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【最新年度を解説!】令和6年度「都立戸山高校」推薦小論文 解答と解説

はじめに

本記事は、令和6年度の「都立青山高校」推薦小論文<文系・理系>を解説しています。

本記事で解説している問題は、次のリンクからご覧いただけます。
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ではここから、解説に入ります!


【第1問(文系パート)】

<資料1>の分析

この資料は、1970年から2020年までの50歳時点における、男女別の未婚、有配偶、その他(死別・離別)の割合の推移です。主な傾向としては、

  • 未婚率の増加:男女ともに50歳時点での未婚率が年々増加しています。特に男性の増加が顕著です。

  • 有配偶率の減少:男女ともに50歳時点での有配偶率が年々減少しています。

  • その他(死別・離別)の割合の増加:男女ともに、この割合は比較的小さいものの、増加傾向にあります。特に女性の増加が目立ちます。

この資料から、日本の婚姻状況の変化、特に未婚化・晩婚化の進行、そして離婚や死別による単身世帯の増加といった社会的な変化を読み取ることができます。

細かい点に言及するならば 「その他」の割合(死別・離別)の上昇は、平均寿命の延伸や社会規範の変化といった要因も関係している可能性があり、それらの要因に関する出題もありえます。

<資料2>の分析

この資料は、1997年と2017年の20歳代・30歳代の平均年収の分布を比較したものです。横軸は年収の階級、縦軸は各階級に属する人の割合(%)を表しています。白棒が1997年、黒棒が2017年のデータです。

全体として、20年間で20歳代・30歳代の年収分布は、中間層・高所得層の割合が減少し、低年収層が増加する傾向にあることが分かります。これは、非正規雇用の増加や賃金格差の拡大といった社会経済的な変化を反映している可能性があります。

<資料3>の分析

この資料は、理想の子ども数を持たない理由について、50歳未満の初婚どうしの夫婦を対象に調査した結果を示しています。理想の子ども数を持たない理由として、以下の選択肢が提示されています。

  • (ウ) 子育てや教育にお金がかかりすぎるから:52.6% これが最も多くの回答を集めており、子育てにかかる経済的な負担が理想の子ども数を持たない大きな理由となっていることが分かります。

  • (エ) 高年齢で生むのはいやだから:40.4% 晩婚化の影響もあり、高齢出産への抵抗感が強いことも理由の一つとなっています。

  • (カ) ほしいけれどもできないから:23.9% 不妊などの理由で、子どもを望んでも持てない夫婦も一定数いることが示唆されます。

  • (ア) 二人以上、育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから:23.0% 育児の負担も、理想の子ども数を持たない理由の一つとなっています。

  • (オ) 健康上の理由から:17.4%

  • (イ) 自分の仕事(勤めや家業)に差し支えるから:15.8% 仕事との両立の難しさも、子どもを持つことを阻む要因となっているようです。

全体的な傾向として、子育てにかかる経済的な負担、高齢出産への抵抗感、そして不妊などが、理想の子ども数を持たない主な理由となっています。 


■ 問1の解答・解説

問1 太郎さんと花子さんが集めてきた〔資料1〕と〔資料2〕から考えられる少子化の原因を、100字以上 150 字以内で答えなさい。

すでに説明をした資料の分析から、次のような解答を導き出せます。なお、内容に関しては比較的論じられる内容なので、日々の時事問題に対する関心が高い受験生にとっては、難しい問題ではなかったと思います。

【解答】資料1からは、50歳時点での未婚率の上昇、特に男性の未婚率が大きく上昇していることがわかる。資料2からは、20歳代・30歳代の平均年収の分布を比較すると、20年間で実質的な変化がないことが読み取れる。これらのことから、未婚率の上昇と若年層の経済的な不安定さが少子化の要因となっていると考えられる。(148字)


【問2】 花子さんの立場になって〔資料3〕の理由を記号(ア)~(カ)の中から1つ選び、解答欄の所定の場所に選んだ記号を記し、それに対する対策を 100 字以上 150 字以内で答えなさい。

資料3において、理想の子ども数を持たない理由として最も多く挙げられているのが(ウ)です。こちらも、比較的、常識の範囲内の解答になります。ポイントは、的外れにならない対策をしっかりと書くことです。

【解答】
 選択 
(ウ) 子育てや教育にお金がかかりすぎるから
児童手当の増額や保育料の無償化、教育費補助の拡大など政府や自治体による育児支援の充実が必要だ。また、職場での育児休暇取得の促進や働き方改革を進めることで、子育て世代が仕事と家庭を両立しやすい環境を整えることも効果的だと考える。(113字)


【第2問(理系パート)】

<問題の解説>

文章にある「植物コミュニケーション」とは、植物が他の植物や動物と情報を伝達し合う現象のことです。

具体的には、植物が害虫などの外的要因による被害を受けた際に、化学物質を放出して周囲の植物に危険を知らせたり、害虫の天敵を呼び寄せたりすることで、自身や周囲の植物が害から守られる仕組みを指します。

図2A:落葉させた実験
このグラフは、疑似的に食害(2.5m以上の落葉)を与えたハンノキからの距離と、周囲のハンノキの食害割合の関係を示しています。

  • 距離が近いハンノキほど食害割合が高い傾向が見られます。

  • 疑似食害を与えたハンノキから遠ざかるにつれて、食害割合は減少しています。

このことから、疑似食害を受けたハンノキは、何らかの方法で周囲のハンノキに情報を伝達し、防御反応を促している可能性が示唆されます。
→「植物コミュニケーション」の存在を示唆する結果と言えます。

図2B:対照実験
このグラフは、何も手を加えていないハンノキ(基準木)からの距離と、周囲のハンノキの食害割合の関係を示しています。

  • 基準木からの距離による食害割合の明確な変化は見られません。

  • これは、図2Aで見られた食害割合の距離に影響を受ける変化が、疑似食害による影響であることを示唆しています。

つまり、ハンノキハムシの食害は、ランダムに起こるわけではなく、何らかの要因(この実験では疑似食害とそれに伴うハンノキの反応)によって影響を受けることを示しています。

● 考察(文章と図から分かること)
これらの図とグラフ、文章を総合的に見ると、次のことがわかります。

ハンノキは、高所の葉が食害を受けた際に(この実験では疑似的に落葉させることで再現)、周囲のハンノキに何らかの信号を送り、食害に対する防御反応を促している可能性が高いと分かります。この信号の伝達方法は明示されていませんが、空気中を伝わる揮発性物質や、土壌中の化学物質、あるいは地下の菌根ネットワークなどを介した伝達などが考えられます。

● 落葉処理とは、ハンノキの実験において「樹高2.5mより上部の葉を手動で20%落葉させた」操作を指します。この作業によって、ハンノキハムシの食べる範囲の葉には影響を与えず、疑似的に食害を受けた状態を再現することができます。この方法により、ハンノキが食害を受けた際に周囲に与える影響(植物コミュニケーションの有無)を確認するための実験が可能となります。

● 落葉処理を行わない条件(対照実験)を設定する理由は、落葉処理がハンノキの葉の被害に与える影響を正確に評価するためです。落葉処理を行った実験と行わない対照実験の結果を比較することで、植物コミュニケーションによる影響(例えば化学物質の放出による防御反応)が本当に発生しているかどうかを確認できます。
対照実験は、落葉処理そのものが植物や害虫に対して与える影響を分離して明確にするための基準となります。


問1の解答・解説

【問】実験の結果から、ハンノキがどのような手段を用いて“植物コミュニケーション”を行っていると考えられるか、自分なりの仮説をたてなさい。その仮説について、実験の結果との関連性を含めて、150 字以上 200 字以内で説明しなさい。

解答のポイントとしては、
・「手段」を明確にすること
・実験の結果に対する分析を明確にすること
・関連付けて、合理的な結論を導くこと
です。

【解答例】図2Aでは、落葉させたハンノキに近い個体ほど食害率が低いことが分かる。一方、図2Bでは距離による被害の差が見られなかった。また、落葉させる実験では、虫による葉の損傷はないため、落葉が植物コミュニケーションのきっかけになると考えられる。これらより、落葉が何らかの化学物質の放出を引き起こし、近くの個体がそれを感知し、害虫に対する防御反応を高めると予想される。(178字)


問2の解答・解説

問1で考えた仮説を証明するための実験と、仮説が正しい場合、その実験でどのような結果が得られるかを、100 字以上150 字以内で説明しなさい。

【解説】
問1で答えた自分の仮説に沿って解答を作成します。本問の場合、仮説を検証するには、次の解答手順になります。

① 落葉処理をしたハンノキから発生する気体を採取し、その気体に含まれる成分を分析する実験を行う。
→仮説が正しければ、落葉処理をしたハンノキから、特定の気体(揮発性有機化合物)が検出されるはずです。
② その揮発性有機化合物を健全なハンノキに吹きかける実験を行い、ハンノキの防御反応(例えば、虫に対する有毒物質の生産)が誘導されるかを確認する
→ もし誘導されれば、その物質が植物コミュニケーションの媒介物質であると結論づけられます。

【解答例】落葉処理をしたハンノキ周囲の空気を収集し、その化学成分を分析する実験を行う。また、処理された化学物質を他のハンノキに散布し、ハンノキハムシによる被害の変化を観察する。仮説が正しければ、散布されたハンノキで被害が軽減する結果が得られ、化学物質が防御反応を引き起こすすることが確認できる。(142字)




以上、令和6年度の小論文の解説をお届けしました。

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この度、令和6年度と同じく、ご自宅でも塾で授業を受けたような復習がしたいというリクエストにお応えして、
・令和5年度
・令和4年度
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