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英文法解説 テーマ12 特殊構文 第3回 倒置とは違う!「語順転倒」って!?

 こんにちは。「特殊構文」の第3回目になります。今回扱う「語順転倒」というのは、前回の「倒置」の続きという位置づけになります。英文法書や教科書などを読んでみると、この「語順転倒」を「倒置」の一種として扱っているものが少なくありません。そのせいか、両者を同じようなものと勘違いする人が続出するのですが、根本的な仕組みが違います。なので、今回はそれぞれがどう違うのかをはっきりさせていきたいと思います。前回の「テーマ12特殊構文 第2回「「倒置」って難しそう…と思われがち」」と併せて読んで見てください。

第1文型の語順転倒

 前回のおさらいになりますが、「倒置」というのは、「疑問文の語順」になることなので、例えば、he isの倒置形はis heになり、he likesの倒置形はdoes he likeになります。一方で、「語順転倒」というのは、単純に「文型上の要素が入れ替わる」ということです。第1文型~第5文型のどれでも起こりうる文変形の一種ですが、まずは、第1文型の「語順転倒」を見ていきましょう。

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 一般化すると、以上のように、「MVS」ということになります。M(場所・範囲)というのは、「場所や範囲を表す副詞」のことで、ThereやHereのような単独の副詞の場合もあれば、Among ~やOn ~のような「前置詞+名詞」という場合もあります。また、V(述語)に用いられている動詞は、be動詞の場合は当然ながら、一般動詞の場合でも「V+S」という語順になる(つまり、do/does/didは不要)のがポイントです。例文で確認しましょう。

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 いわゆるthere be~構文「~がある・いる」というのは、実は第1文型の語順転倒によってできあがった構文(There=(M), be(=V), ~(=S))なのですが、例文1のように、be動詞の代用として一般動詞が用いられることがあります。しかし、M(場所)+V(存在・状態)+Sという形式で一般化して考えれば、be動詞だろうが一般動詞だろうが同じことです。

 また、例文2は、Among those present at the party「パーティーの出席者の中に」が「範囲」を表す副詞句としてはたらいています。この例文では、was a man I know wellをVCではなくVSと考えられるかがポイントです。よって、第1文型でのbe動詞は、「存在」を表すので、「私が知っている人」が「いた」となります。

第2文型の語順転倒

 続いて、第2文型(SVC)の語順転倒を説明します。これは、Cが形容詞・分詞の場合にのみ起こり、Cが名詞の場合には起こりません。では、早速見ていきましょう。

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 見た目だけなら簡単ですね。SVCがCVSになっているので、単純に3つの要素がひっくり返っただけです。とりあえず、例文で確認しましょう。

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 例文3ですが、例えば、The problem discussed yesterday was difficult.「昨日話し合った問題は難しかった」といった文に続く、という前提で考えて下さい。「~は難しかった。もっと難しいのは・・・だ」のように、前文のdifficultという形容詞からの流れをそのまま受けて、More difficultというC(補語)から文が始まっているのです。そして、そこからVSという語順が続くことで、CVSとなります。

 例文4は、so ~ that SV…構文「とても~なので…だ」のso ~にあたる語句が、強調のために文頭に出ています。そして、そこからVSという語順になり、C(=So important)V(=is)S(=English grammar)という語順転倒が起きています。

その他の語順転倒

 これまでは、第1文型と第2文型の語順転倒を見てきましたが、第3文型・第4文型・第5文型の語順転倒もあります。ただし、それらは、これまで見てきた2パターンとは語順が入れ替わるパターンが少し異なるので注意してください。

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 第3文型の語順転倒は、O(目的語)が文頭に移動するだけです。SVをVSにしてしまうと、例えば、John likes Mary.がMary likes John.のようになってしまい、文の意味自体が変わってしまいます。なので、Mary John likes.のように、Oが文頭に移動するだけです。

 第4文型の場合も、O1が文頭に移動するだけです。O2を移動したい場合は、一旦、SVO2+前置詞+O1という形に書き換えたうえで、O2+SV+前置詞+O1とします。

 第5文型の語順転倒は2パターンあります。Oを文頭に移動するパターンとOとCを逆さにするパターンです。後者の場合は、Cは形容詞や分詞の場合です。それぞれのパターンを例文で確認しましょう。

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 この話をするたびに質問されるのは、「先行詞+(関係詞の省略)+SV~」とどう見分ければよいのか?ということです。確かに、例文5だと、The man you’re talking aboutとI know wellの間に関係代名詞whom[who]が省略されていると見立てることもできると思います(その場合、正確にはThe manに対する関係詞節(you’re talking aboutとI know well)による二重限定で「君が話している、私が良く知っているその人」となります)。

 しかし、もし例文5がただ関係詞の省略された名詞句だとしたら、この名詞句(=S)にとってのV(述語)はどこにあるのでしょうか?どこにもありません。例えば、この例文が、The man you’re talking aboutI know well is, in reality, a police officer.であれば、OSVではなく、関係詞の省略で「君が話している、私が良く知っているその人は実は警察官だ」 となります(S+関係詞節+VCという構造)。

 また、例文6も、もしSuch a personとI would not tell any storyの間に関係代名詞which[that]が省略されているとしたら、この名詞句(=S)に対するV(述語)はどこにあるのでしょう?つまり、O+SVを、仮に「S+(関係詞の省略)+S’V’」と見立てても、そのSに対するVが見当たらないので、文としては成立しません。したがって、関係詞の省略と考えるのは無理があるのです。

 このように、語順転倒というのは、前後の状況や文全体をよく見なければいけないのですが、基本5文型の理解がしっかりしていれば、それを変形したこれらの語順パターンを簡単に見抜くことができます。いわゆる「疑問文の語順」になる「倒置」とは異なる現象なので、それらの違いをしっかり把握しておいてください。次回は、特殊構文の最終回「省略」を扱います。ご期待ください。


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タナカケンスケ(プロ予備校講師(英語)・映像字幕翻訳家)
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