~馬場の好敵手!名勝負の男たち~ vol.4
リングに叫び、拳を突き上げたあの日。今もこの胸に燃えさかる熱き炎のファイターたちをイラストとエッセイで綴るプロレス讃歌!
~馬場の好敵手!名勝負の男たち~ vol.4
全国のプロレスファンの皆様こんばんは。『週刊アイアンクロー』編集長のチャーシュー・タケです。今週は“黒い呪術師”アブドーラ・ザ・ブッチャーです。
●極悪非道! 流血必至の愛されキャラ ~フォークの使い方が間違っています~
“ブッチャけ”この人のレスリングには独特の「華」がありました。それも、鮮血に染まったドス黒い「華」が。いきなりの低俗オヤジギャグで恐縮です。アブドーラ・ザ・ブッチャー。その体格を見た誰もが思いました、ホントにプロレス出来るの⁉、と。しかし、その疑念は見事に覆されました。あの、ドリー&テリーのファンク兄弟との血みどろの死闘は、今では語り草となりました。昭和52年(1977)の師走の事です。ブッチャーは、テリーの二の腕をテキサスの分厚いステーキと見間違えたか、執拗に何度も何度もフォークを突き刺しました。テリーの腕からはおびただしい流血が。レフェリーのジョー樋口の絶妙な間合いとポジショニングの死角をついての悪魔の反側攻撃。場内は悲鳴と怒号の嵐。リングには四方八方から物が投げ込まれ、多くの女性ファンは号泣です。おそらくは現代ではテレビ放送は到底無理であろう“衝撃映像”ですね。60年以上前の、あの“吸血鬼”ブラッシーによる「TVショック死事件」の戦慄が甦ります。なんたってこの頃は、テレビドラマにおいてもごくごく普通に女性の裸のシーンがお茶の間に流れる時代でしたから、残虐シーンとて同様です。いやはや、今にして思えば「昭和」はぶっ飛んでいましたね。それはさておき、ブッチャーです。これだけ、日本で「化けた」レスラーは、後のタイガー・ジェット・シンと双璧でしょう。日プロの初来日時は、小汚い股引を穿いた、意外に動きの速い黒人レスラー程度の印象だったが、全日本で大ブレイク。馬場、デストロイヤー、鶴田などとの抗争を経て、CM出演や漫画のキャラクターにまでなり、人気は全国区へ。しかし、この時点で凄みは薄まり、私の興味もなくなっていったのです。デストロイヤー然り、「時代」は明らかに“ヒール”の肩身を狭くしていきました。
◼️『プロレスダイアリー甦える鉄の爪』は毎週木曜日に更新します。