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~猪木に牙を剥いた男たち~ vol.2

リングに叫び、拳を突き上げたあの日。今もこの胸に燃えさかる熱き炎のファイターたちをイラストとエッセイで綴るプロレス讃歌!


~猪木に牙を剥いた男たち~ vol.2

全国のプロレスファンの皆様こんばんは。『週刊アイアンクロー』編集長のチャーシュー・タケです。今週は“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シンの登場です!

イラスト 志賀コージ

●野に放たれた野獣! 歴史に残る猪木との抗争劇! ~蔵前でも新宿でも暴れました~

タイガー・ジェット・シン——その名を聞けば、あの憎々しいまでの狂乱の姿が鮮やかに甦ります。アントニオ猪木との長きに渡る抗争劇は、新日本プロレスの“ドル箱”として多くのファンに愛され、そして恐れられました。彼がサーベルを口にくわえながら入場すると、一瞬会場内はシンと静まり返り、やがてシンらつな野次が飛び交う中をリングに上がるのです。かたや、闘魂の文字も艶やかなガウンに身を包んだ猪木が入場すれば、ファンのボルテージは最高潮に高まります。シン紅のタオルを首に、猪木が両手を挙げると五色のテープがまばゆいばかりに宙を舞い、観客の瞳は魔性の色を放ち、雄たけびを上げ、興奮のルツボと化すのです。猪木のシン骨頂です。リングサイドの観客は、鎖につながれた野獣と最短距離で遭遇するかのような体験をして、胸の鼓動が乱れ打ちです。タイガー・ジェット・シンの神をも恐れぬ傍若無人ぶりに声の限りの怒号の矢が降り注ぎます。もはや、会場はある種の“一体感”で結ばれたと言えるでしょう。猪木の懐刀・シン間寿の戦略がものの見事に成功した瞬間です。この人は、新日本プロレスに“スキャンダラスの劇薬”を投入し続けた「仕掛人」として名を馳せました。『タイガー・ジェット・シン』は、彼の最高傑作と言えるでしょう。
シンが嵐のように登場したのが昭和48年(1973)の5月。当然ながらネットも週プロも無い時代。まだ見ぬ強豪の情報は、月刊ゴングか東スポから仕入れるしかなかった。でも、どこにも無かったな、タイガー・ジェット・シンの名前は。それが、新日に来日するや、新間さんの仕掛けが上手くハマり、猪木のライバルの座を手に入れた。そして、あの「新宿伊勢丹前襲撃事件」。これが銀座三越前や、上野アブアブ前だと様にならなかったな。

◼️『プロレスダイアリー甦える鉄の爪』は毎週木曜日に更新します。

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