-聖、夜-欲思考停止-夜(7102)
神秘と願いと愛の満ちる先に。 唐突に開かれた一つの空間。 それはいったいなんなのか。 人形たちですら困惑を浮かべて。
バチバチと、何処かで音が鳴っている。
耳の奥にそう感じてはいるものの、今のボクは眼の前の熱の方が大切で。
「はあっ」と激しい息遣いと声が肌に触れている。
そんなに急がなくても、ボクは逃げないよ。
ボクはきちんと君を包んでみせるから。
ふと横眼を向くと、カタカタと寒風と吹雪によって鳴る窓硝子には、
赤らんだボクの顔と、ボクを抱いている温かな真っ黒な影が映っている。
寒い時期のスープは身体にしみる。
寂しい時期の行為は、心の奥にしみこんで行くのだろうか。
影の眼がボクを視ている。不安、切なさ、寂しさ。
今は、それらを君が考える必要はないと、ボクは背中に回していた手を影の頭へと沿わせていく。
大丈夫、君の寒さは、ボクの熱で覆ってあげる。
大丈夫、君の吹雪は、ボクの中で溶かしてあげる。
沿わせていた手で頭を撫でる。
寂しさが溶ける様に。
悲しさが止む様に。
君が温かくなるように。
身体の動きが速くなる。
それは、終わりが近づいている証。
一段と熱を帯びたモノが吐き出された後。
ボクは何度もキスをした。
君が熱を忘れないように。
君が前を向けるように。
唾液が、繋ぎとめる様にスーッと付いてくる。
「安心できたかい??」
そう声をかけて頬をすり寄せるボクの声が、
ウトウトとしている君に届いているかはわからないけれど。
それでも、ボクはいいんだと思う。
届かなければまた言えばイイ。
君が落ちるその前に、君が染まるその前に。
ボクはそう思っているから。
瞼を閉じた君の頬に小さくキスをして。
ボクも微睡の世界へ沈んでいく。
いつの間にか、外の吹雪は止んでいた。
暗闇に溶けていく家の外、小さな三角帽子の人形が一つ。
そしてそのはるか後ろに黒い影が一つ在る。
「まさかまさかダなあ☆」
まさか、願いの結晶が意志を持っている事象があったなんて。
「次ハボクモお相手して欲しいもんダナア☆」
聖夜の結晶は、我々にも鑑賞できない。
なぜならばそれは、ヒトでも異常者でもないからだ。
そう思って私は二号より先に、この世界を後にした。
願わくば、幸せであるようにと願いを残して。
メリークリスマス、全ての愛を。
掲載日:2017年 12月 25日
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