謝れる
はい!
てぃーあつです
人は歳をとると怒られる事が減る
でも私は毎月作家さんにネタの事を怒られる
自分のネタは作家さんを困らせたりもする
自分の核から搾り出た汁を煮て味付けしたものを気に入ってくれる人の舌は稀だ
そんなものを好きで楽しみに待ってくれてる人達の事はこれからも大好き
レストランの厨房のバイトをしたことがある
エスニック料理を主に取り扱うお店で
私は薬膳スープの仕込みを担当していた
周りのレベルが余りに高いというよりは
自分のスキルが余りにひきぃ
食べ物リテラシー低いしおれハンバーガーとか大好きだからエスニック料理作る人材じゃそもそもなかった
ホームベースみたいなナン作ったことあるし
いつものように野菜を切ってたら
女先輩が奥の方から来て
「寺井くん」
「はい!」
「これみて」
「はい!」
女先輩はゴミ箱から野菜の切れ端を捕まえて私に見せつけた
「豆苗もっと根本から切れるよね?」
「はい!」
しらねぇよ
茶色いだろそこ
茶色いとこ食うなよ
茶色いんだから
って思った
たぶんそもそも、ものさしがちがう
"だいたい"で飯食ってきた私は
"だいたい"でしか飯を作れない
辞めようと思った
最終日
その日はじめて外人アルバイトと被った
名前はキニ
いつものようにカスみたいな手際で作業をしていると
キニがこっちへきた
「メモとりなよ」
うるさいじゃハゲ
BPOも厳しいご時世
ルッキズム極まりない
今日で辞めるしなぁって思いながら
「すいません」
大人だから謝れた
くそえらい
さぁそろそろ終盤
私はシンクで皿を洗っていた
すると隣のシンクにキニがきた
キニが隣のシンクで何か洗い物をしていて
次の瞬間キニの方から水が飛び散ってきた
おそらくあの皿の跳ね返りとかである
ジャッてやつなんだろうと思った
すると次の瞬間
「本当にごめんね!!!!!!」
謝りすぎだと思った
おれから戸籍でも奪ったのか
あまりのその謝罪密度の濃さに唖然
「全然いいよ笑」
って言った
さぁ片付けも全部終わり
最後に軽く挨拶をした
「短い間でしたが、ありがとうございました」
軽く頭を下げた
すると自分の服の裾に目がいった
黒のTシャツの一部がオレンジ色に変色していたのだ
「ん」
キニに水をかけられたところだ
あいつ漂白剤かけやがった
なるほどと
あの謝罪密度に合点がいった
帰りにファミリーマートで黒のアウターTシャツのXLを新調した
落合さんごめんね
みんなも謝れる時謝ろう
謝るって
めっちゃコスパ良いし