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リレー小説 No.2 朽ちてゆく約束と君・ガラス玉

はじめに

おはこんばんにちは。Team.Clutch のかめです。
リレー小説No.2の記事担当となりましたので、小説本文と軽い感想を記載させていただきました。

朽ちてゆく約束と君・ガラス玉

テーマ:
朽ちゆく約束と君
ガラス玉

執筆時期: 2019/10/16~2020/01/20

メンバー1
引っ越し業者が家に入ってから半日も経たずして、作業を終えてしまったことに、なにか冗談じみた心地がしている。
君と積み上げたものは振り返ればこんなにも軽かったのかと。
ならばいっそ、全てを検分してやろうと、私はどんより動き出す。
一切の痕跡が消えていれば安心できる。そういう打算は早々に立ち消えた。
二階寝室。窓の斜陽をたわませて、透過する。床に空虚な波紋を映すそれは、小さな、青いガラス玉だった。
メンバー2
ラムネを買って飲むたびに、少し大きめの瓶に貯めていたガラス玉だった。
なんとなく始めた習慣だったが、いつしか瓶の中身は、一緒に過ごしてきた時間そのものだった。
業者が誤って、床に落したのだろう。何度見ても、ガラス玉は、窓からの光を、ただただ外に流しているだけだった。
私は検分したことを、早速後悔した。
メンバー3
このガラス玉を見ると嫌でも思い出す。かつて君とした約束を。
しかし、今ここには自分しかいない。胸に広がっていくこの気持ちをぶつけるべき相手もいない。
私は、床に落ちていたガラス玉を手に取り握りしめる。その無機質な冷たい感触は全身を覆い尽くすようだった。
なぜ、こんなにも冷たい気持ちに支配されるのだろう。
メンバー1
思えば、どちらが言い出したのかとうに知らない。それほど昔、幼少の折。
ラムネを取り合ったときに交わした約束だった。
泣いてしまった君にしどろもどろに、思いつくままについた一方通行に近い言葉。
今更ながらになんとも不甲斐ない。けれども、泣き止んだ君を見て随分と誇らしく思ったものだった。
より濃くなった橙の光をガラス玉に透かして見る。
メンバー2
思いつきでした約束、故にそれは蝸牛の歩に等しい速度で遂行された。ただし、結局思いつくままだった約束は果たせなかったわけだが。原因は簡単、蝸牛よりも、朽ちゆく速度が速かっただけなのだ。
家のすぐ側の社に存在していた君、もう信仰する象徴はなくなってしまった。社にラムネを供える者はもう居ない。
メンバー3
私は、ふと思い立ち社までの距離と時間を衝動のままに調べ始める。調べたところでどうしようというのか。君が今でも社の側にいるとは限らないというのに。ただ、私が一方的に反故にしてしまった約束を君がどうしたのかビー玉を見ていたら気になってしまったのだ。カレンダーを確認すると、休みはあと2日残っていた。
メンバー1
それでも、一日目はどうにも踏ん切りがつかず、反故した約束を噛みしめる道すがらで引き返すということを繰り返した。
二日目、最後の日。休みの終わり、そして思い出の場所から決別する日。昨日とはうってかわって、社までの道は短く感じられた。
人の手がもうほぼほぼ入っていないのだろう、社は見るからに古ぼけていた。
メンバー2
古ぼけた社、枯れ木に、落ち葉、一言にまとめると、世界の一角は、色あせた荒廃したものとなっていた。かつて、神社を守っていた威嚇した狛犬も、今では古びた社に対して不満をいだいているようだった。
さて、不完全ながら、約束を果たそうではないか。
私は、手荷物から、ビー玉とカメラ、それからラムネを取り出した。
メンバー3
ビー玉を握りしめ、目を閉じながら一つ深呼吸をする。
あんなにも踏ん切りがつかなかったのが嘘のように不思議と気持ちは落ち着いていた。
私は意を決して歩き出す。まず、狛犬の足元へとラムネを置き、私自身は鳥居の真ん中へと移動する。
時刻を確認すると、現在は午後16時。空は夕暮れ時へと差し掛かっていた。
そして、ビー玉を空に翳しながら、そっと呟くのだった。
メンバー1
「ごめん、一緒にはいけない。一緒にはいられない」
夕日を滴下したガラス玉。通して見れば、神座は色彩を豊かに取り戻していた。
どうして君が顕れたのか、結局知らない。ただ、空虚なはずがなかった。軽々しいわけでもなかった。
その一言を吐き出してしまえば、心の内に残ったものはどこまでも鮮やかに積み上がったままだった。
朽ちてしまった約束。私は万感の思いと返事とをガラス玉に詰め込んで、重々と賽銭箱へ投げ入れた。

ーー了

感想など

全体を振り返ってみて、リレー小説の難しさと面白さを感じられた題材でした。

一節目を書いた時点で想定していた話の流れから、心情変化はあまり外れてないのですが舞台や登場人物が予想外の方向に広がった感じです。
個人で書いていたら到底到達できない風景になりました。これはリレーの面白さですね。

一方で、この主人公はどんな約束を交わしたのか定めるのが難しく、みんな他メンバーを伺いながら話を繋げていってました。
なので、少々話の中腹が間延びしちゃっている印象はあります。

個人的にはラムネのビー玉、古ぼけたお社、夕日。約束。ここらの要素が絡み合って生まれた色合いが最終節まで繋がったのは良かったです。
惜しむらくは、プロローグシーンの意味付けと小道具のカメラを話の中で回収できれば良かったのですが、……難しかったな、これは!

ともあれ、書いているときも振り返っているときも、寂寥感はありつつも存外心地よい空気感を持つ作品になったものだと思いました。

以上です。


それでは、次のリレー小説を乞うご期待。ではでは。

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