抹茶とカクテル

カクテルに用いられる日本茶の中で、材料として最も使われているのが抹茶です。
公開されているレシピも数多くあります。

ここでは代表的なレシピをいくつか紹介し、それらのレシピの中で抹茶が遂げているであろう役割を確認していきます。
そこから、抹茶がカクテルの世界でどのような要素として用いられれば最も輝くかを、模索していきたいと思います。


1.抹茶ビール
ビールベースのカクテルと言えば、トマトジュースとビールで構成される“レッドアイ”が有名です。
その鮮やかな赤色から、その名がついていますが、“抹茶ビール”も同じく鮮やかな緑色が印象的なカクテルです。

ビール100ccにつき、抹茶1gを使用します。
できれば篩でふるってダマをほぐした抹茶をグラスへ入れ、そこへビールを50~100cc程度注ぎ、かき混ぜます。
その後、例えば300cc分の抹茶ビールを作る場合は、残りの200~250ccのビールを注いで完成です。

辛口のドライなビールを使用し、抹茶もカリナリーグレードのものを使えば、苦味が小気味良いビールとなります。
リッチで濃厚な味わいのビールならば、抹茶はセレモニアルグレードのものを使うことで、ふくよかな深みのあるビールができあがるでしょう。

ビールの場合、シェイクせずとも柔らかな泡が盛り上がります。
泡と何よりも相性の良い日本茶である抹茶は、最適な組み合わせの一つと言えます。


2.抹茶マティーニ
ジンをベースとしたカクテルの王様、マティーニ。
これに日本茶の王様、抹茶が加わると、どのような化学反応が起こるのでしょうか。

オーソドックスなマティーニのレシピである、ジンを主体にベルモットを3分の1、そこに抹茶を加えます。
マティーニ60ccに対し、抹茶0.5~1g程度が適量と思われますが、この割合はもちろん作り手や飲み手の好みによります。

その後にオリーブを入れ、レモンやオレンジの果汁を飛ばし入れるパターンが一般的ですが、ジンの割合をベルモット程度に減らし、代わりに日本酒を入れるレシピもあります。
あるいは、シロップやわさびを加えて、全く違う味わいとするレシピも存在します。

ジンや日本酒といった清涼感のある透き通った味わいに、抹茶はよく主張します。
また、ベルモットの香りは、特定の日本茶の品種の香りに近く、それも抹茶との親和性があるものと思われます。
わさびという、日本の食文化に伝わる材料と相性が良いのも当然ですし、抹茶スイーツに代表されるように、抹茶はシロップのような甘いものとも上手く付き合ってくれます。


3.抹茶モスコミュール
ウォッカをベースに、ライムとジンジャーを加えたモスコミュール。
これに抹茶を加えるのが、抹茶モスコミュールです。

モスコミュール200ccに対し、抹茶3g程度が適量かと思われます。
先に述べた抹茶ビール、抹茶マティーニと比べると、抹茶モスコミュールでの抹茶の役割は少し異なります。

抹茶ビール、抹茶マティーニの中では抹茶は、どちらかというとより味わいを膨らませたり、拡大するような役割を果たします。
対して、抹茶モスコミュールでは、より味わいを引き締め、爽やかで喉越し良いものと変えてくれます。


抹茶は日本茶の中では、粉末にして茶葉を丸ごと摂取するという、実は異質な飲み方の飲み物です。
そしてその飲み方により、抽出液にはない、複雑で濃厚な味わいが生まれます。

この複雑な味わいは、カクテルの場合はジンやウォッカといった、爽快で清涼感のある飲み物との相性が良いのだと思われます。
また、ビールの場合は“泡”という共通項が、お互いの特徴を盛り上げてくれるのでしょう。

ただ、まだ抹茶の“火香”や“品種香”、あるいはカリナリーかセレモニアルかといったグレードなど、それぞれの個別の特徴を活かしたカクテルは多くありません。
よってまだまだ、抹茶とカクテルの可能性の地平は広く大きいと言えます。

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