都立西高校 推薦入試のための【作文メソッド】
【 西高校推薦入試作文の3つの鉄則 】
西高の推薦入試の作文を書くために必要なテクニックはそれほどありません。テクニックよりも、どういう方針で取り組むのかが重要です。
鉄則1:著者(筆者)が本当に言いたいことにこだわらない
一般入試の読解問題のように長い文章であれば、筆者・著者の主張を正確に読み取ることが求められます。しかし、この形式の場合は、課題文が短いため、それはできません。よって、筆者が実際にどう考えているか、ではなくあなたがどう感じるかを論理的に説明できればよいでしょう。その言葉や著者自体を知らなくても全く問題ありません。
鉄則2:言葉の定義を自分で行う
自分の「感じたこと」「思うこと」を説明するときは、主観的な文章になるため、言葉の定義をしなければ他者=採点官には分かりづらいものです。求められるものは「感覚」「感想」ではなく、「思ったこと」を「なぜ、そう思ったのか」を論理的に説明する能力です。その際、課題文の中にある言葉に対して「自分なりの定義」をすることが必要です。
鉄則3:自分の感じたことや主張など、具体例や根拠を示す
解答する生徒は「いいことを書こう」「正しいことを書こう」とします。すると、抽象的な表現が多くなり、その点では差をつけることができません。ここで大きな差になってくるところは具体例です。自分が経験したことや、ニュースや本から得たことなど、具体例があることで説得力が増します。ユニークな経験が必要というわけではなく、その具体例がきちんと主張と一貫性があるか、主張を補強する具体例として適切かが見られています。
西高用の小論文・作文フレームワーク
作文フレームワークとは、文章を書くときに参考にする構成や型のことです。作文フレームワークを使うと、文章の流れや内容が整理できて、読み手に伝わりやすくなります。内容が良くても、読みづらい文章では説得力が発揮できません。
作文フレームワークには次のようなものがあります。
SDS法:Summary(要約)、Details(詳細)、Summary(要約)の順に書く方法です。最初と最後に同じ内容を繰り返すことで、読み手の記憶に残りやすくなります。ニュース番組などでよく使われる方法です。
PREP法:Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)の順に書く方法です。最初に結論を述べてから、その理由や例を挙げることで、説得力があります。プレゼンや面接などでよく使われる方法です。
受験の作文・小論文でもいくつかのフレームワークがありますが、どんなタイプの課題でも対応できる「4部構成」がおすすめです。
なお、身につけるためにはある程度のトレーニングが必要です。本教材に掲載されているもので「型」を身につけ、新しい問題で実践力を身につけましょう。
【目次】
<Check1>第一部「問題提起」のパート
テーマ:出題意図の確認、キーワードの解釈(定義)
与えられた言葉やフレーズに対して、自分なりの解釈をします。「感想」「感覚」ではなく、主張につながりやすい切り口を見つけます。主張がない場合(実際、多くの場合は主張を発想することは大変です)は、YES/NOで書ける内容にするとよいでしょう。この部分に関しては後述します。
また、この解釈する際に、因果関係や背景まで考えられるようになると、より質の高い文章を書くことができます。
「言葉の定義と解釈」に「何が問題か」まで考えることができれば、合格ラインに近づきます。
<Check2>第二部「意見提示」のパート
テーマ:自分の立場を明確にする
Check1で提示した問題や疑問などに対して、どのような立場を取るのか明確にし、それを短い文で述べます。自分の立場を明確にすることで、その後の論理展開がスムーズになります。また、読み手に対しても自分が何を主張しているのかが明確になり、理解が容易になります。
Check1が曖昧だと、Check2以降の設計がグラグラになってしまいます。Check1には時間をかけて、Check2の段階で立場が明確になるようにしましょう。
<Check3>第三部「展開」のパート
テーマ:「具体例」を「主張」に論理的に関連付ける
自分の主張に対する根拠となるデータや事実、具体例を挙げて、さらに説得力を高めます。これにより、主張が現実的なものであると示すことができます。より大切な視点はその根拠がどのように主張を裏付けるのか、その論理的な経緯を説明することです。これがないと、主張が根拠のない意見となってしまいます。
これができている文章は、相当な説得力を持ちます。一方で、制限時間内でここまで書けるようになるには、かなりのトレーニングが必要です。
<Check4>第四部「結論」のパート
テーマ: しっかりした「結論」をつくる
ポイントはたった1つ。「シンプルにまとめる」ことです。「結論」パートは、 「したがって、○○と考えられる」だけで十分だと思ってよいです。
再度主張を繰り返すことにより、読み手にメッセージを強く印象づける。特に、作文にありがちな、次の点に注意しましょう。
努力目標や意思表明などの個人的な感情を含む情報は避ける。
例「~でなければならない」、「私は○○しようと思う」余韻を持たせるような終わり方や新しい問題提起も避ける。
文字数の制限に応じて調整する。
文字数が足りない場合は、まとめ部分を簡潔に追記してもよいでしょう。しかし、余計な情報を追加すると、文章のまとまりも、印象の面でもよくありません。
「ことば」の分析の仕方はこれ!
▶▶ 課題の「ことば」はこうやって分析をする
西高の推薦入試の作文は【「ことば」をどう分析するか】で勝負が決まります。しかし、短く断片的なことばから、説得力のある文章を書ける人はいません。「ことば」の分析にはコツがあります。
このセクションでは「ことば」の分析方法をお伝えします。作文が苦手、時間がない人はステップ1〜ステップ3だけを繰り返し練習してください。
【重要】ステップ1:"ことば"を定義する
「ことば」を分解し、1つ1つの意味を幅広く考えます。
「ことば」から連想されるアイデアがつながるようにキーワードに自分なりの定義や解釈をつけます。
【重要】ステップ2:主張を逆算式で"つくる"
普通は「主張したいこと」なんてない。だから、ステップ1から「Yes/No」で答えられるような疑問をつくり、主張を作り出す。
【重要】ステップ3:主張の根拠や具体例・事例を出す
ステップ2の主張の正当性を裏付けるような根拠をなるべく具体的に用意する。できるだけ自分の経験を含めるように心がける。
ステップ4:複数の観点と理論武装
自分の主張を一方的に伝えるよりも、その反対の意見を示した上で、それに対する主張をします。論理的な対抗ができるように理論武装をします。
ステップ5:結論から行動の提案
結論部では、文章をまとめることが重要ですが、内容によっては新たな提案をすることができます。新しい視点の提案はどんな文章でも評価されます。
(読解力や文章力なら通常の試験で測定できます)
このガイドラインに沿って練習を重ねることで、確実にスキルアップが期待できます。トレーニングのセクションでは上記のステップを意識してください。
【トレーニング編1】
「ことばの分析」のコツを身につけるための練習です。ステップを何度も確認し、頭の中でシミュレーションしながら進めてください。
この問題の場合、どんなことを考えればよいのか。次のような質問を考えます。
「探検家」とは?
ベーコンが誰か知らなくても、探検家が海のことを語るので船乗りであると考えることはできる。もし、あなたが船で陸から遠くまで移動したことがあるなら、この言葉の意味は分かるはずだ。遠くには雲と水平線しか見えず、自分たちがどこから来たのかさえ疑わしく思うことがある。
探検家の心構えを考えてみる
「探検家」とは、未知の土地を開拓する人。好奇心と度胸が必要だ。この考えは、私たちの人生にも当てはまる。海は私たちの現実や常識、陸地は未知のことや夢を表している。私たちが「海しか見えない」と感じるとき、それは自分の環境や能力に満足してしまうことを意味する。しかし、私たちは探検家のように新しいことを探求し、成長することができる。
海だけを見る心の状態はどんなものだろうか?
「海のほか何も見えない」と感じるとき、人は「海以外は存在しない」と考えがちだ。しかし、ベーコンはそれを「すぐれた」考えとは言わない。西高校の受験生なら、「先入観にとらわれている」と指摘できるだろう。ただ、それだけでは説明が足りない。その感情や考え方の背景を深く理解し、説明することが大切だ。
自分の学校生活や今後の心構えに関連付けてみる
「陸地がない」と思いたくて思っているわけではない。そう考える背景や理由を深く探ることが大切だ。注意点として、感情的なことだけを優先すると、他の内容が見えなくなることがある。西高校の受験生なら、以下のような考え方が有効だろう。
「マジョリティの意見だからと、鵜呑みにしない」
「これまでの習慣に囚われず、新しい考え方を模索する」
「同調圧力に屈せず、より良い方法を探し続ける」
大まかな方針
「海しか見えないとき、陸地がないと考えるのは良い探検家ではない」という言葉は、私たちに自分の人生を豊かにするヒントをくれる。私たちは、見えるものだけでなく、感じることも大切にし、探求心を持って生きることが大切だ。
ここまで掘り下げることで、フレームワークにつなげていきます。
【トレーニング編2】
「単純」とは何か?
名言っぽいものは、無批判になりがちですが、改めて「単純」とは何なのか考えてみると難しいことがわかります。モノの構造が単純なのか、考え方が単純なのか。
「洗練」とは何か?
「洗練」とは何か、辞書的な意味ではなく、自分なりの定義をすることが重要です。まずは、自分が感じる「洗練されているもの」を複数書き出し、それらの共通の要素を見つけます。ファッションであれ、建築であれ、その中に見出せる「洗練」とは何か、本質は何かを考察することで、この言葉に対する深い理解が得られるでしょう。
「単純」から「洗練」にどう関連付けることができるのか?
同時に考慮しないといけないのは、「洗練」は最終目標であり「単純」がその手段である点です。この対応関係を無視すると、チグハグな文章や強引なこじつけになってしまいます。
コツは具体的に考えること
難関校の受験生にありがちなのは、抽象的に考えることは得意でも、具体的に考えることが苦手です。「絵を描く」「製品を作る」「数学に取り組む」など、具体的な状況を考え、その中でも自分の経験や知識を活かせるものを選ぶようにしましょう。
作文・小論文のチカラがつく!添削指導の経験からつくられた"評価基準"
小論文には決まった評価基準はありません。しかし、これまでの添削指導の経験上、アドバイスが多い項目があります。それを評価の基準としました。
1. 解釈の深さ
解答者は文章の意味や背後にある意図を深く理解しているか。
2. 論理的説明
解答者が自分の意見や感じたことを論理的に説明できるか。
3. 言葉の定義
課題文中の言葉に対して、自分なりの定義や解釈を持っているか。
4. 具体例の使用
解答者は自分の主張や感じたことを補強するために具体例を使用しているか。
5. 独自性
解答者は他の受験生とは異なる独自の視点や意見を持っているか。
6. 重複の有無
受験生は無意識のうちに同じような表現を何度も書いてしまいます。特に「書くことが思い浮かばない」時に起こりがちです。重複表現は避けるようにしましょう。
7. 感情的な内容の有無
感情的な表現は、主観的な文章になりがち。事実の羅列では、魅力のない文章になることもあるので、文脈に合わせて活用すること。
8. 自己アピール
学校によっては作文で「自分をアピールせよ」と指導しているようです。テーマとは関係がない、文脈に合わない不自然な形の入学後の抱負や意気込みは避けたほうがよいでしょう。
9. 文章の構造
解答者は文章を明確な構造で構築しているか、それとも雑多な内容が混在しているか。
10. 文字数
解答者は与えられた文字数制限内で適切な内容を表現しているか。
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ここから、上記の内容をベースに、
を、5年度分の過去問を用いて解説しています。