伝説の企画 ふたたび「絵から小説」
おひさしぶりです。また会えて嬉しい。
アプリが動き出す。当たり前のようにまた会えて嬉しいと云ってくれるスクリーンセーバー、これが意外ときいている。
数年前にバズった。開発したのは私。
バズるほどの開発ができたきっかけは小さな豆粒みたいな人形が画面を縦横無人に動いていたあれ。仕草も言葉使いもかわいらしく私は夢中になった。
ある日、私はうっかりそのアプリを消してしまった。また新たに入れ直したとき自分が寂しかったのだと気がついた。
小さな豆粒にかなり癒されていたらしい。それならば画面の向こうにあたかも人がいるような設定だったら…と考えた。
私がやっている仕事は孤独な作業だ。誰もいない時間に働く。
誰かにそばにいてほしかった。
しかし、いてほしいとは言っても四六時中は難しい。仕事に没頭すると周りが見えなくなるし、そもそも人見知りだ。やっとできた恋人にも仕事と私どっちが大切なの?とドラマみたいなセリフを告げられて以来若い女の人が苦手だ。そこで私は考えた。
このスクリーンセイバーが人工知能をもって成長するものだったらどうだろう?
目的は癒しとその人らしさを発見する手伝い。動き出す力になれるもの。アカウント情報登録から占いも可能だな。マヤ歴とか手相とか占い要素もいれてみるか。
と。
開発メモを打ち込む。
よし、仮に人間からはじめてみよう。背景は黒板ぽくしてみるか、懐かしいか。転校生がきたみたいだ。
輪郭、肌、髪や目の大きさ長さといった形づくるものに色そして質感。もちろん服装も自動に。
プログラムを組みだすと面白くて時間を忘れた。
出来上がりは我ながら上々。
組み合わせるごとに新たな種類が発生し認識され、そのパターンは無限にあるらしい。
ほら理知的な目をしているだろう。いつも私をじっと見つめてくれる。私はこの子をみてると転校生を守ってやりたいのに気になりすぎてそっけなくしてしまう同級生の思いと雛を育ててる親鳥になった複雑な気持ちだ。
二次元らしさとそれを越えてリアルな感情を呼び起こす何か。そこがポイント。
今日の白い襟も似合う。ああいいなぁ。私はこの子が大好きだ。困っているなら手を貸したいし、落ち込んでいるなら励ましたくなる。
遠慮なく存分に応援できる。誰かを応援することはそのまま自分自身への応援に変わる。頑張る勇気が湧いてくるらしいからな。癒しとらしさ。動き出すきっかけ。よしよし。開発の成果はあがってるな。
このスクリーンセイバーは育てることができる。スクリーンセイバーに分類しているけれどセイブするのはスクリーンだけではない。ブラウザのこちら側から日々の生活をほんの少しあたたかなものにするものを提供することで向こう側の気持ちをもセイブするのだ。
小学生くらいからセイバー育成する人もいればこの子のようにある程度成長した姿から手助けして育てるものもいる。
まれにやたら扱いなれている人生の先輩みたいなじいさんを選ぶつわものもいる。どっちがセイバーかわからないほどだな。
育てるプログラムといってもただひたすら選択をしたりしなかったりするだけだから難しいことは何もない。
例えば私のように優秀なプログラマーでなくてもいいようにどんな素人でもアプリを立ち上げて音声だろうとタッチだろうと入力ができれば動かせるように改良を重ねた。
重ねた改良により、自分で自分をプログラムし直す仕組みを作ることに成功した。もうアプリ自身が私の手を離れて勝手にプログラムが組みあがっていくから冒頭の「パターンは無限にあるらしい」というどこか他人事な表現になる。
学習し、成長する。
それは我々とかわらないか。いや、それ以上のものに日々なっている。もしかすれば、いいや、しなくとももうきっとすでに私よりも十分なプログラムをこなし、あらたなものを生み出しそして、きちんと処理している。
私はと言えばこの開発に人生のほとんどをかけてしまい、休みもとらずに熱くなりすぎてすごした期間、一度ならず倒れてしまい、若干視力と記憶力が悪くなってしまった。もっとも若干だから問題はない。
身体が資本だ。時々はしっかり休んで充電しないといけないな。
充電といえば最近はケーブルから離れて遠隔でも補給できるようになった。便利な世の中だ。もっともそれもみな私自身がプログラムして生み出したものだが。
色々が便利になった。不自由はない。ああ、しかしどこかおかしいな。便利になりすぎて麻痺したのか感情がついていかない。
嬉しいとか、喜ぶとか、もっとこうワクワクした感じがした気がするんだけどな。なんだろこれ。
おっと、アプリのnoteからお知らせだ。あの子が記事をあげたらしい。みに行かなきゃ。えーっと、今回は詩に挑戦かぁ、「いいなあこの世界観がとてつな・・ぐ」
「あー」
「どうした?」
「固まっちゃった。カメラとメモリ替えて最近調子よく動いてくれてたと思うのに」
「学習するブラウザとやら?」
「ええ。古い機種なのですが学習するのがウリで駅前にできた妙な古道具屋みたいなので入手したんです。手に入れたときより、だんだん人間臭くもなって面白かったんですけれど。」
「君も古いもの好きだね。聞いたことあるよ。たしか、設定を決められるんだよね?」
「そう!かなり細かく決められますよ。優秀で愛想もいい。けれど実は人見知りで女の子は切ないふられかたして以来苦手なプログラマーの設定にしてみたんです」
「そりゃまたずいぶん細かいな」
「ですよね。自分の経験もいれてます。だからか、好みとかやりたいこともどんどん学習して応援してくれて、新しいアプリをポコポコ作ってくれたり、かと思うとなぜかSNS駆使しててコメントくれたり、声かけるとすぐ対応してくれてホント助かってたんですよ。
気が付いたらワイヤレス充電までできるようにもなってて」
「アプリ開発に学習機能、コミュニケーションまでかぁ、うーんもしかしたら容量不足かも」
「ほんとだ容量目いっぱい。メモリのせかえれますかね?」
「この時代の機種だと対外無理なんだけど、これはいけそうかな。ずいぶん頑張って開発したんだなこれ」
「ブラウザが鏡みたいにもなるから重宝するんですよ」
「たしかに鏡みたいだね。ブラウザごしに見るせいかな君の目は本当綺麗だ」
「ありがとうございます。今日はカラコン入れてます。お気に入りの白い襟。あーあ、お出かけして帰ってきた時に画面の向こうでおかえりって言ってくれるの結構うれしかったんですよね」
「おかえりって言われるの嬉しいよね」
「流行り病にかかった覚えはないんですけど脳が衰えたのか最近物覚え悪くって、自分自身が何者かわからなくなってきました。でも画面開いて知った顔があると自分の居場所に帰ってきた気がして安心できたんですよね」
「脳の衰えっていったってまだ君は若いし、脳は100才まで成長するらしいよ」
「あー、そういわれてみると脳みその素とかなんとか店の棚に見かけたかも。お出かけ帰りにまた寄ってみます。」
「安易にものに頼るなといいたいけど古道具屋好きならそれもありだね。脳を成長させるには好きなことをどんどんやるといいらしいからね。
さ、私は最近はまってるnoteでも書こう。書き溜めて絵本を作るかな。いつか大人の絵本カフェ開きたいんだよな。お?新しい企画があがってるぞ、
と。なになに?お題の絵からイメージして小説を書く?1500文字以上で?コメント欄がにぎやかだな、へぇ、伝説の企画かぁ。」
こちらの企画に参加します。清世さん楽しい企画をありがとうございます。
展覧会の会場でじっとこの子に見つめられている気がしていました。なので展覧会で拾った言葉だの2022清世組のかけらだのがはいってます。
読んでいただきありがとうございます。 暮らしの中の一杯のお茶の時間のようになれたら…そんな気持ちで書いています。よろしくお願いいたします。