援」に関してはあまり整理されていません。私もよく経営者や人事の方に「成長支援とは、具体的にどんなことをしていくのですか?」と聞いても、即答できる人はなかなかいません。褒めたり、モチベーションをあげたり、やりがいを与えるという抽象的な話はよく聞きますが、具体的なプロセスはあまり見えてきません。
では、成長支援とは何か?をブレイクダウンして考えてみましょう。
私は人の成長には適切な課題と環境が必要だと考えています。人を成長させたいと思っていても、実はその機会を提供していないというケースがよくあります。これはスポーツにおいても起こりがちで、「この選手を成長させよう」としても、適切な課題と環境による成長チャンスを与えることを疎かにしていることがあります。
まだ成長のプロセスがわからない人にとっては、実際に成長した見本を見ないと、自分がどこに向かうべきなのか、どうなればいいのか、明確にイメージできないまま与えられた課題の中で埋もれてしまいます。ですので、成長機会を与えた際には、しっかりと成長の見本やプロセスを示しましょう。そして次に大切なのはサポートです。これが成長支援の中心となります。最後に大事なのが成長実感。「成功」は目に見えた形となって現れるので、実感が容易です。しかし、「成長」は目に見えません。特に成長している本人にとってはなかなか実感できません。だからこそ、他者が成長実感を与えてあげるのです。ここに必要なのは、周りからの承認です。成長を承認することで本人にも成長実感をさせること。
つまり、成長支援には四段階のプロセスがあります。
① 機会を与える
② 見本を見せる
③ サポートする
④ 承認により、実感させる
この四段階で、まず最初に必要な「機会を与える」について。
実はこれが最も大きなハードルとなります。何か課題がある際、当然成功を求めます。成功を求めるのは人間の性であるし、仕事をしている以上成功を収めることは必須です。スポーツだって、勝負しているからには勝たないといけない。つまり、課題があるとき、どうしても成功する可能性のある人に機会を与えてしまいがちです。
ところが、これを続けていると、成功する可能性のある人ばかりに機会が生まれてしまいます。しかし、長い目で見たときに、彼らにずっと任せきりにし成功し続けることは本当に良いのでしょうか。企業もスポーツチームも、人はどんどん入れ替わります。現在能力の高い人に任せきりにし、若手やまだ成果を出せていない人のポテンシャルを奪っていないでしょうか。彼らを成長させるためには、やはり機会が必要です。
また、マネージャーにとっては、若手に任せるよりも、自分で実行した方が確実にうまくいく自信があるかもしれません。自分の持っているものを手放すことは恐怖を伴います。失敗するかもしれない、自分が活躍できる領域を奪われるかもしれない、このようなジレンマが発生するでしょう。しかし、相手の成長を本気で支援したいのであれば、相手へ成長の機会を与えてあげましょう。手放し、権限を委譲していくことは勇気のいることです。しかし、こういった機会をGIVEし、リリースしていくと、自分には新たな余白が生まれます。その余白に新たな成長機会が生まれます。そう考えると、成長機会をGIVEすることは自分にとっても新たな成長機会を生み出すGIVE&TAKEとなります。
さて、先ほども言ったように成長は見えづらいです。そして、成功のように答えが一つではなく、人によって形が違います。「目標を達成した」「試合に買った」「賞を取った」「売上が上がった」、このような成功はわかりやすく、可視化されやすいです。しかし、成長は流動的で、時には停滞したり後退したり、明確ではありません。もしかすると停滞していることも、成長の一部かもしれません。つまり、本人にとっても成長を実感することはなかなか難しいのです。
今の時点では成長を感じていないかもしれないけれど、後から見たときに実はこのプロセスが成長にとって必要なプロセスだったかもしれないし、そのときすでに成長しているのかもしれない。これはなかなか自分でわかりません。しかし、目に見えない成長を実感するには、自分で感じるしかないのです。
目に見えない成長を自分で言語化することは、後ろめたい気持ちを持つ人もいます。「何も成果は出していないので、成長とはいえない」これはとても勿体無いですよね。成果は出していなくても成長しているということは十分にありえます。では、どうやって成長実感できるのでしょう。
これはただ一つ、他者からの成長承認に限ります。「変わったよね」「大人になったね」「顔つきが変わったね」自分では意識していなかったけど、もしかしたら心の中でそう思っていたかもしれないこと、これは他者からの承認によって実感できます。
毎日会っている人には、なかなか成長に気づかれないかもしれません。成長は点ではなく線で進むものです。日々の小さな変化に気づかなくても、ちょっといつもとは違った角度で話してみるとか、しばらく会ってなかった人に会う、それが成長実感のきっかけになるかもしれません。
最後にもう一つ。自分自身が成長実感をしたいと思ったときには、ぜひ周りの人にも成長承認をしていきましょう。人に与えていると必ず自分にも返ってきます。身の回りの人に対して、成長の承認をしてみてください。
さて、あなたは他者にどんな成長支援をしていきますか?ぜひ適切な成長機会を与え、サポートしてあげてください。
※ 本記事は、中竹竜二Voicyチャンネル『成長につながる問いかけコーチング』より、内容を再編集し、記事化したものです。