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種々雑記ーーローマの休日

おはこんばんにちは、Team:Clutch のかめです。

前回の種々雑記では直近で最近発売されたゲーム『テイルズ オブ アライズ』について、少しだけ言葉にしてみました。

今回は一気に時間を過去へとさかのぼって映画『ローマの休日』について、画面構成の説明を交えて言葉にしてみようかなと思います。

ご興味ありましたら是非、読んでいただければと思います。

注意事項

先に断っておくと、こちらの記事では映画『ローマの休日』のラストシーンを扱い、物語の顛末を語ります。

なので、古い映画とはいえネタバレされたくない方は回れ右を。ネタバレされるくらいならまずは自分で観るという方は、回れ右した上でアマゾンプライムなりで視聴いただければと思います。

私としては後者がおすすめなので、ぜひぜひ。

ローマの休日

ローマの休日のラストシーンは、謁見室にて王女アンと新聞記者ジョーとの格式張った再会とジョーの身分明かし、そしてお互いの退室までを描いています。

そのシーンにたどり着くまでに、様々な出来事、事柄が彼らの繋がりを強固にし、お互いの立場を確固とさせてきましたが、ラストシーンのアン王女退室以降のみに焦点を当てるためそれらについてはあまり詳しいところを話しません。

一つだけ、彼らはそれらの経験を通してお互い口付けを許すほどに強く恋心を抱いており、けれども同時に、王女と市井の記者という身分の違いを振り切れず思いを言葉にすることができずにいました。

受け手である自分の心情は身分を超えてでも結ばれてほしいという期待、そしてそうならない可能性への不安で揺れています。

今回こちらのシーンを言葉起こしの題材に選んだ理由は、ラストシーンでの答え合わせのなかで、この期待と不安の間で感情が強く揺さぶられたからと言うのが一つ目。

そして二つ目は、そんな揺れが言葉を用いず、画面構成とジョーの演技だけで想起させられたからです。

ということで、始めます。

ラストシーン:アン王女の退場

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アン王女が退室します。彼女の姿は左の柱の裏へと隠れていきます。

彼女の白いドレス、そしてその手前の空間に当てられた強めの光。これらと暗いスーツの記者団やお付きとの対比から自然と視線が彼女に向います。

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退室していく同業の記者団たちの賑やかさと、じっと一点を見つめ続けるジョーの対比。

こちらのシーンはアン王女の入室を、記者団全員が期待に満ちて顔で待っている過去シーンと同様の構図になっています。

仕事に閉じた関係性を完全に否定し、期待を寄せていることが伺えます。

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ジョーの視線の先、アン王女の出ていった扉が示されます。こちらも過去シーンでアン王女が入室した時と同様の構図。

その時と同じように、開かれたままの扉から彼女が顔を出してくれることを見ている側も期待してしまいます。

一方で、この画面をパット見たときにまず目を引くのは、画面中央、少し外れた所でハイコントラストに浮かび上がる黒く潰れた絵画だったりします、そしてそのまま引き寄せられるように、同色の従者へと。

従者と玉座とを重ねることで遠近感を演出しているのはわかりますが、それ以上に、なにか、妙に気になるものがあります。

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謁見の場に一人ぽつねんとジョー。静寂の中、しばらくして、退室を始めます。

この構図、アン王女がもしも戻ってきた場合、画面右の柱の手前から登場することは一目瞭然ですから、受け手としては期待が継続します。

背を向けた主ジョーを、戻ってきた王女アンが呼び止めるネクストシーンを思い浮かべるわけです。

また、ジョーのいる空間は奥行きのある縦長な空間で、今からここを縦断するのだということも読み取れます。

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ジョーが手前へと移動していきます。左の柱が映っていますので、受け手としてはアン王女への期待はまだ継続しますが、柱や玉座が小さくなるほど不安がいや増します。

ここの玉座ですが、直前までのシーンよりも強い光が当てられ、白色をより強める演出がされています。この強調は以降ずっと続きます。

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カメラとジョーの動きによって、柱や玉座が彼によって遮られます。左右の構図が整うほか、ジョーの全身に影がさし、画面の中にどっしりと落ち着く印象。

ほの暗さを残しつつも、しかし、彼の内面が整ったように感じます。また、この画面構成ではアン王女が柱から現れたとしてもわかりません。こうなると受け手は二人の別れを強く意識せざるを得ません。覚悟を決め始めます。

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と思いきや、もとのレイアウトに戻りました。アン王女の登場を再度期待してもよいのでしょうか。受け手としてはやきもきします。

ジョーにとって、簡単に振り切れるつながりではなかったというのが伝わります。

淡い期待と覚悟を伴う諦めの間に揺れる彼の内面を、言葉なく画面構成の遷移だけで伝えているわけです。背筋がぞくぞくします。

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そして、受け手の思いに沿うように振り向くジョー。淡い期待を振り切れない男の姿です。

等間隔に配置されている従者たちが、画面の奥行きを強調します。アン王女の出ていった扉のシーンで黒服の従者と玉座を強調した理由がここでわかります。

あのときの黒服や玉座がここまで小さくなってしまうほど、ジョーは離れてしまっていました。

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そして最後、アン王女とは逆に、画面右側へと消えていくジョー。先程一度失敗してしまった覚悟を決めようとしたシーンと同様、彼に影が差します。

そうして、ジョーが画面外に消える直前、今まではずっと画面左側主人公を照らしていた光が、右側から差し込む光に映り始めたことがわかります。

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こうして、アン王女と対比されたジョーの結末は決まりました。

さいごに

以上となります。

自分の眼力を鍛える意味合いも込めて記事にしてみたのですが、思った以上に楽しく筆を運べました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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