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「添乗員って何する人?ガイドさんですよね?」の疑問に答えます
ツアーに乗務していると「ガイドさーん!」とお客様に呼ばれることが多く、まだまだ認知度の低い仕事なのだな…と感じます。
このコンテンツでは、「添乗員」が何をする人なのか、そして、ガイドさんとの違いについてもお話しします。
これから添乗員という仕事をやってみたいと考えている方や、添乗員つきツアーに参加をお考えの方にとってちょっとしたヒントになればと思います。
添乗員という仕事とは?
まずは添乗員という仕事についてお話しします。
添乗員はツアーコンダクターとも呼ばれるお仕事。
しかし具体的にどんな仕事をしているのか、なんとなく理解しにくいと思われる方も少なくはないでしょう。
添乗員に必要な資格
添乗員になるためには「旅程管理主任者」という資格が必要になります。
この資格には2種類あり、国内ツアーの添乗のみの「国内旅程管理者主任者」と国内外、海外ツアーも担当できる「総合旅程管理者主任者」があります。
資格を取得するためには、旅行業者や専門学校、各種教育機関が実施する「旅程管理研修」を受講する必要があります。
一般社団法人 日本添乗サービス協会(TCSA:Tour Conducting Service Association in Japan)での資格試験を受け、合格すると主任者証が交付されます。
添乗員の業務って?
添乗員の業務は、資格の名称でもあるように「旅程(ツアースケジュール)を管理する仕事」が主体です。その上で、ツアーに参加するお客様が安全で快適に旅行を楽しむことができるように、さまざまな役割を果たします。以下に、添乗員の主な5つの業務を紹介します。
1. ツアーのスケジュール管理
*旅程の確認と調整* 添乗員は、ツアーのスケジュールを事前に確認し、各訪問地やアクティビティの時間を管理します。遅延や変更が生じた場合には、スムーズに対応し、旅程を調整します。
*移動手段の管理* バスや列車、飛行機などの交通手段の同行や、乗車・搭乗の際の案内を行います。
2. お客様のサポート
*健康や安全の確認* お客様の体調や安全を常に気にかけ、必要に応じて応急処置を行ったり、医療機関を手配したりします。
*トラブル対応**お客様の荷物の紛失、体調不良、予定の変更など、予期せぬトラブルが発生した場合には、迅速に対応し、解決に導きます。
3. 現地でのサポートと調整
*ホテルや食事のサポート* 宿泊施設でのチェックイン手続きや、レストランでの食事のサポートを行います。
*現地ガイドとの連携* 目的地での現地ガイドやドライバーと連携し、ツアーを円滑に進めるための調整を行います。
4. ツアーの報告と記録
*報告書の作成* ツアー終了後、旅行会社に対してツアーの進行状況やお客様のフィードバック、トラブルがあった場合の対応内容などを報告します。
*経費精算*ツアー中に発生した経費を整理し、精算処理を行います。
5. 緊急対応
*緊急時の対応*災害や事故が発生した場合、迅速に行動し、全員の安全を確保するための対応をします。お客様が無事に解散場所(日本の空港や国内バスターミナルなど)にお戻りになれるようサポートします。
ガイドさんとどう違うの?
ツアーガイドさんもツアーコンダクターさんも同じ仕事では?と疑問に感じている方も多いと思います。
ここではガイドさんとの違いを説明しましょう。
1. ツアーガイド(Tour Guide)さんのお仕事とは?
役割: ツアーガイドは、特定の観光地や施設について、お客様に詳しく説明する役割を担います。主に観光地の歴史、文化、建築物、自然などについての専門的な知識を持ち、お客様にその場所の魅力を伝えることが仕事です。
業務内容:
観光地や博物館、遺跡などでガイドツアーを行う。
観光地の歴史や文化、興味深いエピソードなどを解説。
観光スポットを効率よく案内し、お客様がその場所を理解し楽しむ手助けをする。
資格: 一部の国や地域では、ツアーガイドとして働くために資格やライセンスが必要です。たとえば、日本では「通訳案内士」という国家資格があり、外国語でガイドを行う際にはこの資格が求められます。
特徴:多くのガイドは、ガイドライセンスを持つ国の出身であったり、その国に長く在住している。基本的にはその国、もしくは都市に特化した案内を提供するため、他国や担当都市以外の案内はライセンス上できない場合もある。
また、使用する言語もライセンスによって限定されている。
2. ツアーコンダクター(Tour Conductor / Tour Escort / 添乗員)のお仕事とは?(前章と重複した内容ですが…)
役割: ツアーコンダクターは、ツアー全体の進行を管理し、参加者が安全かつ快適に旅行を楽しめるようサポートする役割を担います。旅程全般の管理やスケジュール調整、お客様のサポートが主な仕事です。
業務内容:
ツアー全体のスケジュールを管理し、移動手段、宿泊、食事などを確認・調整する。
お客様の体調や安全を確認し、トラブルが発生した際に対応する。
ツアーの進行がスムーズに行くように、現地ガイドや運転手、ホテルスタッフなどとの連携を図る。
ツアー終了後に報告書を作成し、旅行会社に提出する。
資格: ツアーコンダクターとして働くためには、旅程管理主任者の資格(国内または総合)を取得する必要があります。この資格により、法的にツアーの管理を行う権限が与えられます。
特徴:海外ツアーコンダクターは日本国籍の日本人が多く、日本出発から帰国までをお客様のエスコート役として担当する。基本的な使用言語は日本語と英語。決められた国を担当するのではなく、旅行会社や添乗派遣会社によってスキルに見合う担当するツアーをアサインされる。
3. 主な違い
業務の範囲:
ツアーガイドは特定の観光地や施設での説明に特化しています。
ツアーコンダクターはツアー全体の運営とお客様のサポートに責任があります。
専門知識:
ツアーガイドは、特定の場所やテーマに関する専門的な知識を持ち、解説を行います。歴史や文化、生活様式など様々な深い知識を必要とされています。
ツアーコンダクターは、旅行全体を通じた広範な知識や、トラブル対応能力が求められます。
関与する範囲:
ツアーガイドは、ガイドする場所での短時間の業務が主ですが、
ツアーコンダクターは、旅行の出発から帰着まで、ツアー全体に関与します。
これらの違いにより、ツアーガイドとツアーコンダクターは、それぞれの役割で異なるスキルや知識が求められる職業です。
国にもよりますが、ガイドさんの資格は国家資格で資格保持がとても難しい国もあります。日本でも通訳案内士の資格は国家資格で合格率10%前後。
持つ資格も、そして仕事内容もそれぞれ全く異なる業種だというのがわかると思います。
しかし、混乱する添乗業と案内業
とはいえ、最近のグループツアーにおいては「あれ?私、添乗員なのに案内業もしないとならないの?」という場面もよく遭遇します。
本来の業務以上を求められる格安ツアー
格安ツアーの添乗業務では、時として「この国はガイドさんがいないので添乗員さんヨロシクね」と無茶振りされるケースがあります。
どうしたって嵩んでしまう人件費を少しでも抑え、できるだけ安くツアーを作ろうと考えた上のガイドさん抜き観光プラン。
同行する私たち添乗員がやむなく現地でガイドさんの代わりに観光地をご案内するということが最近増えてきました。
お客様にわかっていて欲しいのは、私たちは案内業が本業ではないので、そのための専用の研修を受けたり資格を持っているわけではないということです。
できるだけの努力や工夫はしますが、やはりその国に生まれ育ったり、住んでいるわけではないので案内不足は否めません。
あるツアーでドイツの山にお客様をご案内した時、道端に咲く花を指差して「この花は何ていう花ですか?」というご質問をいただきました。
もちろん、私は知りませんのでお答えできなかったのですが、それに対して「勉強不足だ!添乗員の資格がない!」と大変ご立腹され困惑しました。
その頃はまだ私も若かったので、とても傷つきました。
まだ携帯電話もない時代のことですから、今の時代でしたらGoogleで調べれば済むだけのこと。今でも同じような質問をいただくことがありますが、さも当然のようにGoogleで調べてご案内するようにしております(笑)
多くのお客様もスマホやPCを持って海外へ出向く時代。
昔ほどの質問の嵐は受けなくなって、古株添乗員としては時々寂しく感じることもあるほどです。
ちょっと前でしたらパリのフリータイムに「添乗員さん、良いレストラン知りませんか?」「レストランの予約をしたいのですが、助けてください。」という声が多かったのですが、今はスマホでサクッと検索してサクッと予約ができてしまうので、お客様にとっても便利な時代になったのでしょう。
とはいえ、いくら経費削減でガイドライセンスを持たない私たち添乗員に「ガイドさんつかないからヨロシクね!」と法外の業務を押し付けるのは如何なものでしょうか。
お客様がガイドさんと添乗員の見分けがつかないことを利用しているように感じて申し訳なく思います。
国や場所によっては逮捕される添乗員
わりと最近の話ですが、有名な都市ではガイドさんの仕事が激減しているからなのか、無資格な者による観光案内が違反として警察による取り締まりが厳しくなってきました。
本来有資格者であるガイドさんが案内をすべき都市などでは、取り締まりで捕まってしまう添乗員が増えました。
ほんの少し、トイレの場所を案内しただけでもアウト。
信じられない話ですが、本当のことです。
特にイタリアは厳しく、会社からも「イタリアでは街中でお客様に案内はしないように!」とのお達しが。
もちろんお客様はこのような事情などわかりませんから、「案内もしてくれないなんて、なんて不親切な添乗員なんだろう!」とがっかりされることでしょう。
しかし、逮捕されたら保釈金が10000ユーロ前後が相場と言われています。
どうぞ、どうぞこの現状をわかって添乗員と一緒にイタリアを旅してください。
そうなんです、私たちはガイドさんではなく、あくまでもツアーの旅程を管理する添乗員なのです。
イタリアの警察が私たちに警告したいのは「ライセンスを持たない添乗員の案内は越権行為」ということなのでしょう。
この現状も踏まえて、旅行会社は観光がある都市では1時間であってもライセンスガイドさんをツアーに付けるようにするべきだと考えます。
お客様は私たち添乗員ではなく、きちんとしたライセンスガイドさんの案内を望まれているのですから。
「この病院では治療はしますが医師はつきません。看護師が自ら勉強し、治療を提供します。同じような医療資格ですから、警察に捕まらなければ大丈夫です。」と謳われる治療費がとても安い病院に行きたい人はいないはずです。それなりの費用はかかっても、ライセンスを持つ医師に1分でも良いから診断してもらいたいと思うのでは無いでしょうか。(例えが微妙ですが…)
添乗員は旅の便利屋?
国によってはガイドさんが付いていても「日本語ガイド」ではないこともあります。
マイナーな都市では日本語を喋るガイドさんの代わりに英語のガイドさんがグループにつくこともあります。
そうなると…
英語のわからないお客様はガイドさんの説明の内容が分からず困ってしまうため、私たち添乗員が通訳のような形でガイドさんの話た内容を日本語でお伝えするということも。
しかし…はい、そうです。
私たちは通訳士の資格もトレーニングも受けておりません。
固有名詞がたくさん出てくるような歴史の話や、難しい専門用語が多発する政治や宗教の話…必死になって「なんちゃって通訳」を務めるのですが、お客様の中には英語に長けていらっしゃる方や、政治や歴史に詳しい方も多く…ここでも不服に感じられるお客様が。
はたまた、体調を崩されたお客様に健康相談を持ちかけられることも多いです。
症状を訴えられ、私たちができることは医療機関へお連れすることや、必要に応じて氷や水、追加の毛布をホテルに依頼することはできます。
しかし「この程度だったら病院行かなくても大丈夫ですよね?」といった相談や「発熱しているけれど、飛行機乗っても大丈夫ですか?」といった質問にはお答えできず困惑してしまいます。
できる限り親身に寄り添うようにしますが、通院が必要かどうかの判断は添乗員にはできません。
他にも壊れてしまったスーツケースを直してほしいとご依頼されることや、忘れ物を捜索して欲しいと言った相談も。
確かに私たちは旅の上で何でもできることがあれば対応するようにしていますが、どうかどれもこれも本業以外のサービスであることをご理解していただきたいと思うのです。
私たちの本業は「旅程管理」であり、グループの進行が滞りなく進むように監督するのが務めなのです。
グループツアーが潤滑に、安全に楽しく予定通り進むためにトラブル対応をしたり、細かいサポートを心がけているということをご理解いただければと思います。
まとめ
私たち添乗員は「旅程管理主任」というツアースケジュールのプロ。
ガイドさんの「案内業」とは全く異なる業種であるとご理解いただけましたか?
私たちはツアーのスケジュールや内容を把握し、ツアー開始の日本出発から帰国まで通してお客様に寄り添います。
ガイドさんは現地での深い知識をもとにその都市や観光スポットの魅力をお客様に案内してくださいます。
それぞれが異なる業種でありながら、一緒に働くことでツアーをより安全で楽しく、そしてとても興味深いものとしてお客様に提供することができるのです。
ぜひこの仕事の違いを理解していただき、「この街の歴史についての質問」はガイドさんへ、「このツアーの明日のスケジュールについてのご相談」は添乗員へお聞きいただければと思います。
(つまり「エッフェル塔の高さ」はパリのガイドさんに聞かれると正解がわかり、「最終日の日程でお土産を買う時間が取れるかどうか」は私に聞いていただければ予定をお伝えできるということです。)
添乗員が同行するツアーに参加されたことの無い方は是非次の旅でパッケージツアー、グループツアーを検討してみてくださいね。
安全で楽しい旅を!
今回は添乗員の仕事について触れてみました。
他にも海外旅行に役立つような内容の記事を少しづつ綴っています。
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