日本株の売り時と米国債券投資機会を考える
バブル崩壊後の高値を更新する日経平均株価
日本株の時価総額が世界の株式時価総額(約98兆ドル 2023年10月)のうち5.6%しか占めないことを念頭に置きつつ先に自国の株についての話をする。
現在の日経平均株価が「バブル」という言葉と並べられると、あたかも今の株価がバブルなのではないかという恐怖心が出てくる。
弾けうるバブルなのか判断するにあたり、割高感の指標としてややマクロに全世界と日本のPERとPBRを見てみる。(https://myindex.jp/global_per_js_old.php?m=202308)
・PER(株価収益率):株価と企業純利益との関係を表す。12-15倍が適正と考える。
・PBR(株価純資産倍率):株価と企業純資産との関係を表す。1倍が適正と考える。
2023年8月時点の日本株のPERは14.6倍、PBRは1.4倍、全世界のPERは17.8倍、PBRは2.7倍であり、世界株と比べても割安感、適正感がある。収益率が上がらず、期待感やブームで株価だけ上がっているバブルの状態ではもっと割高に見えるはずだ。2023年5月以降の新型コロナウイルスの5類移行で、政府から実質的な外出の免罪符が打たれた日本経済は脱コロナとして景気回復基調にあるのは事実である。
外に行けるとなれば運輸・交通・ホテル・飲食・サービス・アパレル業とあらゆる消費が回復し、企業業績にとってプラスになり株価が上がるのは当然で、出遅れていた日本経済では好景気が顕著に見えた。
日本株高を支える要因として、先に挙げた経済活動の再開による企業業績の回復、東京証券取引所によるPBR1割れ企業への働きかけ・外国人投資家に不遇であった優待の見直し、中国経済不安からの日本株への逃避、そして米金利高、ドル高円安による日本株高というのが大きいと考える。
いつまで続く日本株高
日本株は指標として超割高では無いものの円安や堅調な業績を背景に特に海外からの買い支えにより、歴史的株高になっているのは事実である。米国債利回り高、ドル高というサイクル的な要因がある以上、ある程度は円高、日本株安方向に資金が逆回転するリスクは無視できないと考える。
米国が利上げ真っただなかの2022年相場の日経平均株価は26,000円ほどの長いボックス圏内で落ち着いており、現在の約33,000円と比較すると約27%上昇している。円安の為替バリューが無くなればしたたかな海外投資家には利確され、コロナ前の18,000円台までとはいかなくもまた26,000円台のボックス相場に移行するリスクも考えないといけない。
今から日本株の指数を買おうとしても大半の層は現在よりも安値で株を仕入れておりいつでも逃げる準備ができていることを念頭に置かないといけない。買うならばPER、PBRが割安かつ4%ほどの配当利回り、後先3年の業績がプラスであるなど石橋を叩いて渡るほどの慎重さを持ち日本株市場に取り組んだ方がいい。セクターで言えば日銀政策金利上昇、ゼロ金利政策解除の恩恵をもろに受ける銀行銘柄に半身で乗るのもいいかもしれない。
次の投資先として米国債券を考える
2019年初め新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックが起こり世界経済は固まった。経済の血液ともいえるお金の回りが悪くなると景気が極端に悪くなり企業倒産や生活に悪影響が出る。一般的に景気の良いときは長期債券金利を高くしておき、お金の供給を絞り景気の加熱を防ぐ。新型コロナウイルスのようなパンデミックやリーマンショックなどのモーゲージ債を発端とした連鎖破綻、オイルショックなど景気を死なせるような出来事があった場合は、金利を下げて企業などにお金を借りやすく、景気を支えるようなお金の量的緩和という措置を取る。
コロナ後の緊急利下げでは米国10年債利回りは3.2%から0.5%まで下落、債券価格は105-117ドルの値をつけて2022年にピークに達した。この利下げ、量的緩和政策により、米国の実経済以上に景気が盛り上がり、過度な賃金上昇、インフレが起こることにより次はバブルとなる懸念がある。
そこでインフレ退治のためお金の供給を絞り、米国債利回りを上げてお金を借りにくくする措置をとるも2023年10月ごろまでは強い景気とインフレが続き、ようやく利上げの停止、利下げのめどが立ちつつあるというのが現状である。米国10年債利回りは23年末で4.9%→4.4%まで下落、債券価格は63-69ドルまで上昇して底打ちかと思われる。
机上の計算では米国債券で20%の利益を想定
利回りと価格がシーソーの関係にある債券は単純にいえば、金利ピークの今仕込んでおけば(4.4% $69)、利下げ完了後(適正な金利が2.0% $100と勝手に想定)には債券価格の上昇差益+債券利回りが取れるという算段になる。
あくまでも予測不可能な株と債券と為替レートを利下げ後はここと決め打ちした試算にはなるが、計算は以下の通り。
米債券(BLVなど)$70→$100(4.4%→2.0%の金利正常化と仮定)で40%の含み益 + 時価利回り(2.0%/年想定)ー 為替損失(150円 → 125円/$ 想定)で ー17% = 25% とそこそこの利益になり、世界を代表する米国の国債という信頼のおける超巨大市場でおいしい債券ゲームに参加できるのであればしておきたいと思うのが本音である。
リスクを考える
先の計算はあくまでも机上の空論であり、利下げ後の金利正常化が何年後になるかは分からず、4年後に20%が取れたとしても5%/年+配当2%/年と考えると株式の期待リターンと変わらず、ドル建ての全世界株と一緒じゃないの?となる。債券の不透明さ(インフレ動向)、株式の不透明さ(全世界株安、リセッション懸念再燃)、為替の不透明さ(ドル円レート)がある中でも、やはり利の乗らない安いキャッシュである日本円のまま置いておくよりかは利の乗るものに資産を移しておきたい。投資をするもリスク、しないもリスクである。
まとめ
日本株は個別企業の決算や指標を見るにマクロでもミクロでもバブルでは無いようだが、歴史的日本株高というのは事実であり、ドル高円安、米金利高という一つのサイクルだと考えると、日本株安の揺り戻しが起こっても不思議ではないため利確したい。(安値で仕入れたポジションを崩すのが惜しい場合でも現時点で、機械的に割合での利確をしたい。ただ、良い株を安く買うという観点では買いも入れたいためリスクを取れる場合は押し目買い、打診買いをしたい。)
米国株は国債利下げによる上昇が期待できるものの円高により為替損益が出るためややプラスという想定。よくわからないうちに変にタイミングが重なり為替損益と米株安、日本株安というトリプルパンチも想定しておく。(-30%ほどの資産の目減り)
米国債券は利回り想定で述べたとおりの机上の想定である。インフレ再燃やテロや有事、災害のリスクもどこかにある。
※今回の記事の金融市場の潮目に関する予測は、過去のチャートを引用したり、個人の予測に基づくものであり、特定の銘柄を推奨するものではありません。投資を行う場合は自己責任にてお願いします。