君の夢を紅葉に教えて
真新しい緑の色が周りからだんだんと変わっていくことを感じながら、
石畳の道をてくてくてくと歩いている。
桜並木でも青々とした若木の道でもなく、
わたし黄色や茶色、赤に彩られた道がすき。
古びた匂いのする街や、時と共に動く雲や、
時代を思い出とする石畳がすき。
「ねえ、次のおやすみパフェを食べにいこうよっ!!」
弾んだ声が前の方から聴こえた気がして顔をあげてみると、
そこには見知らぬ男女が一組、腕を組みながら歩いていたり。
からからと、足元を紅葉が撫でまわる。
ああ、あの人は、もういないんだっけ。
特になんの感情を抱くこともなく、あっさりと投げる。
今から、三日前、言われも得ぬ不安を感じて、
ぼんやりと抜け殻になっていたあの人に、別れを告げた。
急にというわけではなくて、いくつもの理由という線が有りながら、
彼と今のわたしの環境の差や人の動きを考えながら、
これから先、長く、長く。
一緒にいることに、楽しみを感じられなくなったから。
というのもあったかもしれないし、
幸い、まだわたしの周りには、
わたしが楽しいと思える幾人かの男性の存在だってあったのだ。
だから、切り出すことの不安やなんといわれるか、
という苦悩はあったけれど、
言葉を発してわたしが臆病になることなんてなかった。
切り出してしまえば、明日にだってわたしはもう進んでいられる。
淡い緑が、風や時間を経て濃く色付いて、
やがて――何処か渋く、懐かしい香りをまとって紅葉になるように。
ああ、今日も、また一つ、思い出が風にさらわれて、
新しい紅葉と気持ちを運んでやってくる。