【#1】ものづくりの町 燕三条とは
燕三条ってどんなところ?
「燕三条」という地域の名を聞いたことがあるでしょうか?
もしかしたら、金属加工部品の調達に携わる方々や、地域工芸品に造詣が深い方々であれば一度は名前を聞いたことがあるかもしれません。
「燕三条」とは新潟県中越地方、いわゆる新潟県のほぼ中心の「県央地方」に存在する、金属加工産業の一大集積地のことを指します。
洋食器や刃物などの一般消費者向けの金属加工商品メーカーや、産業用途の金属部品メーカーなど、実に4000社を超える優れた技術を持つ中小企業が集まる世界的にも有名な地域がこの「燕三条」です。
あまりにも企業数が多いため、"日本一社長が多い町"ともいわれています。
「燕三条」って地名は存在しない?
この「燕三条」という名前、実は正式な地名としては存在していないのです。燕三条とは、新潟県の県央地方で隣り合う燕市と三条市の2つの自治体を合わせた呼称です。
この燕市と三条市、今では「燕三条」という呼称で、ものづくりの地域として一体となった活動をされているイメージですが、かつては地理的・歴史的な背景もあり、様々な因縁がある複雑な関係だったりします。
(なんか、ちょっと怖いですね^-^)
この辺は、後々の記事で詳細を深ぼっていきたいと思います。
燕三条の特徴
新潟県燕市は、スプーンやフォークをはじめとする金属洋食器、金属ハウスウェア製品の国内主要産地です。金属洋食器については、日本国内生産のシェア9割以上を占め、江戸時代から脈々と受け継がれてきた400年のものづくりの歴史と伝統に守られてきました。現在では、金属ハウスウェア、ステンレス、チタンの精密加工、各種金型、板金、研磨、メッキなど多様な加工技術の高度化が次々と図られています。
一方、新潟県三条市の金属産業は、和釘からはじまりました。鍛治の伝統を受け継ぎつつ、「ものづくりの街・三条市」と称し、打刃物をはじめ、作業工具、木工製品のほか、大工道具、測定器具、園芸用品、アウトドア用品など金属加工を中心に多様な加工技術が集積しています。また近年注目を浴びているアウトドアブランド・スノーピークを展開している「株式会社スノーピーク(Snow Peak, Inc.) 」は、新潟県三条市に本社を構える企業です。
このように、燕三条地域には、多種多様な技術が存在し、職人が居たからこそ生まれた食文化なども存在しています。
●磨き屋シンジケート
燕三条の技術の代名詞として世界的に有名なのは、燕市の「磨き屋シンジケート」です。磨き屋シンジケートの金属研磨技術は世界一を誇る技術だと言われており、米国Apple社の当時のCEOスティーブ・ジョブズにその技術を認められました。当時世界中で爆発的なヒットとなったiPodの研磨を一手に請け負い、世界に「燕三条」の名を轟かせました。また、磨き屋シンジケートが独自のブランドとして展開するオリジナルタンプラーは、カップの内面を職人の手で磨き込むことによって、タンプラーにビールを注ぐだけでクリーミーな泡が立ち、ビール本来の旨みを最大限に引き出す職人の技が光るカップとして人気の高い商品です。
●工場(KOUBA)の祭典
燕三条地域が近年注目される一つの要因に「工場の祭典(KOUBA)」の開催があります。2013年からはじまった工場の祭典は、燕三条地域のものづくりの工場を開放し、製造工程をお客様に体感していただくイベントです。「工場の祭典」をきっかけに職人になりたいという若者が地域外から訪れるようにもなりました。そして何よりも地元の子供たちへの教育に繋がっています。燕三条の歴史を伝えると共に、ものづくりの現場の背景や奥深さを伝え、未来のものづくりに繋がることが燕三条地域の人々の願いでもあります。
●背脂ラーメン
職人が多い街・燕三条では、工場で働く人たちへの出前として生まれた「背脂ラーメン」が有名です。暑い工場の中でたっぷりの汗かいて働く職人たちのために、塩分を多めに入れ、その塩分の緩和とスープが冷めないようにたっぷりの背脂を浮かせた、まさに職人のためのラーメンです。
以上のように、燕三条地域は中小企業が集積しており、多様な技術が存在しています。また、金属加工産業だけではなく、食文化、地域イベントなど多くの側面で活性化している世界有数の産地であると言えます。
さてさて、今回はそんな魅力あふれる燕三条を紹介しました。次回の記事では、燕三条に多く集積する中小企業について、よりマクロな視点で論じていきたいと思います。