三石色の獣の夢-f
私たちが辿る場所は全てが曇天、
色に鮮やかさなどなく、鈍色に埋め尽くされている。
たくさんの血を浴びて、途方も無いときをすごして。
berry,rose,bell、
どれもが甘美で綺麗な形を持つ存在であったはずなのに、
壊れ朽ちた場所と、帰ってくることはなかった誰かの温もりの末に。
私たちはボロボロになった箱庭を飛び出して、
淡い夢の軌跡を探しながら歩んでいる。
何も、愛しさに惹かれて進むわけではない。
何も、悲しさに揺られて歩むわけではない。
私たちはその現状を積み上げたモノ達に復讐を突きつけるために、
歩み進んで、追い牙を刺す。
「あら、こんばんはそこのお人。
よろしければ私と一晩、昔話をおやつに、
お話いただけませんか……??」
命を潰し、懇願の叫びを聞いた後でも、
酒に酔い、女に溶け、平然とするその態度。
私たちにとっては、とても窮屈で目障りだ。
「jewelry……私の身体をそう言って頂けるんですね。
嬉しいわ……あなたの血もとても濃い色を。」
そういっていつものように、鮮血の花を咲かせて。
私たちの身体は誰にも抱かせるわけにはいかない。
何故ならば、この身体こそ、
お父さんとお母さんの、最後の結晶なのだから。
建物を出て、ため息を吐くより先に、歩くのを開始する。
「おや、君は。」
目の前から知らない声が、私たちの耳に辿り着いた。
「あら、とても綺麗なお方。私に何かようかしら?」
「ベレイアとKUZUKIの、
子ども達じゃないか。元気、とは言えないようだが、
こんなところで奇遇だね。」
え……。
あっ……。
胸が、一瞬だけ止まった気がした。
「なぜ……両親の名前を 」
思わず、前方の人間を見ようとして顔をあげた。
「貴方は…………。」
「はっはっは、そんな顔をしていたら、
二人ともが悲しんでしまうよ。
私の世界で、お茶でもしようじゃないか。
美味しい紅茶を淹れてあげよう。」
そうほほ笑んでいる彼の姿は、
白髪の様な銀髪のようなそんな感じがして。
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