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日銀黒田総裁 円安けん制発言 米 NAHB住宅市場指数は7カ月ぶり低水準

昨日の動き

日銀黒田総裁 最近の円安はかなり急速、「マイナスに作用も」

黒田日銀総裁は、衆院決算行政監視委員会での答弁で、最近の円安は「かなり急速な為替変動」とした上で、経済への影響は「非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる」との見解を示しました。

黒田日銀総裁の答弁
かなり急速な為替の変動のため、企業の事業計画の策定に困難を来す恐れがあるという意味では、マイナスも考慮しなければならない
非常に大きな円安とか、急速な円安の場合はマイナスが大きくなる
為替円安の経済への影響は、業種や企業規模、経済主体によって不均一であることには留意が必要。全体としてプラスという評価は変えたわけではないが、やはり過度に急激な変動は不確実性の高まりを通じて、マイナスに作用することも考慮する必要がある

ドル円は、黒田総裁の発言後、126.79円から下落し126.24円まで下落しましたが、NY市場に入り、軟化していた米国10年債利回りが再び上昇を始めると、129.98円と20年ぶりの高値を更新しています。

黒田総裁の発言は、結局のところあまり材料視はされず、押し目買いのチャンスを演出したことになっていますが、米国の利上げ期待は強く、CME Fed Watchでは5月のFOMC会合で50bpの利上げを行う確率は約9割となっており、現時点ではドルが急落するような観測はほぼ出ていない状況なのに対して、日銀がマイナス金利とイールドカーブ・コントロールという超ハト派的な緩和政策を続ける限り、円は売り圧力にさらされ続けるだろうと市場はみており。黒田総裁は急すぎる円安には懸念を示しましたが、緩和政策からの脱却を議論するのはまだ時期尚早であると繰り返しています。

今の円安は、黒田総裁の円安けん制発言で一時的な反応はするものの、根本的な日米金融政策の相違から容易に反転するものではないことがより鮮明になった気がします。

米 NAHB住宅市場指数は7カ月ぶり低水準

利上げ観測が強い米国ですが、住宅ローン金利の高騰が住宅市場に影響を及ぼし始めています。
全米住宅建設業者協会(NAHB)/ウェルズ・ファーゴ住宅市場指数(HMI)によると、4月の新築一戸建て住宅市場に対する建設業者の信頼感は2ポイント低い77となり、ビルダー心理が低下するのは4カ月連続となります。金利の急激な上昇に加え、住宅価格の上昇や建築費の高騰が続いており、建設業者の自信や住宅の値ごろ感に打撃を与えています。

既存在庫が少ないにもかかわらず、住宅ローン金利の急上昇とサプライチェーンの持続的な混乱が住宅市場を不安定にしているため、建築業者の報告によると、販売台数と現在の販売状況は昨年夏以来の低水準に低下しています。予想外の金利の急上昇、住宅価格の上昇、材料費の高騰により、特に重要なエントリーレベル市場において、住宅の値ごろ感が著しく低下しており、住宅市場は変曲点に直面しており、住宅ローン金利は年初から1.9%ポイント以上急上昇し、現在5%と過去10年以上の最高水準にあります。
現在の販売状況を示すHMI指数は2ポイント低下の85、購入希望者の動線を示す指数は6ポイント低下の60となり、今後6ヶ月間の販売見込みを示す指標は、3月の10ポイント減に続き、3ポイント増の73となっています。

住宅に関する別調査では、ニューヨーク連銀が実施した2022年SCE住宅調査で、米世帯は住宅価格と家賃が今年、大幅に上昇すると見込んでいるほか、住宅購入の可能性が急速に薄らいでいると賃借人がみていることが明らかになっています。
調査によると、住宅価格は今後1年間で7%上昇する見通しですが、住宅ローン金利の上昇加速により、住宅価格は今後5年間で年平均2.2%上昇に鈍化すると予想されています。

家計は短期的には住宅価格の大幅な上昇を想定している

一方、家賃は今後1年間で11.5%、今後5年間で年平均5.2%上昇すると見込まれており、賃借人が住宅を購入する可能性は43.3%と、21年調査の51.6%から低下し、14年の調査開始以来最も低い水準となっています。

家計は短期的に大幅な家賃の値上げを想定している
賃借人は家を所有する可能性が低いと考えています

今週は相次いで、米国の住宅関連指標が発表されます。住宅ローン金利上昇、賃金や材料価格の高騰の影響がどの様に反映されるかを見極めて行きたいと思います。

市場の動き

月曜日は欧州の主要市場が休場となり、NY市場に入ると多少流動性が回復したとはいえ、1日の大半は全体的にかなり落ち着いた動きでした。
それでも、ドルは主要通貨に対して全面的に堅調に推移し、ドルインデックス(DXY)は100.80台と2020年4月以来の高水準を記録しています。

債券市場では、FRBの積極的な利上げを想定して、長期ゾーンの国債利回りが約3年振りの水準に上昇し、0年債利回りは、一時は2.884%と2018年12月の水準まで上昇し、30年債利回りは2.969%と19年4月以来の高水準を付け、2年債と10年債の利回り差は40bpに拡大しています。

米国株式市場でダウ工業株30種平均は小幅ながら続落し、原油先物相場の上昇を背景に消費関連株が売られ、一時170ドル超下落したものの、米長期金利の上昇で金融株が買われると下げ渋ってます。
今週予定されている米主要企業の決算発表を前に、積極的な売買が手控えられた面もあり、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数も小幅続落で終えています。

原油先物相場は4日続伸し、ウクライナ情勢の悪化が原油の供給不安を強め、中国の経済支援策が需要の回復を促すとの期待も支えとなり一時109.81ドルと、3月28日以来の110ドル台回復に迫っています。ただし、中国の情勢については、ロックダウンが上海以外に西安にも広がるなど先行きの懸念も強まりつつあり、結果として原油相場も伸び悩んでいます。
金先物相場は反発し、南東部マリウポリの軍事的ダメージなどウクライナ情勢の悪化が伝えられるなか、金にはリスク回避資産として買いを集め、2000ドル台で推移する場面もありました。

今日の予定

日本の経済指標など
13:30 2月鉱工業生産(確報値)、2月設備稼働率
海外の経済指標など
10:30 豪 RBA金融政策会合議事要旨公表
21:30 米 3月建設許可件数、3月住宅着工件数
25:05 米 エバンス:シカゴ連銀総裁 発言

今日からオセアニア・欧州勢が連休明けで戻ってきます。
早朝のオセアニア市場では、円売りでスタートしており、ドル円は127.11円まで上昇し、2002年5月以来の高値となっています。今日も円安の動きに警戒しながら、東京市場を見ていく流れになるかもしれません。
経済指標では、3月建設許可件数、3月住宅着工件数が発表されます。住宅ローン金利の上昇を受け、住宅市場で需要後退の予兆も見えており、指標のネガティブサプライズは、FRBのインフレ対応に向けた積極姿勢を後退させるまでには至らないものの、近い将来に景気後退に陥るリスクがあるとの懸念が広がることも想定されます。但し、一つ一つの指標の結果に反応するのではなく、全体の流れを俯瞰的に見て判断することが必要です。

それでは今日もよろしくお願いします。

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