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アリスのありすぎる夢

世界に一人、木漏れ日の元、
大樹に安心を預けて眠る、
アリスという女の子がおりました。
アリスはたくさんの本を読んで、
たくさんの音を聴き、
たくさんの歌をうたいました。

アリスは、好きなことをたくさんする度、
見つける度に、心の中が、
あったかくなっていきました。

そうして明日は何をするのかを、
楽しみにしながら、
眠りにつくのが好きでした。
繰り返し、繰り返し過ぎていく日々に、
飽きもせず諦めもせず、
アリスはもくもくと進み続けました。

そうしていつの間にか周りが秋の色に染まった季節のころには、
アリスは、自分の取り組んだことと、取り組みたいことの二つを別々のノートに記していくことをしていて、それが200冊を越えたのでした。

やがてアリスは陸を出て、
海へ足を伸ばし、
夢で出会うはずの、
ティーカップさんや、
ぼうし屋や
時計をもったウサギさんとも、
海に浮かぶ船で握手を交わし、
拳を付き合わせていました。

ぼうし屋からは、
【陸に上がってお茶会をしないか】

ウサギさんからは、
【いそがしい!!いそがしい!!】

と声をかけられましたが、
その度にこう声をかけて、
彼らと握手をしました。

ぼうし屋には、
【今すぐにとはいかないけれど、
新しい場所へ向かったときは、
その場所特有の茶葉を、
お茶会にもっていくから、
楽しみにしていてね

【また近いうちに陸で会いましょう】

ウサギさんには、
【ゆらゆらと進む船の上で、
忙しくすることなんてなくていいの
女王様には、
わたしの力でたどりついてみせるから、
楽しみに待っていてね】

【また近いうちに陸で会いましょう】

決まってアリスはそう言って、
にこりと太陽にも負けないくらいの、
刹那に吹いた風にも動じないくらいの、
強くて優しい笑顔を浮かべて、
握手をするのです。

その後、しっかりとした足取りで自分の船へ戻っていくので、最初は不安がっていたウサギもぼうし屋も安心して陸へ降りることができました。

それから数年経ち、
アリスは色々な場所で握手と笑顔をみせて、
またしっかりとした足取りで帰ってきました。

自分の船に帰った後、
アリスは日記を二種類書きます。
自分の取り組んだことと、
取り組みたいことの、二つ。

本棚にはもういくつあるかわからないくらいびっしりと書き終わった日記がありました。

アリスの動き方に感銘を受けた動物たちや人々の中には、アリスの船の船員になる人もいて、今各々が休憩をしている中で、アリスの日記を読む人もいたりします。

船員たちに、
ペラペラとめくられている日記は。

もう何度も読み込まれていて、
少しだけ古くなっているのですが、
そこにはある程度、
最初の方にかいたであろう、

【ぼうし屋に茶葉を届ける】
【さみしがり屋の女王様と、
友達になってトランプで遊ぶ】にしっかりと◯が書いてありました。

人の船や、たどり着いた陸地から帰ってきたアリスに、必ずと言って良いほど、
声をかける人や物の姿があります。

中でも安心するのは、
最初の頃に船員になったティーカップくん。

ティーカップくんは、
アリスとあった後、
色々な場所の飲み物を飲んでみたいと、
アリスに語ったことで、
今ではアリスの親友となったのでした。

彼がペタペタと歩いて、
「おかえり~~~~」
というと、アリスは雛鳥のように元気な声と、ひまわりのようなニコニコとした笑顔を浮かべて、「ただいま!!」というのです。

そんなアリスの長旅も、
幸せなことばかりではありませんでしたが、重くなるその度にアリスは、
自分が突き動かされた、
有りすぎる夢の数々を、思い出して、
やる気を出して前を向くのでした。

そうして、紅茶の準備に取りかかるアリスの表情は、とても楽しそうなのでした。

気がつけば何度も何度も旅をして、
アリスは色々は人や動物や物から、
こう言われるようになっていました。

【アリス船長】と。
そしてこうも言われるのです。

「アリス船長の航海のように、
後悔をしない、
しても清々しい生き方が出来ればいいな」

アリスは今日も、
何処かで握手と笑顔を前に出して、
誰かに向かって、こう言っています。

【また近いうちに陸で会いましょう】

もしかしたら、
次に会うのは、
これを読んでいるあなたや、
ワタシなのかもしれませんね。

あ、そう言えば、
先日見つけた二人目のアリスは、
どうやら狙撃のうまい男の子でしたよ。

休憩中で旅中の幸ウサギより

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