種々雑記ーーテイルズ オブ アライズ
おはこんばんにちは。Team:Clutch のかめです。
普段は Buttonsという世界やリレー小説などの物語を記事にしているのですが、今回はちょっと趣向を変えてみます。
『種々雑記(しゅじゅざっき)』は種々雑多と雑記を混ぜた造語で、その意味合いは、私から出たものではなく私が他作品から受け取った色々なものをちょっとだけ言葉にしてみるというものになります。
では始めます。
Tales of ARISE テイルズ オブ アライズ
まずは何より、発売おめでとうございます。寝食を忘れてプレイさせていただきました。クリア所感として非常に魅力的なゲームでしたので、プレイされたことのない方は是非ご自身でもプレイしてみていただければと。
プレイする中で印象に残った部分は多々あるのですが、そのなかでも絵作りの点と戦闘システムの点で群を抜いていました。
どちらも言葉にしてみたいところではありますが、とっ散らかってしまいそうなので絵作りにだけ焦点を当ててコンパクトにまとめてみます。
情報の減らし方が秀逸だなと
もっと綺麗な風景にはこれからどんどん巡り合うのですが、私の中で強く記憶に残った場面だったのでまずはこちらから。
note に載せるにあたって画像サイズを半分にしたら、見てほしいところが少々潰れて悔しい限りなのですが、拡大してみてください。
全景に登場人物が立っている足場、中景に同じような足場、遠景に深そうな谷の岩肌や人工物。カメラから離れれば離れるほど砂埃によって色あせてのっぺりしていっているのですが、輪郭を表す線だけはありありと浮かび上がっています。登場人物の頭上や降りるアイコンの右下の空間などが如実ですね。
現実にはありえない表現です。けれどこの表現のおかげで一番手前にいるキャラクターの絵のタッチに馴染んでいるように見えます。
割と写実的な近景から、カメラから離れるほど絵(漫画)的な印象を強めることで、キャラクターも含めた纏まりをつけるという絵作りが私の琴線に触れたため紹介させてもらいました。
個人的には、アライズの風景が与える独特な空気感の肝なのかなと思っています。
(眺める感じ、輪郭線と色とが乖離するのはある一定の距離まででそれ以上に離れると輪郭線も色と同じ水準まで色褪せるような表現手法なのだろうか。……気になる)
綺麗の中ににおいを落とし込めそうな塩梅
一方これらの写真は、とある予感を覚えた絵として取り上げてみます。
写実的表現を詰めると情報量が多すぎて受け手側への伝達齟齬が起きてしまう領域で、一方アニメ的表現を詰めると削ぎ落とされてしまう情報を用いて意味や解釈を組み込めそうだな。
予感とはこんなものです。
なんだか小難しい話になちゃったので、もう少し簡単で最適な言葉ってあるだろうかと頭捻っていたんですが、結果として「におい」に行き着きました。言い換えるならば「気配」ですかね。
不穏、陰気、不衛生、死。……ネガティブな感じのことを連ねてますが、逆もまた然り。現実ほど生々し過ぎず、けれども脱臭し尽くされていない「におい」。
こういった情報は、映画などの場合脚本やカメラレイアウト、ライティングなどを用いて伝達し、伝えたい事柄を対比させて印象づけるために使われたりします。
別作品で失礼しますが、こちらクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」という映画から。追い詰められた英仏軍が脱出のため、乗り付けられた船に向かうシーン。
画面の中で色んなものが横向きに配置されています。奥から生者の隊列、頭を海に向けた死体袋、波にさらわれそうな死体袋、桟橋に乗り上げるための足場。奥から手前に向かって死と波乱の「におい」が強まっています。
そして、そこを縦に突っ切って手前方向へと向かっている者たち。ここには書かれていませんが、すぐ後、主人公もまたけが人を運びながらこの桟橋に向かっていきます。
主人公達、命ある者たちがより死の「におい」が濃い方へと向かっている。死が濃いからこそ画面内の命に気が向いて、はて失われやしないかとハラハラします。これから先より濃密な死が待っているのではと怖くなってきます。
その思いへの回答は後のシーンでしっかりとされるわけですがここでは割愛。とまぁ、「におい」についてはそんな具合です。
ゲームでももちろん用いられる手法で、アライズの場合上の写真などが如実です。こちらゲームが始まった直後にある、主人公が「俺は奴隷だ、皆と同じく」と呟きながら寝床に向かうシーン。プレイヤーは階段を登らされるわけですが、そのためにカメラを上に向けると煙いた風景からぬっと二つの星が映ります。
「俺たちの境遇を変えるには打破しなければいけない壁」と説明された直後の写真。その壁というのはドクロの顔っぽい模様の刻まれた壁を直接的には指しているのですが、もちろん映る2つの星。
どうでしょう。これから先の展開にワクワクしてきますね。
(ところで、この記事を書くにあたってゲームの序盤をやり直したわけですが物語的意味合いが強いシーンとそうでないシーンで星のサイズがすごい違う。制作陣の皆様……やってますね!)
……と、ここまでが映像的「におい」の表現。
個人的に予感したのは、アライズのような表現手法がより進歩していった先に、映画などにはないタイミング(ユーザが操作してインタラクティブコンテンツを消化しているときなど)で行えるようになるのではないかと言うものでした。
ゲーム的な「におい」の表現といいますか……。絵画的「におい」をインタラクティブに表現するといった具合で、物語の深堀りやニュアンス付けがより豊かにできそうだなと。
はてさて、色々言ったものの、そのにおいの嗅ぎ取りをユーザに頼り切ってしまうとおおよそなんにも伝わらなくなりかねないという諸刃で悩ましいところでもあります。
制作側の方たちは大変かと思いますが、けれど、これからの表現の追求先として凄く良いなと思った次第でした。
総じて
この表現の先にどんな絵や物語が興っていくのか気になって仕方がありません。
以上、読んでいただきありがとうございました。
Appendix
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