見出し画像

リレー小説 No.5 『水風船・金魚』

Team:Clutch のギギです。リレー小説 No.5 の記事担当となりました。出来上がった小説とそれに対する感想を書かせて頂きます。

テーマ『水風船・金魚』

執筆時期: 2020/07/30~2020/08/11

バシャと活きのいい音、弾けた音、仲間が消えた音。その子は、僕達とは違い、カラフルで、水面上で泳ぐこと無く、いつもプカプカ浮いていた。
ある祭の夜、僕はプールにいたが、人間の子どもが寄ってきて捕まえられ、袋の中に入れられた。そんなときに、その子と出会ったのだった。その子は、子どもの手の中だった。
終ぞ無口なやつだった。主張の激しい体を持っているくせに自らは一切の主張をせず、僕が話かけたときだけ、遠慮気味に、ほそぼそと、返事を返す。はいとかいいえとか、そういう短い意思表示だったのだとは思う。総じて聞き取れない、小さな小さな震えがいつもいつも水面の揺れに負けて消え入った。
僕は、だからこそ、惹かれていた。その子が、それこそ世界全体を震わすつもりで言葉を紡いだとして、そこに含まれる心模様はいったいどんな様相だろうと、伝わってこない意思に強い魅力を感じたのだ。
そうしているうちに僕は袋から水槽の中へと移動した。
そこには仲間と呼べる存在もおらず、薄い透明な壁越しに僕とその子がいるだけの静かな空間。
僕が話しかけても今度は返事と呼べるものすらなく、
遠慮気味にあった意思表示も感じ取ることはできなかった。
日が進むにつれどんどんと小さくなるその子には気づかないふりをして、僕は懸命に語りかけるだけだった。
それから、数日たったある日、その子の体から水が垂れているに気づいた。
もう終わりが近いのだろう、救わねば、僕が、仲間を。
決心して、バシャと思い切り水面を弾いた。すると、口の中に空気の味が広がった。地面に落ちて、息ができなくとももがいて、その子に近づく。
もう少しでたどり着く。思いが伝わることを知らずに。

感想など

文章の始まりを水風船が割れた比喩でスタートしましたが、暗喩だったためか、メンバー間で困惑しているのが見て取れました。

リレー当時のコメントは以下のようでした(わかりやすく改変してます)。

> バシャと活きのいい音、弾けた音、仲間が消えた音。その子は、僕達とは違い、カラフルで、水面上で泳ぐこと無く、いつもプカプカ浮いていた。

↑子供の家の水槽の中かな?
> ある祭の夜、僕はプールにいたが、人間の子どもが寄ってきて捕まえられ、袋の中に入れられた。

↑は回想で、お祭り屋台のバケツ→ビニル巾着っていうのはわかるんだけど。

と出だしから、解釈に困惑しておりました。
ただ最終的には


あーーー、わかった。
> バシャと活きのいい音、弾けた音、仲間が消えた音。
これが屋台のバケツ水槽の話だと思っていた私。誤解に気づく。 

> カラフルで、水面上で泳ぐこと無く、いつもプカプカ浮いていた
これがスーパーボールだと思っていた私、誤解に気づく。

という誤解に気づき、金魚視点での風船に対する認識を語っていく流れになりました。
出だしを書いた本人の意図とは違いますが、こうやって誤解に気づかず、物語を進めていっても面白かったかもしれませんね。スーパーボールという解釈で、物語がどこに転がっていくかも気になりますし(ボールだけに)。

ここで分かったことは、解釈を広げるようにできるように、曖昧なスタートをした結果、大きな困惑を生んでしまったなと思いました。テーマに沿いつつ、わかりやすく、でも創作の道はある程度残せるようにというのは難しいところですね。今後に期待です。

というわけで、リレー小説5回目は金魚を視点にした水風船への思いを語ったものでした!次回をお楽しみにしてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?