此方の勇者は前を見る。
さんざん流した涙のあとで。
シンと世界に佇んでいたのは、
世界に二人だけだった。
お互いのいる場所は、
城でも草原でも塔でもなく、
海が寄り離れる小さな小島の先。
呆れたと笑いながら、
眼を鋭くして対峙する互いは、
もはや宿屋で抱きしめ、
泣き撫であった二人ではなくて。
雰囲気をみて、
敵なのだと気付いたのは早かった。
ただ、心がどうにも錆び付いて。
誰か、わかってくれる人はいないかと。
それだけを、求めて。
土砂降りの日に、
寂しさと、
縛り付けられた心に耐えきれず寝床を共にした。
あっさりと短く利害的なこと。
たった、それだけのことだったのに。
深く呼吸をして声に出す。
手をそえた剣に感情を隠して。
「例えーー不正解であっても、
この深い世界を真っ当に進んで、
不正をすることもなく辿り着いたよ。」
あなたの前に。
ひどい表情をしている、
きっと私も同じだろうか。
あなたは私を睨んでいる。
わたしだけを、
睨んでいる。
ならば私もあなたを見よう。
あなたに近づこう。
あなたのそばに、もっと寄ろう。
二人を囲む海水の音、
あなたは細かく、こまかく、俯いていく。
改行は、とまらない感情。
はやく、はやく。
終わりにしよう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?