フルーツと日本茶
フルーツとお茶の組み合わせというと、紅茶が想像されます。
ペアリングして食べるとしてもイメージしやすく、またドライフルーツなどとブレンドしたフレーバティーは近年ペットボトル飲料としても人気です。
紅茶とフルーツの組み合わせは、どちらかと言うとお互いがお互いを高め合うペアリングと言えるでしょう。
対して、フルーツと日本茶の組み合わせはお互いの全く違う香味が、味の幅を広げる対比されたペアリングと言えます。
なかなか、華やかなフルーツと落ち着いた日本茶のペアリングはイメージし難いかもしれません。
ですが、フルーツではないにしてもジャスミンの香りをつけた緑茶”さんぴん茶”という日本茶が、沖縄には存在したりします。
フルーツと日本茶の組み合わせはペアリングの中でも未踏の、しかし可能性のある領域なのです。
1.リンゴ、ブドウとほうじ茶
甘味の強いリンゴ、ブドウとは、芳しい香りのほうじ茶が絶妙に合います。
この際のほうじ茶の湯温は温かくても冷たくても、リンゴやブドウにフィットします。
ほうじ茶は味よりも香り重視の日本茶であり、リンゴやブドウの魅力である強い甘味を邪魔しません。
また、ほうじ茶自体、近年のほうじ茶スイーツ・ラテの人気に裏打ちされている通り、甘味とは親和性が強いのです。
リンゴは焼いて食べることもできますが、ほうじ茶とのペアリングでは、それを思わせる香味が口中に広がり、楽しめることでしょう。
ブドウの場合は、ほうじ茶との相性の良さによって、あたかもワインを飲んでいるかのような香りの複雑さ・多さ・華やかさを楽しめます。
2.ミカン、ユズ、レモンと煎茶、抹茶
酸味の強い柑橘系とは、苦味・渋味のある煎茶、もしくは茶葉そのものを頂くため日本茶としての濃度が強い抹茶が合います。
中国の思想であり、料理界にも根強い考えの一つである”陰陽五行説”でも、苦味と酸味は相性が良いとされています。
柑橘系の酸味と甘味、煎茶の苦味と渋味は、ペアリングすると交互に舌を心地良く震わせます。
また、柑橘系の香りと煎茶の爽快な香りは相反するものとして、交互に香り体験の幅を拡大して楽しませてくれます。
柑橘系と抹茶の組み合わせも、素晴らしいものです。
抹茶の場合は、微かな苦味・渋味と多分に含まれる旨味・甘味に対し、柑橘系の酸味という5つの味が揃うことで、総合的に整った香味体験が約束されるのです。
正直、この抹茶との組み合わせは表現が難しいです。味が”揃った”という満足感があります。
また、交互に味わうとお互いの残り香というか残り味があるので、少し遅れて口に含んだものの味が訪れます。
その時間差が、口中の味のストーリーを複雑に感じさせる、という効果ももたらします。
3.栗とほうじ茶、玄米茶、煎茶
栗は実はフルーツです。
そして日本でも古来から愛されている食べ物ですので、日本茶とはとても良く合います。
これまでに挙げたフルーツとは違い、どちらも日本産であることがよくわかる、落ち着いた香味体験を提供します。
ほうじ茶と合わせれば濃厚な落ち着きのある甘い香味体験を、煎茶と合わせれば栗の甘さと煎茶の爽快さの対比された香味体験が味わえます。
玄米茶の場合は一言で言えばその中間の体験ですが、茶と栗、そしてプラスされる玄米の香りが、満腹感のある満足感をあなたに届けてくれるでしょう。
以上の日本茶とフルーツの組み合わせは、そのまま茶葉とドライフルーツとしてブレンドティーを作る場合にも応用できます。
また、それぞれのフルーツの特徴が強いデザートであればその場合も、対応する日本茶とペアリングすることで、同様の香味体験を楽しむことができるでしょう。
フルーツと日本茶との組み合わせは、ひょっとするとお菓子や料理以上に、難しい組み合わせかもしれません。
しかし確実に、かつ絶妙にフィットする組み合わせは確かに存在します。
それが見つかった時こそ、新たな味・香りが地球上に生まれた瞬間と言っても、過言ではないでしょう。