鉛筆たちの夢
「みんな何になるか決まったぁ?」
「おれ?靴!デザイナーさんのところへ行って世界中を旅してまわる靴になる!」
「おれは花、ヒマワリとかチューリップとか。色んな花!
いつもずっと咲いていられる花になりたいな。」
「私は美味しいになりたい。
そしてそれを大勢の人に喜んでもらうの。」
「じゃあ私はガチョウになろうっと。くまもいいなぁ。」
「ガチョウ?くま?」
「そう、可愛いでしょ?私は可愛いになりたいの。」
「だってねガチョウが可愛いって思うのと自分が可愛いって思うのを脳っていうのは分けて考えられないんだって。先に脳科学者のところにいって本になった先輩のうけうりだけど。」
「可愛いかぁ、うん、そういうのもいいね。
僕たちが描くのは希望だって言ってたもの。」
「誰が?」
「誰だろ?」
「君は?決まった?」
「僕は…小さなおはなしになろうかな。
誰かの心にぽっと明かりをともすような。
寂しい気持ちをくすぐるような。小さくやさしいおはなしに。」
「きみは?」
「僕は人になりたいなって思う。」
「人?」
「うん、色んな人。それでね、その人たちに気づきのお手伝いをする。」
「気づきのお手伝い?」
「そう、君はこんな魅力があるんだよって。僕がその人が自分で気づかない部分を見せてあげるんだ。」
「ねぇねぇ!
いま教えてもらったんだけど、みんなありがとうにも大好きにもなれるんだってぇ!」
「ありがとうにも、大好きにも?」
「それはうれしいなぁ。」
「楽しみだね。」
「うんワクワクしてきた。」
「きっと誰も僕たちがなろうとするもので世界ができてるなんて思わないんだよね。」
もう明日には出荷となる鉛筆たちのもとに精霊の声がする
さあ準備はいいかい?
君たちはこれから冒険に出る。君たちが世界で出会う活躍の場は原稿用紙のときもあればクロッキー帖のときもある。誰かの思いを届ける便箋のときもあるだろうし、チラシの裏側かもしれない。
君たちを動かすのはまだ文字を覚え始めたこどもの手かもしれなければ、人知れず多くの練習を重ね続けた画家の手かもしれない。
どこでも、どんなときも、君たちそれぞれの意識が自分の世界を生み出していることを忘れずに。
おしまい。
画家の清世さんのオススメのBlackwing。描きやすくって絵や文字を描くのが楽しいです。
使っていてふと鉛筆たちの意思ってどんなだろうかという気持ちになりました。
当の清世さんご自身は企画されていた「路上100」を7月早々と完了!
本日31日は18:00~19:00めどに金山駅にて勝利の祝杯!
当日も希望者には描いてくれるそうなのでタイミングが合う方はぜひ。