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西洋魔術 万物照応とその矛盾

奥さん、今回は万物照応についてのお時間ですよ。

さて万物照応というのは、簡単に説明してしまえば

「これとこれって実質同じものだよね」

という考え方です。

おやま、暴論。

「信号が赤だから、止まれと書いてあるのと同じ意味だよね」

おお、ちょっと近いかも。
近いけども、うーん。

もう少しちゃんと説明してみます。
(※矛盾への言及については記事後半になります)

東洋には、あらゆる事象を別の物事にも当てはめて考える陰陽五行思想、そこから派生した陰陽道というものがあります。
十二支の丑に当てはめれば、丑の時間、丑の方角が存在するというように、時間と空間に丑の状態が現れます。
こうして時間と空間を同一次元で考えて吉凶や暦を読み解くのが陰陽道でした。

また、方角の照応といえば四神相応(しじんそうおう)というものがありまして、これは天地における理想の配置として、北から時計回りに玄武、青龍、朱雀、白虎が四方へ配置されます。

また、四神を使ってあらゆる事象を四分割にして表す事ができます。

例えば青春時代という言葉がありますよね。
この青春時代という時間軸は、青龍に相応している「青色」と、植物の萌芽を表す「春」の状態を合わせた言葉になっております。
まだまだ若い芽の時期を表すのですね。

そして青春時代が過ぎますと、次に来る四神は朱雀ですから朱(あか)い夏、すなわち「朱夏(しゅか)」に入ります。
さらに次は白虎の秋、「白秋(はくしゅう)」、最後は玄武の冬、「玄冬(げんとう)」が訪れます。
玄(げん)は素人と玄人(くろうと)の字で知られる通り、色は黒ですね。

とはいえ青春以外が使われる事は殆どないのが現状ですが……。

各方位ごとに照応を並べると以下の通りとなります。

・北 玄武 黒色 水気
・東 青龍 青色(緑含む)  木気
・南 朱雀 朱色(赤色を指す) 火気
・東 白虎 白色 金気

これに中央の黄色、土気を入れると木火土金水が揃い、五行思想に照応します。
中央の土気への言及をする場合には四神相応ではなく五神相応となり、黄竜(麒麟説もあり)が当てはまります。

既に脱線が始まってますが、もう少し脱線します。

五行思想の他にも四神を扱うものといえば風水があります。
こんにちの日本では、風水といえば方角等の吉凶を適応させる理気(りき)風水を更に限定的に配置した家相風水(沖縄を除けば陽宅風水のみ)と、地理全体に適用した巒頭(らんとう)風水があります。

風水では理想の地形というものがあり、北の玄武には山、東の青龍には川、南の朱雀には海や大きく水の溜まる場所、西の白虎には大道となります。

よく聞くやつですね。

ところがどっこい、地理風水にはこれとは別に左右の青龍・白虎にも砂(さ)といって山を配置する事もありますので、一朝一夕に「四神相応の地(理想の土地)はこうである」と断定することはできません。

しかし考えようによってはシンプルで、背面には北風を防ぐ堅牢な山があり、左右にも風を防ぐ山、南には水という形状は、風を防いで水を得るという事を表しているだけてます。
つまりは、風水の語源となる蔵風得水(ぞうふうとくすい)そのものです。

風水思想の生まれた中国では強い風が吹きますし、広大な土地では水のある場所は大事ですよね。
要するに風水における理想の土地形状というのは、中国大陸(もしくは同じ環境の土地)の形状に特化した考え方なのです。

四神相応は大昔の合理的な知恵でもありましたので、現代の地形には合わないこともあるかもしれません。
山も海も、埋め立て地の場合ですと地盤は強くありませんから、外見上は四神相応となっている場合にも実際は異なる事があります。

つまり何でもかんでも本の言う通りにしていると、その土地の背景にやられてしまう事もあるので鵜呑みにし過ぎるのは禁物ということですね。

蛇抜け(土砂崩れ)が多い土地では戒めを込め、それに近しい名前をつけて後世への警鐘とすることがあります。
過去、広島に「蛇落地悪谷」(じゃらくじあしだに)という名前の場所がありましたが、整地して新興住宅街として売り込むために名称を上楽地芦谷へ変更したところ、土砂崩れによって50人以上が亡くなる災害がおきました。

外側を繕ってあると、過去の知恵が隠されてしまいます。
温故知新と言いますか、風水で良さそうな家宅を見つけても、すぐに購入せずその辺りの過去も調べた方が良いという例ですね。

さて、急に話を戻します。

四神相応については西洋にも近いものがありまして、近代西洋魔術においては四方位に天使が当てはまります。

この際には北にから時計回りにウリエル、ラファエル、ミカエル、ガブリエルが割当てられます。

各方位ごとの天使と配色などの照応は以下の通りです。

・北 ウリエル 黒色 土
・東 ラファエル 緑色 風
・南 ミカエル 赤色 火
・西 ガブリエル 青色 水

五行説とはやや異なりますが、やりたいことのニュアンス自体はあまり変わらないところが面白いですね。

ここまでが方角と神々、天使、色などについての照応関係です。

ほかに照応に使える象徴といえば、八卦があります。
八卦の最小構成要素である爻(こう)には陰と陽があり、これを両儀と言い、両儀の記号はそれぞれ陽爻と陰爻と呼ばれます。
それを二つ組み合わせると四象となり、これがさらに合わさって八卦、六十四卦へと繋がります。

わかりにくいので図解を出しますね。
両儀にある横棒が陽爻で、真ん中が空いているのが陰爻です。

太極図〜八卦まで〜

この組み合わせが増えるに従って六十四卦になりますが、基本的には陰陽ふたつの組み合わせなので、2進数で出来たプログラムみたいですね。

また、四象である少陽・太陽・少陰・太陰は四分割された概念なので、そのまま四神にも照応しております。
萌芽である青龍から少陽が始まり、朱雀で陽気が最大に高まり太陽へ、そこからかげり白虎の少陰となり、最後は玄武の太陰へと繋がります。

太極図が最初にあることからわかるように、これらは陰陽思想から端を発してるのですが、先の風水と同じく、易経も大きな分野です。
とてもじゃありませんが、万物照応の話をするついでに包括出来そうにないのでここまでにしておきます。

さて、照応についての概要はこれぐらいでしょうか。本題に入らないといけません。

タイトルにある万物照応というのは、これまでに述べたような照応関係を万物に紐付けた体系の事を言います。

数字、生き物、性別、身体部位、植物、鉱石など、あらゆるものにはそれに対応する物事があるんだぞという体系です。
これを用い、魔術(または呪術)儀式に必要な舞台装置が手に入らない場合の代替品としたり、願望強化の為に効果の重複した素材同士を使って重ね掛けを行います。

例えば月に関する魔術儀式を行いたい場合、一番オススメのパワースポットといえば月でしょう。ラッキーアイテムも月の石に決まっています。それそのものですから。
しかしだからといって月の石を使ったり月に行ったりというのは現実的ではありません。

ところがここで月の照応物を扱えば、月の石を取りに行く必要がなくなります。
色は紫。鉱石なら水晶。金属なら鉛です。香とサンダルも照応しています。

そうすると月に関する儀式を行う際におすすめのファッションは紫色でコーディネートするべきだし、アクセサリーは水晶を、部屋ではお香を焚いてみると良いのでは?となりますよね。

思ったよりお手軽ですよね。
これが分かりやすい万物照応の使い方です。

呪術では丑の刻参りなどが顕著です。
恨みを叶える為の人形(ヒトガタ)プラス、丑の刻と言う願望達成要素のある時間軸を併用しています。

ここまで来ると分かると思いますが、密教の分野では手で印相を形どり、真言を唱えることで仏の力を顕現させますが、これも同じく印相が神仏と照応しております。
手で剣印を形どり武器となし、煩悩を斬って捨てるのは、手で剣が表現できるからです。

創作物では刀とスーパーパワーを振り回すゴーストバスターが散見されますが、実物は必要ないのですね。

西洋では聖水や聖餅がこれにあたります。(聖別、修祓等に関してはここでは割愛します)

世の東西問わず、照応とされるものを使った呪術的行為は行われているのですね。

このように、呪術も分解してみると故事に基づいたりしてて理路整然としているので、思ったよりもスピリチュアリズムと密接ではないと言いますか、大体このあたりの見解の相違でオカルティストとスピリチュアリストが喧嘩しております。

スピリチュアルに傾倒しすぎた人の考えには霊能力……というよりも、アニメや漫画のような根拠のないスーパーパワー至上主義が根源にあり、「魔術はひとつの分野であり、学問である」とする一部オカルティストと対立するからです。


それではぼちぼちオカルティズム(隠秘学)の時間が近づいて参りました。

近代西洋魔術、とりわけ黄金の夜明け団と言いますか、アレイスター・クロウリーの万物照応体系(777の書)と魔術カバラについて少しだけ言及しますので、興味が湧かなかったら読まなくても大丈夫です。

とはいえセフィラふたつ分くらいに影響のある話で、2000文字程度のボリュームしかありません。

それと宝石、いわゆるパワーストーンが好きな方、それらを使った魔術儀式を行う方についても注意していただきたいのですが、以降の話を読むと二度と儀式が出来なくなる可能性がなくもないです。(読むメリットないじゃん…)

こればっかりは責任が取れないので、うっかり読まないように有料にしておきます。
さすがにそれでも読んでしまった場合には、自己責任でお願いします。

それでは一先ず、お疲れ様でした。

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